幸せの捜索願
特級呪具『紅紫苑』
呪具に込められた術式は「記憶」。使い手の情報を記憶し、主と定める。
主と定められた使い手以外が紅紫苑を使おうとしても鞘から刀を抜くことすら出来ない。
それでも無理矢理使用しようとすると、紅紫苑に斬り伏せられる。
甚爾は知らないが、この刀は今まで誰も抜刀することが出来ず、主となる人間が存在しなかった。
呪具の収集家達は、我こそはと名乗りを上げていたが、そう言った者達の手に渡ることはない。
のらりくらりと、欲に取り憑かれた手をすり抜けて、ひとどころに留まらない。
ずっと、自分の主に相応しい人間を待っていたのだ。ずっと、椿を待っていたのだ。
だって紅紫苑は、彼女のための守り刀なのだから。