幸せの捜索願






 伏黒椿という子供は、かわいらしさの欠片もない子供だった。
 自称小学一年生の6歳。高専が調べ上げた結果もそのように記されていたが、俺―――――五条悟はつい先程までそれは嘘ではないかと疑っていた。
 呪霊を恐れず、宿儺を恐れず、腕が弾け飛んでも立ち上がる。齢6つの子供の出来ることでは無い。
 本当なら、大人の居ない状況下で弟妹二人を守らなければならないという境遇に、泣き喚いても良いくらいなのに。それでも椿は決して涙を見せず、笑みを絶やさない。
 高専での呪術師としての訓練中も、子供とは思えない集中力で訓練に励み、勤しむ。その課程でどれほどの重傷を負おうとも、心が折れることはなかった。

 酷く、大人びた子供だった。下手な大人よりも、ずっと大人だった。そこいらの呪術師よりも、よほど心が強かった。

 けれど、子供は子供でしかなくて。悲しいことがあれば落ち込む。苦しいことがあれば傷付くのだ。
 抱きしめた身体は小さくて、柔らかくて。震える声は高くてまろい。
 簡単に壊れてしまいそうで、手の中にいるのに、たちまちに消えてしまいそうで。その事実がどうしようもなく怖かった。


(守ってあげなきゃ、駄目なんだ……)


 ここまで明確に誰かを守りたいと思ったのは、このときが初めてだったかもしれない。




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