初恋フィルター 番外編
原作の時間軸にて
結婚してる五条×椿
椿「聞きたいことがあるんだけど、今いいだろうか?」
五条「もちろん、いいよ! 聞きたいことってなぁに?」
椿「実は博物館に行きたいんだ。今度、所蔵国宝の展示が行われるらしくて……」
五条「国立博物館? 確か有名な刀もいくつかあったっけ。本当に椿は刀が好きだね〜」
椿「そうなんだ。三日月宗近や大包平達が展示されるらしいから、是非見に行きたくて。良かったら、君も一緒に行けないかなって」
五条「えっ、えっ、ま、待って。そ、それってデートのお誘い?」
椿「そうだな、そうなると思う。興味があるようなら、空いている日を教えて欲しくて。もちろん、君の行きたい所にも付き合うから」
五条「い、行く〜! 絶対行く〜! 何が何でも予定空けるから僕とデートして下さい!!」
椿「ふふ、ありがとう。出来るだけ君に合わせるから、無理はしないで欲しい」
五条「って事で今度椿とデート行くことになったんだ〜! 何着てこうかな〜」
伏黒「…………あんた、刀とか美術品に興味ありましたっけ?」
五条「いやまったく」
釘崎「興味ないもんに無理について行っても喧嘩になるだけよ。デートするなら別の場所にしなさい」
五条「今まで何度かついて行ったことあるけど、喧嘩になったことなんてないよ? それに、刀見てるときの椿の顔が好きなんだよね〜。目をキラキラさせててかわいいんだ」
虎杖「椿さんってあんまり表情が変わる印象ないんだけど、好きなもの見てるときはやっぱ違うんだ」
五条「そうそう。日本刀見てるときの椿は超かわいい」
釘崎「惚気は要らないわよ」
五条「それに、デート中はどんだけ椿のこと見てても誰も咎めないんだよ。つまり博物館デートは僕にとって椿を合法的に鑑賞できる絶好の機会ってわけ。最高でしょ?」
伏黒「いや、展示品を見ろよ」
五条「椿を見てる方が有意義じゃん。僕にとっては国宝よりも価値がある」
釘崎「……………あんたじゃなかったら、とっくに破局になってるわね」
虎杖「先生すごいね! 博物館とかより賑やかな場所の方が好きだから、いくら好きな人とのデートでも、俺だったらすぐに飽きちゃいそう」
五条「僕も賑やかな方が好きだよ。でも、かわいい椿が拝めるから全然飽きないんだよね」
伏黒「どんだけ椿さんのこと見てぇんだよ……」
五条「ずっと視界に収めていたいくらいには」
釘崎「ストーカーで捕まっちまえ」
五条「残念でした、合法でーす!」
虎杖「自分で合法って言ってる時点で違法の匂いがするんだよなぁ……」
***
虎杖「そう言えば、先生って何で椿さんを好きになったの?」
五条「え〜、なになに? 恋バナしたいの?」
伏黒「うぜぇ……」
釘崎「椿さんは確かにいい人だけど、あんたの家柄とか考えたらもっと別の人選びそうだなって疑問に思っただけよ」
五条「ああ、そういう?」
虎杖「そうそう。それを押してまで椿さんを選んだからには、それなりの理由があるのかなって」
五条「まぁ、好きな理由は色々あるんだけど、決め手は僕自身も分かんないんだよね」
釘崎「何それ」
五条「だって僕が椿を好きになったのって、ほぼ一目惚れだし」
虎杖「え!? そうなの!?」
五条「そうだよ。こんなに綺麗な人が居るんだって感動しちゃたんだよね。見た目っていうよりは、内面の美しさに惚れたんだけどね」
虎杖「確かに椿さんって善性の塊みたいな人だもんね」
五条「いい奴ってだけなら、いくらでも居るんだ。傑や硝子はもちろん、君達もね。でも、僕の心に触れたのは椿だけだった」
伏黒「………」
五条「だからかな、椿が居なきゃ一人で生きていけないと思った。強いて言えば、それが理由かな」
最初に心に触れたのが椿。大切な何かを芽吹かせ育んだ人。
一番深いところにいるのが傑。神仏の類を人間にした人。
まったく異なる部分で特別枠な二人。
この世界線の五条悟はこの二人がいないと生きていけない。
***
椿「あっ……! あ、ああ………」
五条「え、どうしたの、椿? 大丈夫?」
椿「大丈夫、ではないかもしれない……」
五条「えっ!? ほ、本当にどうしたの!?」
椿「君に貰った髪飾りが欠けてしまって……。すまない……」
五条「ありゃりゃ……。っていうか、その髪飾り、結構古いものだよね? まだ使っててくれたんだ」
椿「使い心地がよかったし、君に貰ったものだから……。でも、欠けたときに留め具の部分も外れ掛かってしまって……。修理したら使えるかな」
五条「え、僕に貰ったものだから長いこと使っててくれたの……? 何それかわいい……。っていうか、壊れたもの使ったら髪が傷付いちゃうかもしれないから、新しいのプレゼントさせてよ。ね?」
椿「………ありがとう。でも、これは取っておいてもいいかな? 愛着があるんだ」
五条「いいよ。新しいのはどんなのがいい?」
椿「えっと、普段使いが出来るシンプルなものがいいな。色は君に選んで欲しい」
五条「おっけー! 椿に似合うやつ用意するね!」
椿「………あまり高いものはやめてくれよ?」
五条「んふふ、どんなのにしようかな~」
椿「本当に、本当に高いのはやめてくれ。一般人の金銭感覚に合わせてくれ……!」
五条「は~い」
***
五条「僕のどこが好き?」
椿「色々あるけど、私のご飯を美味しそうに食べてくれるところかな。食べるものによって食べ方を変えてくれるところも」
五条「僕、そんな顔してる? 食べ方を変えてるって?」
椿「ああ。とても美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」
五条「だって美味しいもん」
椿「ふふ、ありがとう。食べ方については、綺麗に味わって食べてくれるのが嬉しいな。でも、ハンバーガーとか、そういうのはかぶりついて食べてくれるのがいいなぁって思うんだ。食事を楽しんでくれているのが分かるというか」
五条「ハンバーガーはかぶりついて食べるのが一番美味しいじゃん。ああ、でも、そういうことね」
椿「そういうことだよ。やっぱり、作り手としては美味しそうに食べてくれるのが一番嬉しくて、食事を楽しんでもらえたら“作ってよかった”って思えるものだから」
五条「じゃあ、僕は正解?」
椿「ふふ、そうだな。正解という言い方が正しいのかは分からないけれど、私にとっては正解だよ」
五条「ならいいんだ」
椿「他には、私が笑うと、君も笑ってくれるところが好きだな。私が嬉しかったり楽しかったりすると、自分もそうなんだよって、伝えてくれているようで幸せな気分になるんだ」
五条「そっ………、ま、待って……? 予想外の角度から殴られた気分……」
椿「そうか? じゃあ君は、どんなことを言われると思っていたんだ?」
五条「ほら僕ってかっこいいから、かっこいい旦那さんで嬉しい! みたいな?」
椿「ああ、それもあるな。でも、それは前提というか、当たり前になってしまっているというか。わざわざそこを取り上げるまでもないかなって」
五条「お、おわぁ……。椿にとって、僕ってかっこいいの……?」
椿「もちろん。君は出張も多いし、一つ一つの任務が密度の高いものばかりだろう? けれど、きちんと完遂させて、疲れているだろうに、それを表に出さずに笑っていられるところが強くてかっこいいなって思うよ。欲を言うなら、きちんと休んで欲しいし、私には弱いところも見せて欲しいな」
五条「………ありがとう。僕、その言葉だけで頑張れるよ」
椿「無理に頑張らないで欲しいんだけどな。それが難しいのは分かっているけれど」
五条「そうだね。でも、椿に心配を掛けるわけにはいかないから、無理はしないよ。椿も無理はしないでね?」
椿「ありがとう。……そろそろ夕ご飯を作るから、これで最後にしよう。他の好きなところについては、また今度話そう」
五条「え? もうそんな時間? 椿と一緒に過ごしてると時間が経つのが早過ぎる……」
椿「ふふ、楽しい時間は早く過ぎるものだよ」
五条「だねぇ。それでそれで、僕の好きなとこ教えて?」
椿「……君が、変わらない愛を私に伝えてくれるところ。私は君の"好き"と“愛してる”が一番嬉しくて大切だよ」
五条「…………ふぁ?」
椿「じゃあ、私はご飯を作ってくるから、君はゆっくりしていてくれ」
五条「待って!? それサラッと流さないで!!?」
椿「今度は私の好きなところが聞きたいな。ちなみに、今日はコロッケだよ」
五条「いくらでも言うよ~! 椿大好き~~~! あと、ご飯は僕も作るから!」
椿「私も好きだよ。じゃあ、一緒に作ろうか」
五条「うん!」
***
虎杖「昨日テレビ見てたら嫁姑問題の特集やっててさ。先生達は大丈夫なの?」
釘崎「あんたどんな番組見てんのよ……。まぁでも、お嫁さんと姑さんが仲悪いって言うのは割と聞くわよね」
五条「なになに? 心配してくれるの? 僕と椿の実家は問題ないよ~」
伏黒「先生はよくても、椿さんの方は大変でしょ。御三家って呪術師至上主義じゃないですか」
五条「まぁね。だから椿と実家は関わらせてないよ。だってどうせ椿の耳に入れたくないようなことしか言わないし」
虎杖「旦那さんが実家に同調して捨てられる人も多いんだって。先生、ちゃんとお嫁さん守れてすごいね!」
五条「ふふん、まぁね」
釘崎「旦那が嫁を守るのは当然よ! っていうか、あんたが一般人と仲良くしてる想像がつかないんだけど、あんたはどうなの?」
五条「大丈夫だよ~! この前も一緒にご飯食べに行ったし、父の日と母の日は椿と一緒にプレゼント贈ってるし」
伏黒「意外とちゃんとしてるな……」
五条「だっていい人達だし。僕も誕生日は毎年プレゼント貰ってるしね」
虎杖「椿さんの親御さんだからいい人だっていう想像はつくけど、どんな人なの?」
五条「“自分が苦しい時は、相手もきっとそうだから。そういうときにこそ、相手の話をきちんと聞いてあげることが大切だよ”って僕に教えてくれた人達だよ」
***
虎杖「この前、五条先生の任務について行ったんだけど、やっぱ五条先生すごいね!」
伏黒「まぁ、実力だけは確かだしな」
釘崎「性格は最悪だし、むかつくことも多いけど、そこだけは私も認めるわ」
椿「ふふ、悟を褒めてくれてありがとう」
釘崎「なんで椿さんがお礼言うの?」
椿「私が妻だからかな。よく悟の愚痴というか、酷評ばかりを聞く気がして、ちょっと寂しかったんだ。多分、妻である自分にどうにかして欲しいって事なんだろうけど。でも、そういうことばかり聞かせられるのはあまり気分のいいものではなくて……。だから、悟が褒められて嬉しかったんだ」
虎杖「あー……、そっか。椿さんにとっては旦那さんだもんね」
伏黒「すいません。俺達、無神経でしたね」
椿「彼が褒められた性格でないことは分かっているから、愚痴を言いたくなる気持ちは分かるよ。でも、あまり聞きたいものではないから控えてもらえると嬉しいかな」
伏黒「…………椿さんの前で五条先生の愚痴はやめとくか」
釘崎「…………そうね」
虎杖「五条先生、椿さんには本当にいい旦那さんなんだなぁ」
★
原作の時間軸にて
結婚して子供もいるバージョン
五条紫苑(ごじょうしおん)
3歳の女の子。顔は椿似。黒髪に空色の瞳。
六眼ではないけれど、どう見ても六眼にしか見えないため、五条悟の死後、六眼が開花するのではないかと囁かれている。
そのため紫苑の首にも賞金が掛かっており、保育園や学校には行けない。
普段は椿と一緒に悟が用意した安全な場所で過ごしている。
もしくは一級以上の術師に依頼して、護衛として付いていて貰うようにしている。
悟が高専で教鞭を取っている日は一緒に高専に来ることも。
刻まれている術式は無下限呪術。それ以外にも魔眼とか持たせたい。
五条「僕さぁ、自分に子供が産まれるまで、ちゃんと愛せるかなって不安だったんだよね」
釘崎「最低かよ。てか、そんな心境で何で子供作ったわけ?」
五条「それが五条家から出された結婚の条件だったから。僕としては椿が居ればそれで良かったんだけどね」
伏黒「で、生まれて3年になりますが?」
五条「めっちゃかわいい。椿似の女の子とか最高。絶対お嫁になんか行かせない」
釘崎「馬鹿親じゃない」
伏黒「てか、あんたはその大事な娘さんを貰った立場だろ。どの口が言うんだよ」
五条「そうなんだよね。お義父さんは聖人だと思う。僕なら絶対許さないもん」
虎杖「先が思いやられる〜! 紫苑ちゃん頑張って〜!」
***
五条「見てみて硝子! 椿と紫苑に白いワンピース着て貰ったんだけど、ちょ~かわいくない?」
家入「あん? 確かにかわいいけど、椿がめっちゃ恥ずかしがってんじゃん。勝手に写メ見せたら流石の椿でも怒るだろ」
五条「だって自慢したかったんだもん。それにまだ傑と硝子にしか見せてないよ」
家入「夏油にも見せたのかよ。これ以上は見せてやるなよ。てか、自慢って何?」
五条「“僕、聖母と結婚して天使のパパになったんだよ”っていう自慢」
家入「面白さがとどまるところをしらねぇ男だな、お前は」
***
モブ1「五条さんってかっこいいよね~!」
モブ2「分かる! 呪術師よりモデルみたいだよね!」
モブ1「でも結婚してるんでしょ?」
モブ2「私、奥さん見たことあるけど、そんなパッとしないっていうか、政略結婚でもない限りあり得ない感じだったよ」
モブ1「マジ? それなら私、アタックしちゃおっかな~?」
釘崎「…………あんなこと言われてるけど、何とも思わないの? 私、文句言いに行きたいんだけど」
椿「うーん、まぁパッとしないのは事実だしな。何とも思わない訳ではないけれど、どうでもいいという気持ちの方が強いな」
釘崎「椿さんがそれでいいなら、私からはそれ以上言わないけど。でも、こいつが許すかしら?」
五条「は? 椿は世界一綺麗でかわいいが??? は??? 眼科行け」
紫苑「パパ!」
椿「お帰り、悟。怪我はないかな?」
五条「ただいまー! もちろん無傷だよ~! 今日も世界一かわいいね!! あ、これお土産ね」
紫苑「んふふ、でしょー?」
椿「ありがとう。悟もかっこいいよ」
釘崎「……あんたら本当に仲良いわね。でも、こいつ顔だけはいいから、ああいう人達多いみたいだけど、嫉妬とかしないの?」
椿「する必要がないからな」
五条「そりゃする必要はないけどさぁ。ちょっとくらいしてくれてもよくない?」
椿「だって、誰がどう見ても、悟の特別は私達だろう?」
釘崎「まぁ、あんたらの普段の様子を見たら一発で分かるわよね」
椿「ふふ、だろう? まぁでも、一つ不満を言うなら、お土産を買う暇があるなら、一秒でも早く帰ってくればいいのに、とは思うかな」
紫苑「ね!」
椿「紫苑だって、お土産よりパパの方が嬉しいよね?」
紫苑「うん! パパがいい!」
五条「…………っ!!! 僕頑張るね……っ!!!」
***
虎杖「無下限呪術って六眼がないと扱えないんでしょ? 紫苑ちゃんが呪術師になったら俺みたいな戦い方になるの?」
五条「六眼がなくても使えるは使えるよ。完璧に扱えないってだけ。才能と努力は必要だろうけど、僕と椿の娘だから大丈夫でしょ」
紫苑「だいじょーぶ! しおん、さいきょーなるから!」
五条「お、僕のあとを継いじゃう~? 紫苑ならきっと強くなれるよ~! 僕の次くらい!」
虎杖「先生……。こんな最後の一言は余計じゃない?」
紫苑「しおんのがつよくなるもん! しおん、ひっさつわざできるよ!」
五条「必殺技?」
紫苑「むよくうちょ!」
五条「あ、無理。僕この子に勝てない。僕、最強を返上するね」
虎杖「最強の術師決まっちゃったな……」