牛島さんの幼馴染みで恋人な姐さん






没ネタ

「他の誰にも捕られたくないので、他に好きな人が出来るまで俺を恋人ということにして欲しい」
「それは構わないが、そうなると私は君の恋人として振る舞わなければならないと言う事だろうか?」
「いや、それについてはお前が許容する範囲で構わない。嫌だと思ったら拒否してくれ」
「それは果たして恋人と言えるのか? 結局、君は私をどうしたいんだ?」
「一生大事にしたいと思っている。だから、お前が嫌だと思うことはしたくない」


「嫉妬はする方もされる方も辛いだろう。だから、嫉妬されない方法を考えている」


「顔の美醜は人によっては重大な事項かもしれないが、私は顔で人を選びたくない」
「そもそも私は、人の顔に好き嫌いがあまりない。どちらかと言うと、表情の好き嫌いの方が激しいな」
「表情?」
「ああ。いつも不機嫌そうな人は苦手だと思うし、素直に感情を表してくれる人の方が好ましい」
「………それだと、俺は好みから外れるが」
「そうでもない。君は至極分かりやすいからな」
「………そんなことを言うのはお前くらいのものだ」


及川さんの顔をどう思うか尋ねられての返答。
「綺麗な顔だとは思うけど、それが決め手になることはないかな」


「でも、椿ちゃんは後から好きになった感じなの?」
「どうだろう。そこら辺は曖昧だ。でも、好きでもない相手と一緒に居られるほど、私の器は大きくない」


「見た目の話か? 私は人の見た目にはあまりこだわりがない」
「えっ、そうなの? 人は見た目が9割とか言うじゃん?」
「それは初対面の話だろう。もちろん、清潔感は大事だと思うし、不機嫌そうな態度を取られていれば不快には思うが、美醜については特に何も」


「他の女の子を知りたいと思わないの?」
「……? 知っているが」
から、牛島は二股してたとか色々な噂が駆け巡る
「面白いことになっているなぁ」
「嫌じゃないの?」
「エンタメとして、何でもかんでも面白おかしく扱われるのは確かに不快だが、そういうものへの興味を抑えられないのが人のサガだ」
「俺もゴシップ好きだし、人のこと言えないけどさぁ……」
「害がなければ、多少は我慢するさ」
「もう既に害じゃん。若利くんなんて二股三股してた最低野郎扱いだよ?」
「………男に媚びへつらうビッチ扱いとどっちがマシだろうな」
「うへぇ……。椿ちゃん、そういう扱いなの……?」


「他の女の子を知りたいと思わないの?」
「……? 知っているが」
から、牛島は二股してたとか色々な噂が駆け巡る。
「不愉快だな」
「直球! まぁ、俺も腹立ってるけど!!」
「何がどうして二股疑惑なんて出たんだ……?」
「若利を逆恨みした奴の犯行。あるいは、若利の天然が炸裂して誤解を生んだ可能性。私としてはこの二つのどちらかだと思うが、君達の意見は?」
「俺もそれかなぁ」
「何にしても腹立つぜ。若利が二股なんてするわけないだろ」
「そも、二股なんて出来るような器用な男ではないだろう。他に心が移ったら、その瞬間に気付く自信があるぞ」
「確かに、若利はそんなこと出来ないよなぁ……」
「別の人を好きになったら、きちんとけじめを付けてからそっちに行きそうダヨネ」
と話しているところに
「椿!!!」
と牛島が現れる。
椅子に座る椿の前に膝をついて両手を掴む。
「違う、違うんだ。あの噂は誤解だ。信じてくれ」
「ああ、信じているとも。きっと、誰かが君の言葉尻を捉えて悪意があるように広めたんだろうさ。今、噂の出所はどこだろう、と話していたんだ。だから、安心してくれ」
「………………そうか……」
と脱力する。
「さて、本人も来たことだし、続きを話そうか」
「切り替え早っ!!」
「もうちょい構ってあげなよ!!」
「そうか?」
と、右手を抜いて、握りしめたまま動かない牛島の頭を撫でる。


「顔とかステータスで選ぶ奴もいるだろ? で、付き合ったら“思ってたのと違う”とかさぁ……」
「実感がこもっているな。実体験か?」
「俺のことは置いといてくれ、頼むから」
「そもそも言っていいか? 私と若利は幼馴染みだぞ? 新生児くらいの頃のアルバムに、すでに若利の姿があるくらいには長い付き合いだぞ?」
「予想外に長い付き合い」
「そんな小さい頃から一緒なのかよ……」
「ああ。要は、お互いの失態なんて嫌と言うほど見てきている間柄なんだ。今ここに至るまでの過程を、ずっと見てきているということ。つまりだな、顔とかステータスとか、それ以前の問題というか……。念頭になかったというか……」
「それは、うん……」


「確かに若利くんかっこいいもんねぇ」
「そうだな。バレーをしている若利は最高に格好いいと思う」
「だから、それは直接俺に言え」
「必死かよ、若利くん」




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