幸せの捜索願
呪力の扱いについては、そこまで問題は無かった。無意識には使えているようだったから、それを意識的に使えるようにするだけでいい。
宿儺の言うとおりに呪力を流すと、徐々にではあるが要領を掴むことが出来た。
問題は術式だ。まだまだ呪術について理解の浅い私では、自分の術式であろうとも、十分に理解していないのだ。
何かあったときのためにと、高専の呪術師達から連絡先を教えて貰っている。私はその中の一つである夏油に連絡を取った。
五条でも良かったけれど、彼は天才肌で、感覚的に出来てしまうタイプだと伺っている。私はそういうタイプではないので、丁寧に教えてくれそうな夏油を選んだ。
彼からのアドバイスは「術式の解釈を広げてみるといい」というものだった。何でも、生得術式の幅を広げることで、拡張術式というものが得られるらしい。要するに、応用技を生み出すことが出来ると言うことだ。
そう言えば、と思い出す。恵が影に落ちたときのことだ。父は恵の術式を、影を媒介に式神を顕現させるものだと思っていたようだ。だから、恵が影の中に落ちてしまったと聞いて、酷く驚いていた。
つまりあれは、本来の術式の使い方ではないのだ。あれは、術式を拡張したために出来たことなのではないだろうか。
(私は今、どのような状態にある?)
解釈次第でいくらでも応用することが出来るということは、術式に正解はないのだ。何かに捕らわれる必要は無い。自由に、思い付いたことを試してみれば良いのだ。
「宿儺」
「何だ」
「私の術式って、神格を与えるだけでは無いと思うんだよな」
「ほう?」
宿儺が楽しげに笑う。興が乗ってきたと言わんばかりの、好奇心の混じった笑みだ。
普段恵に向けられている種類の視線を感じて、私はニッと口角を上げた。