幸せの捜索願 番外編
そして来たる休日。お弁当を携えた椿が三人にそれぞれのお弁当を渡した。
五条のお弁当はオーソドックスなお弁当だった。大きめに握られたおにぎり。中身はツナマヨだという。おかずは唐揚げにタコさんウインナー。きゅうりとレタスとアボカドのサラダ。隙間を埋めるプチトマト。ふっくらとした厚焼き卵。卵焼きはきっと、五条の好みに合わせて甘めの仕上がりになっているはずだ。
甘党の五条にはデザートも付いており、オレンジとさくらんぼが用意されていた。
夏油のお弁当は蕎麦がメインのものだった。
一口サイズにくるくると巻かれた蕎麦の上にはみょうが、ねぎ、刻み海苔、白胡麻がまぶされている。一口ごとに違った味わいが楽しめるようになっているのだ。
スープジャーに入ったおつゆも自分で作ったという。
蕎麦だけでは足りないだろうからと、おかずも用意されている。唐揚げ。ベーコンとレタスの炒め物。チーズとアボカドのサラダだった。
家入のお弁当の中身はベーグルサンドだった。食べやすいように半分に切られていて、可愛らしいピックが刺されている。
四つ入っているベーグルサンドはどれも具材が異なっており、それぞれベーコンとレタス、卵ときゅうり、トマトとチーズ、ツナマヨとアボカドだ。こちらのお弁当箱にも、隙間にはプチトマトが添えられている。
「こんな感じですけど、どうでしょうか?」
「「「いやいやいや!!!??」」」
「待って、全員違う中身のお弁当を用意してくれるとは思ってなかった」
「まさかここまでやってくれるとは思わないじゃん???」
「………私達、もしかして軽率にお弁当頼んじゃった?」
これだけのお弁当を作るのに、どれだけ手間が掛かったのだろうか。自分だったら絶対に作らないだろうと思うような品数に、三人の胸の内に感謝よりも罪悪感が生まれる。
「お金を貰っているので、出来るだけ被らないようにしました。その分お金が掛かってしまって申し訳ないんですけど……」
中身の異なるお弁当なんて、普段ならば絶対に作らない。相手が普段お世話になっている五条達であるから、喜んで欲しくて個人の好みに合わせたものを作っただけである。
あとは、それよりも大変な思いをしていた経験があるからこそ作れたのである。何せ椿は100を超える刀剣男士のいる本丸の台所に立っていた事があるので、それに比べたらどうということはなかったのだ。
(まぁ、本丸に居たときはデリバリーにも頼っていたし、全振り分を一気に作っていた訳ではないのだけれど)
出陣先や遠征先で食べて貰うこともあったし、各自の体調に合わせて、個刃で作って貰うことも多々あった。そのため、全振り分の料理を一度に作ることは殆ど無かった。それでも、作り終わる頃にはへろへろになってしまうだけの品数を作ってきたのだ。それと比べれば、たった三人分である。さほど苦労することなく作り終えることが出来た。
「気に入ってもらえるといいんですけど」
―――――出来れば感想をもらえると嬉しいです。
そう言って笑う椿に、三人は思わず天を仰いだ。これはもう、盛大にお礼をするしかない。
後日、椿の元にお高いお土産とお弁当の感想が綴られた手紙が届くのだった。