イグニハイドのジャミル・バイパー
イデアとジャミル
「…………ジャミル氏。ジャミル氏って、臨死体験とかって覚えない?」
「ああ、ありますよ。昔、毒を摂取してしまって」
「いや、あっさり言うには重い~! 熱砂の国は地獄か???」
「それで、それが何か?」
「…………自分に何が憑いているのか分かってる……?」
「ヤバい奴っていうのは分かります」
「そっか~~~」
「あと、こいつを引き剥がそうとしたら、引き剥がそうとした奴が死ぬんです。俺自身も死ぬっぽいんで、やめて欲しいんですけどね」
「ああ、やっぱり? うん、まぁ、無理矢理延命させられてるっぽいからね……。まぁ、害はないっぽいから、大丈夫、かな?」
「まぁ、害されたことはないですね」
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イデアとジャミル
「ジャミル氏って何でイグニハイドなの?」
「闇の鏡曰く、俺個人の魂のかたちはスカラビアらしいです。けれど憑いてるナニカの性質がイグニハイドらしくて」
「闇の鏡って、取り憑いてる奴の魂まで見れるの……?」
「みたいですね。それで、俺はそのナニカに生かされてるんで、そっちの方が優先されたみたいです」
「魂の比重はそっちのが上なんだね……」
「あと、イグニハイドはこう言ったものへの理解者が多いと聞きました。そういう配慮もあったのかも」
「ああ、それは保証するよ。みんな、君の味方だよ」
「……はい」
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イデアとジャミル
「ジャミル氏って可愛いよね……」
「えっ、どこがですか!? 俺は"可愛い"より"かっこいい"が良いです!」
「そういうとこだよ」
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イデアとジャミルとアズール
「イデアさん、今日は部活ですか?」
「え? う、うん、そうだけど……」
「俺も一緒に行っていいですか? 今日、バスケ部は体育館の点検でお休みなんです」
「せ、拙者は構わんでござるよ。でも、カリム氏は?」
「カリムは部活です。いつもだったら終わるまで図書室にいるんですけど、そういう気分じゃないので」
「あるよね、そういう日。いいよ、おいで。アズール氏も、ジャミル氏だったら邪険にしないでしょ」
「俺ゲームってマンカラくらいしかやった事ないんで、見学させてください」
「見てるだけでいいの?」
「他人のプレイに茶々入れるのって面白くないですか?」
「ふひっ、性格悪いね、ジャミル氏」
「でも、やっぱり一人だけ仲間外れっぽいのは嫌だから、みんなで出来るゲームしよ」
「ボードゲームは2人プレイが多いのでは?」
「ボドゲ部にはボドゲ以外のゲームもあるんすわ。スマブラ……は難しいかな。マリカしよ、マリカ」
「まりか?」
「レースゲーム。そんな難しい操作は無いと思うから、少しやれば出来るようになるよ」
「なら、やってみます」
「おや、ジャミルさんではありませんか」
「一日限定ボドゲ部員だ。放っておいていいぞ」
「寂しい事をおっしゃる」
「ジャミル氏、体育館の点検で部活無いんだって。それでうちに来たんだけど、いいよね……?」
「もちろん、構いませんよ」
「今日はマリカしよ。ボドゲはルール覚えなきゃいけないの多いし、3人で出来るでしょ?」
「良いですね。では準備しますね」
「手伝おう」
「う、うぅん? うまくカーブが曲がれないんだが……」
「んぐぅ……!」
「えっ、アズールどうした?」
「いえ、何でもありません……」
「ねぇ、やっぱりジャミル氏可愛いよ。初心者あるあるを完全に踏襲してるところとか」
「可愛くないです。それより、このカーブをうまく曲がれないのって、初心者あるあるなんですか?」
「いえ、そっちではなく、カーブの時に首や上体が傾くのが初心者あるあるです。ジャミルさん、カーブの度に一緒に首を傾げてましたよ」
「えっ」
「ジャミル氏、天然でそのあざとさなの? やばくない?」
「やばいですよね。……これ、もしかしたら商売に生かせるのでは?」
「ジャミル氏のこれはジャミル氏にしか出来ないやつですぞ。あきらメロン」
「では、ジャミルさんがオクタヴィネルに来てくださったら万事解決ですね! どうです? 我が寮はいつでも貴方を歓迎しますよ!」
「絶対にお断りだ」
「おっおっ? 戦争か? うちの子はそう簡単にあげませんぞ?」
「おや、残念。ではまたの機会に」
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アズールとジャミル
「ところで、ジャミルさんにはヤバいものが取り憑いているという噂があるのですが、実際どうなんです?」
「事実だぞ。俺はこの分野に詳しくないからよく分からないが、専門家が揃って命を落とすか匙を投げるレベルだ」
「命落としちゃうレベルなんですか……」
「ああ。ドラコニア先輩達、五本指全員に首を振られた時は最早笑ったよな」
「嘘でしょう?」
「彼らには"グレートセブンも諦めるだろう"と言われたよ」
「そこまで???」
「なら、君も試すと良い。これをどうにか出来れば、君も晴れて伝説となる」
「お断りします」
「懸命な判断だ」
「ウツボ達が興味を示しそうなので、参考までに伺いたいのですが、そのナニカに手を出した人達ってどうなりました?」
「さぁ?」
「えっ? 知らないんですか?」
「ナニカに手を出してから降り注いだ不幸が多すぎて、どれがナニカが引き起こしたものか分からないんだよな。あと、本当に分からない奴も多い」
「…………わかっている範囲で構いませんよ」
「なら簡潔に。とりあえず最後は死ぬ」
「簡潔過ぎます」
「そこに至るまでは実に様々だ。手を出した奴と、そいつの親族や知人友人合わせて数百人が捻り切られて死んだ」
「は? 数百? 捻り切られて……?」
「また別の奴は、街中を歩いていると、突然ペシャンコに潰されて死んでいる。同時刻に、そいつの恋人も同じ死に方で死亡が確認されている」
「突然ペシャンコとか恐ろし過ぎません? しかも今度は2人だけ?」
「ああ。他にも、内側から食い破られるようにして死んだ奴や、頭から植物を生やして死んだ奴。発狂して喉を掻き毟って死んだ奴なんかもいたりする」
「すいません、ちょっと気分が……」
「これはまだマシな死因だぞ」
「えっ」
「俺が知っている中で一番意味が分からなかったのは、頭から爪先まで絞ったタオルの様な状態で半分ほど地面に埋まって死んでいた奴だ」
「うぐっ……」
「しかも道連れになった面子も不可解で、両親と配偶者は無事だったのに、兄弟と従兄弟、他は名前と顔が一致する程度の知人が選出されている」
「む、無作為すぎませんか?」
「まぁ、ナニカはナニカでしかないからな。人の交友関係なんぞ理解出来ないんだろう。だから、それっぽい奴を選んで殺してるんじゃないか?」
「まぁ、手を出した本人が殺されるのは確定している」
「ウツボ共に言っておけ。あらゆるものを巻き添えに、自らも身を滅ぼす事になるぞ、と」
「………………ええ、必ず伝えておきます」
「最悪なのは実行犯のウツボの片割れが死んで、お前が巻き添えになる事だな。残されたウツボも後を追いそうだ」
「やめてください(震え声)」
想像に難くないのでアズールは泣いた。
ウツボ達は泣き落としで止めた。
その日は3人で寝た。
くっそ狭かったけど、3人でいる安心感半端ない。
★
ジェイド「こんにちは、ジャミルさん」
フロイド「やっほー、ウミヘビくん」
ジャミル「………………こんにちは。アズールから話は聞いていないのか?」
フロイド「聞いたよー。だから手ぇ出すつもりはねぇから安心して?」
ジェイド「ええ。何なら契約書を認めても構いませんよ」
ジャミル「なら何の用だ?」
ジェイド「いえ、昨日のアズールはまるで稚魚返りをしたように泣き喚いていたものですから、一体何があったのかと気になりまして」
フロイド「でも、アズールってば、何も教えてくんねぇの。だから直接聞きに来たんだぁ」
ジャミル「…………なるほど? つまり、昨日の話をお前達に聞かせればいいんだな?」
この後ウツボは稚魚返りした。
この日も3人で寝た。
ちなみにジャミルは昨日の話を悪意マシマシで、より極悪なものを話した。
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イデアとジャミル
「イデアさんって、寮生を"うちの子"って言いますよね」
「えっ? うん? 言う、かな……?」
「はい。あれ、俺好きです」
「そうなの?」
「はい。多分、俺以外もそう思ってますよ」
「…………ふぅん、そっか」
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イデアとジャミル
「ジャミル氏、青色は似合うのに寮服は似合いませんなぁ」
「青色は似合うんですか?」
「うん、めっちゃ似合う。てか、何でも似合うと思うよ」
「イデアさんは青が似合いすぎて、他のイメージが湧きにくいです」
「そう? まぁ、この髪色だしね……」
「こんな綺麗な青、他にありませんもんね」
「ヒェッ…………」
「イデアさん?」
「な、何でもないでござる……」
ジャミルがイグニ寮服着ると、服に着られてる感じで可愛い事になりそうだな、と言うイメージ。
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エース「そう言えば、フロイド先輩ってどんなに不機嫌でもジャミル先輩には八つ当たりしませんよね?」
フロイド「だってオレ、ジェイド1人にしたくねぇし。アズール道連れにしたくねぇもん」
エース「は? 何スか、それ……」
フロイド「聞いたことない? "イグニハイドの黒蛇とナニカ"。先輩達が絶対に教えてくれる筈だよ」
エース「聞いた事はありますけど、あれってマジなんスか?」
フロイド「それ、ウミヘビくんの事だよ」
エース「はっ!?」
フロイド「イグニハイドに行けば、実際の死者数とか、判明してる分の資料開示してくれるよ」
エース「マジ、なんスね……」
フロイド「ちなみに俺ら以上の代では何人か死んでるから、絶対誰も手ぇ出さねぇよ。カニちゃんも気をつけな」
★
べしゃっ
ジャミル「お?」
エース「え?」
フロイド「は?」
モブ1「えっ、なになになに!?」
モブ2「血!? 血!!?!?」
ジャミル「体育館を汚すなよ……」
エース「いや、何スか、その反応!? てか、この血みたいなの、何!?」
ジャミル「血だよ。俺を害そうとしてた奴の」
エース「………………は?」
フロイド「例のヤバい"ナニカ"がやったの?」
ジャミル「ああ。こいつが俺に何をしようとしていたのかは知らないが、ナニカが気に入らない行動を取ったんだろ」
モブ1「ナニカちゃん怖過ぎ」
モブ2「ナニカが気に入らない行動って?」
ジャミル「俺を害すること。俺とナニカを引き離そうとすること。今のところはこの2点かな」
エース「…………これが、ジャミル先輩に憑いてるっていうナニカっすか?」
ジャミル「ああ。俺の意思に関係なく、気に食わない奴を殺していくんだ。困ったもんだよ」
★
カリムとジャミル
「カリム。迎えに来たぞ、着替えは済んでるか?」
「ジャミル! いつもありがとな! あとはターバンだけだぜ!」
「貸せ、巻いてやるか」
「おう、頼むぜ!」
カリムはそこにジャミルの意思が無いのを理解しているので普通に接する。
「ナニカは俺と同じでジャミルが大好きなだけだぜ!」
「俺はナニカとも友達になりたいぜ! だってジャミルを救ってくれた良い奴だからな!」
ジャミルは様々な葛藤の末、カリムに対しては(こいつ頭おかしい)で済ませられるくらいになった。
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「もう慣れたよ」
人が死ぬのも。独りになるのも。
けれどこいつは俺の害を全て取り除いてしまうから、ブロットさえも溜まらない。
オーバーブロットなんて出来やしない。
「いっそ爆発出来たらなぁ……」
★
カリムとジャミル
「ジャミルは独りじゃないだろ?」
「…………………………お前の世話があるからな」
「そこは友達って言ってくれよ!」
「友達じゃない」
原作とは違う意味で縛り付けられてるジャミル。
多分、ナニカもカリムは殺さない。
それがジャミルの害になることを知っているから。