天文台にて目を覚ます
人の気配が、近づいてくる。
つい最近まで感じていた/長らく感じなかった人の気配が。
魔術行使による魔力の反応。
湧き立つ人の声。
この感覚を、私の体は知っている/覚えている。
手を伸ばされる。
これはかつて彼に向けられた様な、こちらを招くようなものではない。物でも扱う様な、無情のそれ。私に害を成すもの。
この手から逃れなければ。そうしなければまた、私はめちゃくちゃにされてしまう。
どうする。どうする。どうする。
目が開かない。体は動かない。逃げられない。
今の私には、一体何が出来る?
―――ああ、
簡単なことだ。呼べばいいのだ。
私の声なら、彼はきっと答えてくれる。
動くことすら困難な体は、口を開くことさえままならない。
けれど、諦めない。足掻くことだけはやめられない。
たった一言なのだ。たった一言で良いのだ。ならば、多少は無茶をしてでも、やってのけるしかない。
「来て」
呼べ。己が剣となる、英霊の名を。
私の声なら、きっと彼に届くから。
「ギルガメッシュ」
その瞬間、瞼の裏が黄金に染まる。
その光を見て、私の不安は綺麗に消えた。
だってその光は、彼の魂の輝き。
それが私の呼びかけに対する、彼の答えだった。