幸せの捜索願 番外編
原作邂逅
原作勢が平行世界の高専軸にトリップした設定。
釘崎「そっちの伏黒ってシスコンなの?」
恵「正直違うって言いたいところだが、違うと言い切れない部分はある」
伏黒「おい」
虎杖「あ、めっちゃ素直。やっぱこっちの伏黒とは違うね」
恵「姉さんが言ってただろ、世界の相違ってやつだ」
釘崎「まぁ、家族構成とか違うし、関わる人間も違うんだから当然よね。てかあんた、シスコンの自覚あんのね」
恵「仕方ねぇだろ。正直、姉さんには苦労を掛けたし、その分報われて欲しいと思ってる」
虎杖「椿さんだっけ。ちょっとしか話してないけど、伏黒のこと大好きって分かるくらい大事にしてるのが伝わって来たし、愛されてんだなって思ったよ」
恵「ああ。あの人は俺達が大好きで、大切で、何よりも優先したがるんだ。もっと自分を愛して欲しいのに。なのに、あの人は俺達にばかり底無しの愛を注ぐんだ」
釘崎「ちゃんと分かってんのね。こっちの伏黒は絶対否定するわよ。照れと無自覚で」
伏黒「………うるせぇな」
恵「あんだけ献身的に支えられて、それを否定するのは姉さんの心を踏み躙ることと同義だ。そんなことは出来ねぇだろ」
釘崎「あんたがそう言うってことはよっぽどなのね」
虎杖「家族想いなんだな、お姉さん」
恵「あの人は本当にどうしようもないくらいに馬鹿なんだ。俺と津美紀を腹いっぱいにしようと自分の分の飯抜くし、自分が俺達を守らないとってストレスで不眠になっちまうし、挙句の果てには神様と間違って宿儺に縋っちまうし……」
伏黒「お、おう……」
恵「そんで宿儺を自分の術式に組み込んじまって秘匿死刑されかけるし、撤廃の代わりに呪術師にならざるを得なくなるし、強くなる為に何度も腕を吹き飛ばすし」
虎杖「腕を吹き飛ばす???」
恵「術式の習得のために腕を吹き飛ばしたり丸焦げにしてたんだよ。俺は直接見たわけじゃねぇけど、五条先生達がばっちり目撃してる」
伏黒「おい、おい……」
虎杖「何してんの!? 何してんの、お姉さん!?」
恵「あと、呪霊の群れの中を突っ走る事で呪霊に対する恐怖心を取っ払ったらしい」
釘崎「馬鹿なの!!?!?」
虎杖「情報が、情報が完結しない……。もしかして領域展開されてる???」
恵「それ全部俺達家族のためなんだぞ? ここまでされて愛されてないはずねぇだろ」
伏黒「それはそうだ」
釘崎「そこまでされてて否定するのは確かに残酷ね」
恵「だろ? こんな人だから、幸せになって欲しいって願ってるんだ」
***
虎杖「椿先輩ってさぁ、いっつも冷静じゃん? 感情が全面的に出ることってある?」
恵「そうか? 姉さんは結構感情のメーターが振り切れやすいぞ」
釘崎「うっそ。全然そんな感じしないけど」
恵「多分、幅が狭いんだろうな。そんで、その狭い幅の部分に触れられると一気に溢れちまうんだ」
釘崎「なるほどねぇ」
***
虎杖「椿さんって穏やかな性格してるけど、言葉選びが乱暴なときあるよな」
釘崎「あー、確かに。たまにそういうこと言うんだ!?って驚くときあるわ」
虎杖「なんか、なげぇ首の呪霊相手に“首を差し出せ”って切り落としてたのは衝撃的だった」
釘崎「私は“首落ちて死ね”ってのを聞いたわ」
虎杖「首に対する執着なに??? 怖いんだけど」
釘崎「ホントにね。普段は姉弟揃って“おひさまのにおい”とか言ってんのにね」
虎杖「それなー」
***
恵「“死ぬこと以外はかすり傷“っていう考えは死ぬほどやめて欲しい」
恵「“死ななきゃ安い”じゃねぇんだよ」
***
恵「姉さんの領域展開は正直参考にならねぇんだよな……」
虎杖「え? そうなの?」
釘崎「ああ言うのって、見るだけでも得られるものがあるんじゃの?」
恵「確かにそうかもしんねぇけど、領域展開後のインパクトが強過ぎて吹っ飛ぶ」
虎杖「あー、分かる。俺も五条先生の領域展開見たとき、凄すぎて訳わかんなかったもん」
釘崎「へぇ、私、領域展開見た事ないのよね」
虎杖「椿さんのはどんな感じなの?」
恵「……………何もねぇんだよな」
釘崎「どういうこと?」
恵「特に何かがある訳でもなく、何かできる訳でもないんだ。だから、何も説明が出来ねぇ……」
釘崎「まぁ、領域展開は千差万別だし、そういうのもあるか」
虎杖「それなら確かに参考にはならんかもなぁ」
恵「学べるのは人が如何にして狂っていくのかってことくらいだし……」
虎杖「待って?」
釘崎「あまりにも物騒」
虎杖「領域展開ってもっとこう、必殺技っていうか最終奥義みたいなもんでしょ? 何でそんな技で人が狂うの? 怖過ぎるんだけど???」
釘崎「千差万別にも程があるわ」
恵「知ってるか。発狂の果てに、人は無機物になるんだ」
虎杖「知りたくなかったです」
釘崎「人って狂いに狂うと最終的に無機物になるの?」
恵「壊れちまうからな」
虎杖「やっぱ怖いって、その領域展開。悪役が使うやつだよ」
釘崎「悪役でも、もう少し慈悲があるわよ」
恵「姉さんは敵に対しては人の心を失いがちになるから……」
釘崎「それにしてもよ」
虎杖「普段の慈悲どこ行った???」
恵「そもそも持ち合わせてない可能性すらある」
釘崎「絶対あの人と敵対しないことを心に誓ったわ」
虎杖「俺も」
***
椿の領域展開発覚当時の反応。
多分、椿が高専1年くらい。
宿儺「想定外ではあったが、まぁ、ある意味お前らしいものだったな」
椿「遺憾だ。心外過ぎる」
恵「どんな領域展開だったんだ?」
椿「あー……何もない、何も出来ない……? 正直、これは領域展開なのか疑問になるようなものだったな」
恵「なんだそれ……?」
恵「親父も姉さんの領域展開見たんだろ? どんな感じだったんだ?」
甚爾「俺の思ってた十倍は無慈悲だった」
恵「姉さんの領域展開が無慈悲……???」
恵「五条さんは姉さんの領域展開について、どう思いました?」
五条「あれはやばいね! 僕の想像を超えてきた感じだったよ」
恵「五条さんの想像を超えてくるのかよ……」
椿「それで、どうだった?」
恵「ぜっっったいに敵に回したくないタイプの領域展開だった」
椿「確かに、精神を崩壊させるタイプの領域展開だからな」
恵「姉さんが味方で良かった……!!!」
***
椿「五条先生の倒し方?」
虎杖「うん。五条先生って特級で最強じゃん? 同じ特級の先輩ならどうやって倒すのかなーって」
椿「なるほど? なら、まず夏油さんの死体を用意するかな」
虎杖「何で???」
椿「五条先生を倒すには必要だろう?」
虎杖「そんなまるで"当たり前だろ?"みたいな顔で言わないで」
椿「だってあの人の遺体を転がしておくくらいしないと、あの人に隙なんて出来ないだろう」
虎杖「そうかもしんないけどさぁ!!!」
椿「ついでに家入さんの遺体も用意しておくか?」
虎杖「そんな“ついで”要らねぇ!!!」
***
椿「禪院直哉さん、でしたっけ。あの、禪院家の頭を踏みつけてやりたくなるような人のことなんですけど」
五条「どうしたの、椿???」
夏油「椿にそんな感情あったんだ???」
椿「あの人、一度去勢した方が良いと思います。そうしたらきっと、人の気持ちに寄り添える人になれるだろうから」
夏油「うん、一回落ち着こうか」
五条「深呼吸しな。ほら、吸ってー、吐いて-」
椿「………落ち着きました。それでもやっぱり去勢が必要だと思います」
夏油「駄目そうだね」
五条「誰かー、恵呼んできて~~~!」