幸せの捜索願
スクナは“宿儺”と書くらしい。元々は人間で、千年の時を超えて呪物として存在しているという。祠に置かれていたのは、祀られていたのではなく、封じられていたからだそうだ。
本来は厄災をもたらすものであると彼は言う。私―――――椿の力で性質が変質しているらしく、現在は破魔の力が宿っているのだそうだ。
「…………だれ?」
ただいまというと、おかえりといって、津美紀と恵が揃って出迎えてくれた。
けれど、隣に並ぶ宿儺を見上げ、恵が訝しげな表情を浮かべた。恐ろしげな見た目を変化させて貰ったので怯えるようなことはなかったが、初めて見る顔に警戒しているようだった。
「恵? お姉ちゃん? 誰か居るの?」
「津美紀には見えないのか……?」
不思議そうに首をかしげる津美紀に、恵がぎょっとする。津美紀が“見えない”人間であることは彼も分かっているから、津美紀に見えない宿儺が普通では無い存在であると認識したのだ。キッと目尻を釣り上げ、宿儺を睨み付ける。宿儺は気にも止めていないようだった。
「学校に行く途中に、祠があるだろう?」
「ほこら?」
「神様のお家だって!」
「ふぅん……」
「彼はそこに住んでいる神様だよ」
津美紀は「すごいすごい」と嬉しそうに頬を上気させている。恵は訝しみながらも、先程よりも顔が明るくなっている。宿儺を見上げる瞳が、キラキラと輝いている。
「毎日お参りしていたら、顔を見せてくれたんだ」
「ほんと!? 私も会いたい!」
「津美紀も一緒にお参りしようか。そうしたら見えるようになるかも知れない」
「うん!」
「…………それで、その神様がなんなんだよ」
「お参りしてくれたお礼をしてくれるんだって」
だから怖がらなくて良いよ、と私が言うと、恵はむっとして「怖くねぇし」とそっぽを向いた。