審神者と呪いの世界






気軽に身体を乗っ取るな

宿儺「ああ、ああ……! 御前様! 御前様………!」
椿「そんなに泣くな、我が妻よ。君の目が溶けてしまいそうだ。ほら、涙を拭いて、その瞳に私を映してくれ」
宿儺「御前様………!」


***


椿「私は清庭椿。生前の宿儺の夫に当たる人間の転生体だ。一応、高専所属の呪術師をしている」
虎杖「あの、朗らかに自己紹介してないで、宿儺をどうにかして欲しいんだけど……」

宿儺「んぐ、ひっぐ……! ふぅ……! 何故、何故、御前様が目の前に居るのに触れられんのだ………!」

椿「私だって宿儺の涙を拭ってあげたいと思っている。だが、宿儺が君の身体に触れて欲しくないようなんだ」
虎杖「いや、さっき思いっきり俺の身体使ってたよね???」
宿儺「喧しいぞ、小僧……! 先のあれは、御前様を見つけた衝撃で、つい……! 俺だって、俺だって、自分の身体で………!!!」
椿「そうだな。私も君に触れたい。一緒に受肉の方法を考えよう」
宿儺「御前様………!」
椿「しかし、すまない。今世の私も術式を持っていないんだ」
宿儺「ああ、御前様……! 御前様に落ち度などあるはずもない。術式など無くとも、御前様には剣聖も跪く剣の妙技がある。生まれ持った才覚も素晴らしかろうが、努力によって得た高みもまた同じく誇らしいものだ。そも、俺は御前様のそのお気持ちだけで天にも昇るほどの幸福を得ている。気に病むことなど何一つ無い……!」
虎杖「お前、人のこと褒められたの………!!?!?」
宿儺「喧しいぞ、小僧!!!」
椿「ありがとう、宿儺。君にそこまで言ってもらえると自信が付くよ」
宿儺「御前様………!」
椿「……そう言えば、安倍晴明とか蘆屋道満とか転生していないのか?」
宿儺「……さて、どうだろうな。あれらならば肉体を用意するのは簡単だろうが、あれらが居たとして、あれらに借りを作るのはな……」
椿「借りならば私が返すさ。君に触れられるなら、その借りなどいくらでも積んでくれて構わない」
宿儺「御前様……♡♡♡」


***


ちなみに呪霊は一瞬で倒した

椿「ふふ、妻の前だ。格好良く決めたいよな」
宿儺「御前様はいつだって素敵だが!?」
椿「愛する者には何度だって惚れ直して欲しいだろう?」
宿儺「これ以上俺をどうしようと言うのだ、御前様あああああああ!!!??」
椿「ふふ、かわいいなぁ」

―――――ザシュ!

椿「さて、君をどうしようとしているか、だったな? それは君の方だろう? 甘やかな声で私の名を呼び、愛しいという心を隠さない瞳で私を見つめ、全霊を持って私への愛を叫んでいる。君の愛で、私の方がどうにかなってしまいそうだ」
宿儺「ひゅ……っ!(呼吸に失敗した音)」


***


椿「千年もの永きを経て尚、健気に愛を伝え続けて来る。こんなに愛しい事はない」


***


宿儺への想い

虎杖「宿儺のどこが良いの?」
椿「全てだ」
宿儺「俺もだ♡ 御前様♡」
虎杖「間髪入れずの返答、だと……!?」
釘崎「で、具体的には?」
椿「私は独占欲が強いと自負している。妻の愛しいところを、おいそれと他人に話したりはしないよ。後で本人に直接言うさ」
宿儺「そんな事をされたら死んでしまうが?????」
椿「その程度で死んでしまっては困るな。きっと、私の想いの10分の1も伝わらないのに」
虎杖「今で?????」
釘崎「結構直接的よね???」
伏黒「俺達にも伝わるくらいなのに???」
椿「こんなものじゃない。私の、宿儺への想いは。本当なら、心を直接あげたいくらいなのに」
宿儺「おそらく百度程死ぬが?????」
椿「駄目だ、死ぬな。長い間、寂しい思いをさせてしまったのだから、その分の埋め合わせがしたいんだ」
宿儺「千年など、御前様の事を想っていれば瞬きの間に過ぎた」
椿「それでも、独りにしてしまったのは変わらない。………千年も待たせてすまない。変わらずに私を愛してくれていてありがとう」
宿儺「御前様………!!!」
椿「愛しているよ、宿儺」
宿儺「御前様♡♡♡♡♡」
虎杖「千年この熱量ってすげぇな」
釘崎「転生してこの熱量ってのも凄いわよ」
伏黒「どっちもやべぇな」


***


対メロンパン

椿「やぁ」
羂索「お゛っ………」
椿「久しぶりだなぁ、羂索。元気だったか?」
真人「え、誰こいつ。人間?」
椿「初めまして。呪術師をしている清庭椿と言う。羂索とは千年前の知人でな。今日は挨拶に来たんだ」
羂索「お゛、おっま……! お前! 転生していたのか!!?!?」
椿「ふふ、そうだよ。てっきり気付かれると思っていたんだが、なかなかうまく隠れられていたようだな」
羂索「うっそだろ……。徹底的に調べ上げてお前の存在が居ないと安心していたのに………!」
真人「え、何。五条悟について話してた時より深刻じゃん??? こいつそんなやべぇの???」
椿「いやいや。私は五条の足元にも及ばない。彼が私に対して苦手意識を抱いているだけだよ」
真人「夏油に苦手意識持たれるって相当ヤバいよ???」

椿「ところで、宿儺を復活させようとしてくれたんだろう? 改めて礼を言いたくてな」
羂索「それ本当に礼か???」
椿「本当だとも。でも、宿儺があの器を気に入っていなくてな」
羂索「……………果てしなく嫌な予感がするが、何が言いたい?」
真人「そこで聞くのは駄目だと思うよ」
椿「一度用意出来たんだから、もう一度器を用意するくらい出来るだろう?」
羂索「簡単に言ってくれる………!」
真人「ほらぁ」
羂索「うるさいぞ、真人」
椿「出来れば自我無い方がいいな。いっそ人形でもいい。丁度いいものを見繕ってくれ」
羂索「お前は話を聞け!!!!!」
椿「呪術師や呪詛師相手には、強引にでも我を通さないと舐められてしまうからな」
羂索「お前、元々我が強かっただろ!!?!?」




23/33ページ
スキ