幸せの捜索願 番外編
たくさんの死を見てきた。
呪霊によって殺された人の痕跡。任務の中で冷たくなった同志。人を殺した呪詛師を手にかけた感触。
たくさんの死を見てきた。
「人の命が軽くなってきたか?」
楽しげに、宿儺が笑う。
邪悪な性質を反転させてもなお、失われない彼の本質。人を脅かすもの。
私の心に罅が入るのが、彼には愉快でたまらないのだ。
「知ってるか? 魂の重さは、21グラムしか無いそうだよ」
とあるアメリカ人の医師が、魂の重さを計測すると言う実験を行った。医師曰く、魂には重さがあり、死の前後の体重を測ることでこれを証明出来ると唱えたのだ。
医師は特別なベッドに患者を乗せ、息を引き取るまでのあらゆるデータを収集したという。その結果、最も正確に記録を測定できた患者において、21グラムの減少が見られたらしい。これを魂の重さだと結論づけたのだ。
まぁ、この実験結果は信憑性の低いものとされていて、信頼できるデータではないそうだが。
「もしこれが本当だとしたら、人の命のなんと軽いことだろうな」
もしかしたら、命がこんなにも軽いのは、命を作った誰かが、いつか命を背負うことを想定していたのかもしれない。
「……はっ。いつまで持つか、見ものだな」