初恋フィルター 番外編
結婚後。
五条「久しぶりに作ったから失敗したかも。味薄い気がする!」
椿「そんな事ないよ。優しい味がして美味しい」
五条「本当?」
椿「本当だよ。私はこういう味わいも好きだな」
五条「そっか。なら良かった」
椿「私の味付けって濃かったりするかな?」
五条「そんな事ないよ。僕にはちょうど良い」
椿「そうか。君は良いものを食べてきたようだから、君の口に合うかなって心配だったんだ」
五条「椿の料理はどれも美味しいよ! それに僕、結構ジャンクフードとかも好きだよ。たまに無性に食べたくなるんだよね」
椿「分かる。あの身体に悪そうな味が良いんだよな」
五条「それそれ〜! 夜中のカップ麺とか、鍋で食べる袋麺も好き!」
椿「ふふ、私も好きなんだ。なぁ、今度一緒に食べないか?」
五条「やろやろ! ラーメン買っておかないとね」
椿「ラーメンに合う野菜も買っておくよ。罪悪感を減らすために」
五条「それ、傑も言ってた! もやしとかキャベツとか入れてたな〜」
椿「もやしとキャベツは味噌ラーメンに入れたいな。塩ラーメンにはトマトとレタスを入れるのが好き。アスパラも美味しいよ」
五条「何それ美味しそう! それ食べてみたい!」
椿「ふふ、なら塩ラーメンとトマトとレタスを用意しておくよ」
五条「楽しみ〜!」
椿「ふふ、私も楽しみだよ」
***
結婚後。
椿「おかえり、悟」
五条「……………た、ただいま」
椿「ん? どうした?」
五条「つ、椿が家にいるのが嬉し過ぎて、ちょっと泣きそう……」
椿「何だ、そんなことか。これから何度でも出迎えてあげるよ」
五条「一生お出迎えして……!」
椿「もちろんだとも。君がきちんと帰ってきてくれるなら」
***
学生時代。
椿「君、朝と夜で髪の輝き方が違うな」
五条「え? 髪?」
椿「ああ。早朝に見ると金色も混じっているように見えて、少し時間が経つと落ち着いてくるんだ。天気によっては、灰色や水色も混じっているように見えるよ」
五条「そ、そうなんだ……。自分の髪なのに、知らなかったな……」
椿「夕方は赤みがかっていて、夜は青というか、紫色が混じっているように見えるんだ。一日を通して同じ色でいることがなくて、その変化が綺麗で、つい目で追ってしまうんだ」
五条「………お、俺、目はよく褒められるけど、髪を褒められるのって少ないんだよね。さ、清庭さんが、き、気に入ってくれたなら、良かったよ……」
椿「確かに、君の目は珍しい色をしているし、とても綺麗だから、つい目を奪われてしまうんだろう。でも、君の日を浴びた雪のような髪も、同じくらい綺麗だと思うよ」
五条「あ、ありがとう……。さ、清庭さんの髪も、ききき、綺麗だと、思います……」
椿「何故、敬語なんだ? でも、ありがとう」
***
上のネタの続き。
五条「今日、清庭さんに褒められちゃった……!」
家入「赤面しながら顔を隠すな。デケェ男が乙女気取りか」
夏油「悟の図体でそのポーズはなかなかキツいものがあるね」
五条「二人して厳しくない???」
家入「てか、私だって椿に褒められたことあるし」
五条「おっ? おっ? マウント勝負か? 負けねぇよ?」
家入「お前と同じ土俵に登ってやるよ。お前は何を褒められたんだ?」
五条「髪について褒められましたー! 俺の目と同じくらい綺麗だって!」
家入「はん、髪なら私だって褒められたことあるから。“射干玉の髪とは、君のような美しい黒髪のことを言うんだろうな”って」
夏油「うわ、言いそう。ちなみに悟はなんて言われたんだい? 彼女のことなら、もっと具体的に褒めそうだけど」
五条「一日を通して髪の輝き方が違うねって。天気によっては色んな色が混じってるように見えて、つい目で追っちゃうんだってー!」
夏油「テンションが女子高生。でも確かに、悟の髪は光の加減とかで違った色に見えるよね」
家入「そんなん気にしたことねぇな。椿は本当よく気付くよね」
五条「嘘でしょ。硝子はもうちょっと俺のこと気にして」
家入「欠片も興味がねぇ」
五条「てかこれ、俺の勝ちじゃね? いくら硝子でも、こんなん言われたことないっしょ?」
家入「甘いな。私は髪を撫でられて、ずっと触っていたくなるって言われたんだぞ」
五条「はぁ!? 髪を撫でられるとか狡いんだけど!?」
夏油「それは最早口説いているのでは???」
家入「私も思った。ちなみに、私も椿の髪を撫でさせて貰った。サラサラっていうよりツルツルっていうか、しっとりした髪だったな」
五条「俺の許可無く清庭さんに触ってんじゃねぇぞ!!!」
家入「椿に触るのにお前の許可は要らねぇんだよ」
夏油「悟はまず、吃らずに話せるようにならないとね」
五条「んぐぐぐぐ………!」
***
結婚後。
五条「ね、ねぇ、椿。彼シャツして欲しいって言ったらしてくれる?」
椿「えっ、私に?」
五条「あったり前じゃん! 他に誰が居んの!?」
椿「確かに私以外には居ないだろうが……」
五条「そうだよ! 僕は椿の彼シャツが見たいんです!」
椿「私では理想の彼シャツは難しいと思うけど、それでも構わないなら」
五条「構いません! お願いします!」
椿「どれを着たらいいかな」
五条「これ!」
椿「これ、任務のときに着てるやつじゃないか。シャツではなくないか?」
五条「彼ジャーとか彼ジャケとかあんじゃん!」
椿「ああ、確かに。……おっ?」
五条「かっ、かわいい〜! 椿も背高いけど、やっぱり10センチ違うとはっきり体格差が……って、どうしたの?」
椿「いや、すごいなと思って。ちゃんと彼シャツになってる。見てくれ、袖から指先しか出ないんだ」
五条「………………………」
椿「ん? どうした?」
五条「……………いや、かわいすぎてしんどいなって……」
椿「うん???」
"大き過ぎてサイズが合わない"という経験がない椿。珍しい経験にちょっとテンションが上がった。
***
学生時代。
椿「そう言えば、君達の学校は文化祭とかってないのか?」
家入「あー……。うち、宗教系じゃん? 決まり事とか多いから、祭り系全般開催されないんだよね」
椿「そうなのか……」
夏油「その代わりに姉妹校との交流会とか、研修で色んなところに行くんだよ」
椿「へぇ。学外での活動も楽しそうだな」
夏油「それにしても、文化祭かぁ。大変だった記憶しかないなぁ」
家入「痴情の縺れで?」
夏油「人聞きが悪い。私のクラスは模擬店をやったから、準備するものが多かったし、当日も忙しかったんだよ」
家入「うちは展示品作って飾って終了。当日は楽だったわ」
椿「私は演劇をしたよ。セリフや出番は少なかったんだけど、演技なんてやった事なかったから、大変だったなぁ」
五条「何の劇?」
椿「シンデレラだよ。みんなシンデレラになりたがって、結構揉めたんだよなぁ……」
五条「そ、そうなんだ。さ、清庭さんは何の役やったの?」
椿「王子役だよ。私は裏方をするつもりだったんだけど、推薦されてしまって……」
夏油「納得の配役。清庭さんは背も高いし、かっこいい系の衣装似合いそう」
家入「クラスに椿が居たらそうなるわな。女子投票満場一致で決定したでしょ」
椿「何で分かったんだ? その通りだよ」
家入「そりゃみんなシンデレラ役やりたがる訳だわ。私だって立候補する」
五条「硝子にお姫様は無理じゃね?」
家入「王子どころか一兵卒にさえなれてねぇ奴は黙ってろ」
五条「俺以上に王子顔なんて居ないだろ!?」
椿「確かに、五条くんは綺麗な顔をしているものな」
五条「は、はわわ……。ホメラレチャッタ………」
椿「五条くんもそうだけど、夏油くんも硝子も、みんな本当に綺麗だよな。こういうのを、眼福を得ると言うんだろうな」
夏油「ありがとう。清庭さんも美人だよ」
五条「傑!!? (おま、お前ぇぇぇぇぇ! 俺が言えねぇことをサラッと言うんじゃねぇぇぇえええええ!!!)」
家入「私も椿のこと好きだよ。てか、王子姿の椿見たいんだけど」
五条「硝子!!?!? (何でサラッと告ってんのぉぉぉ!!!?!?)」
椿「何枚か写真を撮ったから、家にあったと思う。今度持ってこよう」
家入「やった」
夏油「私も見たいな。次も呼んでくれる?」
椿「いいよ。でも、ちょっと恥ずかしいな……」
五条「お、俺も見たい……!」
椿「満場一致してしまった……。持ってくるけど、笑わないで欲しいな」
椿「これが王子役をやったときの写真だよ」
「「「……………………」」」
夏油「いや、似合うな!?」
家入「様になり過ぎだろ! 顔だけ王子の五条より全然アリなんだけど!?」
五条「待って。かっこよ………」
椿「あ、ありがとう……」
***
結婚後。
七海「椿さんは刀の造詣が深い方ですね。なかなか興味深いお話を聞けました」
五条「そうなんだよね。この前も一緒に美術館行ったんだけど、僕にも分かりやすく説明してくれたよ」
釘崎「あんたもついて行ったの? 興味ないでしょ、絶対」
五条「正直あんまり興味はないけど、椿の話聞くのは好きなんだよね。それにいつも以上ににこにこしててかわいいから、出来るだけ一緒に行くようにしてる」
虎杖「椿さんって刀詳しいんだ。なんか意外だね」
五条「椿は日本刀大好きなんだよね~。名付けの由来とか、逸話とか詳しいんだよ」
七海「ええ。刀工や刃長まで把握しているとは驚きました」
釘崎「そう言えば、前に鞄から武器の特集雑誌みたいなのはみ出してたわね」
伏黒「公開展示のポスターとか見つけると、すぐに予定確認するくらいだからな」
虎杖「すごいね!? でも普段そんな感じじゃなくない? 俺なんか刀好きなのもいま知ったし」
伏黒「あの人は相手に自分の好みを押しつけるような人じゃないからな。なんつーか、相手の意思を尊重する人なんだよ」
七海「そうですね。彼女は酷く気遣い屋なところがあります。こちらは仕事だというのに、彼女はこちらの趣向などを考慮し出すものだから困ったものです」
五条「そこも椿のいいところじゃん! もうちょっと我儘でもいいと思うけど!」
伏黒「そうですね。自分の予定と一緒にあんたの予定も確認して、“一緒に行くのは難しいかな”とか“そこまで興味なさそうだしなぁ”って寂しそうな顔してるような人ですからね」
五条「何それかわいい。確かにそこまで興味はないけど椿の解説聞くのは好きだし、何より椿が楽しそうだと僕も嬉しいから一緒に行きたい! ちょっと休み調整してくる!!!」
釘崎「はっっっや」
七海「…………相変わらずですね」
虎杖「でも、奥さんを大事にするのはいいことだよ!」
伏黒「……お前、本当いい奴だな」
***
五条「僕が椿の言葉を忘れるわけないじゃん。一言一句、正確に覚えてる自信あるよ」
釘崎「キッッッショ……」
伏黒「もう書類全部、椿さんに朗読してもらえよ……」
***
結婚後。
京都出張。
真依「ねぇ、椿さんは何で五条先生と結婚したの?」
椿「その質問、去年君のお姉さんにも聞かれたよ」
真依「真希のことはいいでしょ! 私は聞いたことないんだから!」
西宮「私も知りたい! 椿さん、全然こっちに来ないし!」
椿「私は護衛無しに外に出られないからなぁ。この前も呪詛師に襲われて大変だったんだ」
三輪「そんなサラッと言います!?」
真依「そう言えば、闇サイトで賞金が掛けられているとか色々な噂があるわね」
三輪「そんな噂も!?」
椿「ああ、私も聞いたことあるよ。しかし、悟からの報復があると分かっていて、よく私を狙えるよなぁ」
西宮「政略結婚とか偽装結婚っていう噂もあるから、そっちを信じてるんじゃない? 実際はめちゃくちゃ愛妻家なんだけど」
三輪「あ、愛妻家なんですか……!?」
椿「そうだな。大事にされている自覚はあるよ」
真依「その話はまた後でしましょ。それより私の質問に答えて欲しいのだけど。やっぱり顔かしら?」
西宮「言っちゃ悪いけど、あの人を知れば知るほど、顔くらいしかいいところが見つからないのよね……。よく続いてるよね」
三輪「そ、そんなに性格悪いんですか……!?」
椿「私にはそんなことないけれど、私以外の人への対応を見ていると、結構いじわるな性格だなぁとは思うよ」
真依「そんな程度の認識なの……!?」
西宮「椿さんって鈍感なの???」
椿「あと、私は別に彼を顔で選んだわけではないよ。特に彼の顔は好みというわけではないし」
三輪「えっ!? あんなにかっこいいのに!?」
真依「顔じゃないなら何が理由なの?」
椿「色々あるけれど、やっぱり私が笑うと彼も笑ってくれるところかな」
西宮「どういうこと?」
椿「私が幸せだと、自分も幸せだと感じてくれるところだよ。逆も然り。私も彼が楽しそうだと嬉しい。そういう風に思える相手だから、私は彼と結婚したんだ」
三輪「な、何だか素敵ですね……!」
椿「だから、例え彼の顔がぐちゃぐちゃになっても、私は彼を愛せるさ」
西宮「す、すごい惚気を聞かされちゃった……」
椿「最初からそう言う話題だったじゃないか。さて、これで満足したかな?」
真依「……そうね、お腹いっぱいよ。でも、ちょっとだけ、結婚っていいものなのねって思えたわ」
椿「呪術界は家同士の繋がりとか、家柄が優先されてしまうからな。でも、そう思えたなら何よりだ」