蛇の計略






 ジャミルに頼まれて、授業で使ったという備品の返却に準備室に寄った、その帰りのことである。
 監督生は見てしまった。フロイドが血塗れの相手を、それでも尚、殴り続ける光景を。

 知りたくなんてなかった。裏側なんて見たくなかった。知らなければ、見なければ、好きなままでいられたのに。
 急激に冷めていく熱が哀しくて。萎んでいく恋心が寂しくて、監督生は静かに涙を流した。


(いっそ全部無くなっちゃえば楽なのに。そうしたら次の恋を見つけられるのに)


 けれども完全には無くならないのだから、どうしようもないのだ。




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