幸せの捜索願 番外編
甚爾と椿
甚爾「残念なことに、お前は俺似だな」
椿「本当か? 嬉しいなぁ」
甚爾「はぁ? 母親に似りゃ良かったって言ってんだぞ」
椿「だって父さんに似てるって事は人に愛される才能があるということだろう?」
甚爾(いやこれ母親の血だわ)
甚爾と椿
甚爾「そういやお前、五条やら夏油やらと仲良いよな。あいつらデリカシーとかねぇだろ。むかついたりしねぇのか?」
椿「まぁ、確かに五条さんは率直な物言いをする人だし、夏油さんは無意識に相手を煽るところがあるとは思うな」
甚爾「お前でも腹立つのか、あいつらは。逆にすげぇな」
椿「私だって怒りくらい湧くときはあるさ。でも……」
甚爾「でも?」
椿「五条さんは思ったよりかわいい人で、夏油さんはしょうがない人なんだなって気付いたら、そこまで怒りが湧くことは無くなったな」
甚爾「………………」
椿「ん? どうした、父さん」
甚爾「それ、絶対あいつらに言うなよ」
椿「言わないよ。怒らせてしまいそうだし」
甚爾「絶対だからな」
椿「うん、約束する」
甚爾(こいつ、本当に人たらしだな……。気を付けねぇと……)
虎杖と椿
虎杖「椿先輩って伏黒のことかわいいってよく言うけど、伏黒ってかっこいいとか綺麗って感じじゃない? やっぱ弟ってなると、どんな見た目でも“かわいい”になるの?」
椿「身内の欲目もあるだろうけど、私の目から見ても恵は美人だよ。でも、彼の形容詞はどうしても“かわいい”になってしまうかな」
虎杖「見た目で言ってるわけじゃないって事?」
椿「ああ。“かわいい”にもいろいろ種類があるだろう? あの子に対する“かわいい”は“愛おしい”と言い換えることも出来るな」
虎杖「…………おわ……」
椿「どうした?」
虎杖「ナンデモナイデス………」
虎杖と釘崎と椿
虎杖「椿先輩の親父さんって褒め上手だよね」
椿「ふふ、そうだろう? でも、最初はそうじゃなかったんだ」
虎杖「そうなの?」
椿「そうだ。最初は褒めるっていうことすら分かっていないようだったよ。きっと、褒められたことがなかったんだろうなぁ……」
釘崎「褒められたことがない? そんな事って……」
椿「禪院家は“呪術師に非ずんば人に非ず“だそうだから」
虎杖「あ……」
釘崎「それって……」
椿「多分、そういう扱いだったんだろうな。だから、津美紀の「流石お父さん」っていう言葉だったり、恵が思わず言った「すげぇ」の一言が何よりも嬉しいみたいなんだ。だから父さんのことで恵をからかったりしないで欲しい。恵からの言葉がなくなってしまったら、父さんが寂しい思いをしてしまうだろうから」
釘崎「……そうね。別に親子関係を悪くしたいわけじゃないし、そこら辺は突っ込まないでおくわ」
虎杖「こっそりニヤニヤしてるのはオッケー?」
椿「本人達に気付かれなければ構わない」
虎杖「……椿先輩ってさぁ、めっちゃいい人だよね」
釘崎「“善人”の見本みたいなところあるわよね」
虎杖「あと、めっちゃ家族大好きだよね」
釘崎「分かる。どんな些細なことも見落とさないところとかね。滲み出てるわよね」
虎杖「伏黒がシスコン気味なのも分かるわ」
釘崎「……椿さんみたいなお姉ちゃんだったら欲しかったかも」
虎杖「それな」
宿儺と椿
椿「そう言えば、宿儺は私達のことを名前で呼ばないよな。私の事はまだしも、お気に入りの恵のことも名前で呼ばないのは何故だ?」
宿儺「七つまでは神のうちというだろう」
椿「………あっ、あ、ああ……。なるほど………」
宿儺「由来は様々だが、そのうちの一つに"七つまではいつ死んでもおかしくはない"と言う意味がある。万が一にもそうなっては困るからな」
椿「確かにそうだな……。あ、それなら、もしてかして、神隠しも出来たりするのか………?」
宿儺「………さてなぁ?」
椿「…………その気になれば、出来そうだな……。特に私は自分で名前を名乗ってしまっているし」
宿儺「ま、お前を隠す事は無かろうよ。お前ではすぐ飽きる」
椿「恵は渡さないぞ?」
宿儺「せんわ。あれは命を燃やす姿が良い。隠してしまえばそれを見る機会も無くなろう」
椿「………そうか」