幸せの捜索願
「何であんたみたいな奴が“そこ”に居るの」
その言葉を言ったのは、初めて見る女性だった。少女と言って良いかもしれない。
真っ黒の生地に、特徴的なボタンの制服。それぞれに合わせてカスタマイズされているから判別が難しいけれど、少女は呪術高専の生徒だろう。小柄で細身。かわいらしい顔立ちをしている。
少女は、その人好きのする顔をどうしようもないほどに歪ませて、嫌悪を滲ませた眼差しで私を見下ろしていた。
「“そこ”はあんたみたいな奴が居て良い場所じゃないのよ」
少女は、この世界を識っているようだった。だから、一目で私を異物だと判断したのだ。
だから、その言葉を言われたとき、自分はやはり異質な存在なのだと確信した。してしまった。
この世界で得たものは、全てまやかしでしかないのだと、そう思ってしまったのだ。
疑ってしまった。受けた愛を、伸ばされた手の優しさを。見ず知らずの誰かの言葉で、大切な人達の心を。
「あんたが“そこ”に居るのは、間違っている」
嗚呼、やはり、そうなのだ。自分という存在が、ここに居るのは間違っていたのだ。
自分をこの世界の異物のように感じていたのは、正しかった。この世界を識る者が、それを証明してくれた。
―――――やはり、自分はここに居るべきではないのだ。あの子が地獄への道を知ってしまったのも、私という異物が居たからだ。
たまらず、その場から逃げ出した。まだ何か言いたげな少女を置いて。
走って、走って、息が苦しくて。そんな些細な事すらも、私を拒絶しているように感じてしまって、どうしようもなく泣きたくなった。
「宿儺ぁ!」
呼べば、すぐ隣に宿儺が現れる。
「どこか遠くへ、ここではないどこかへ連れて行ってくれ!」
「はぁぁぁ……メンド………」
口では悪態をつきつつも、宿儺は私を抱えてくれる。
腕で庇うように胸元に抱き込み、宿儺が駆ける。私の願いの通りに、どこか遠くへ。