幸せの捜索願
私の術式は『神格付与』と名付けられた。
その名の通り、神格を与える術式である。神格を付与した相手は術者を「主」とし、調伏状態に置くことが出来るそうだ。
相手の方が格上でも、『神格』という高次元の『格』を与えるという行為に報いるための対価に力を貸してくれる。
ただし、これには条件があり、相手を『神』として崇める行為を行わなければならないという。
呪いの王として名を馳せている宿儺が私のお願いを聞いてくれているのは、この術式の効果によるものであるようだ。
そしてご飯を用意したり、呪霊を祓ってくれたお礼をしていることも、供物を捧げる行為としてカウントされているようで、『縛り』が重ね掛けされている状態にあるらしい。
また、この『縛り』を重ねて行うことで、その分神格が強化されるという。宿儺の性質が反転してしまったのも、私が『善』の神だと認識した状態で神格が上がったからだそうだ。
私の術式を詳しく分析してくれた五条曰く、「攻撃力が皆無の代わりに、相手を無力化することに特化した術式」とのこと。
この術式は発動までにかなり時間が掛かるため、普通の呪霊に対する汎用性は低いが、呪物や呪胎には優位が取れるそうだ。その中でも攻撃手段を持ち、高い実力を持つ宿儺を調伏状態に置けた私は、相当運が良かったらしい。
(やっぱりすごいなぁ……)
宿儺が斬撃を飛ばして呪霊を祓う。相当大きな呪霊だったが、彼は意にも介さない。
「宿儺は斬撃が使えるんだよな。それが宿儺の術式か?」
「ああ」
「他には何が?」
「炎と、反転術式も使える」
「いろいろ出来るんだな」
攻撃手段に加え、回復も行えることに驚く。しかも、他人に行うのは難しいとされる反転術式を、他人の治癒にも使えるらしい。
反転術式は後天的に使えるようになることもあるそうだから、いつか私も使えるようになると良いのだが。
(でも、一番欲しいのは大切な人達を守れる力だ)
折角力を得たのだから、宿儺だけに任せるなんてしたくない。私だって戦いたい。
幸いにも、前世と違って、呪力があれば呪霊を祓うことが出来る。だからきっと、私も彼と共に戦えるはずなのだ。
私には、何が出来るのだろう。神格を与える以外にも、何か出来ることはないだろうか。