成り代わりカリムのジャミル囲い込み計画






羽根の付いた髪飾りを贈ったときの話。

「これなんてどうだ? ジャミルの黒髪によく映えるぜ?」
「あのな、カリム。俺はお前の従者なんだから着飾る必要はないし、まして宝石なんて身に付けなくて良いんだよ」
「逆に考えてみろよ。アジーム家の従者は装飾品の一つも身に付けられないのかって舐められちまうかもしれないだろ?」
「ああ、もう、分かったよ! でも一つで良いし、控えめなやつにしろ!」





マジフト大会の時、ジャミルに怪我をさせようとしたラギーを発見。

「よぉ、ラギー。こんな所でどうしたんだ?」
「か、カリムくん……」
「ジャミルに何か用か?」
「いや、えっとぉ……」
「そう言えば、最近マジフトの有力選手が怪我してるらしいぜ? ラギーも気を付けろよ?」
「へ、へぇ、そうなんスねぇ……。そ、それよりカリムくんはどうしてここに?」
「ジャミルはマジフトも上手いから、怪我させられるんじゃないかって、ちょっと心配でさ。もしジャミルに怪我させられたら、ただじゃ済ませられないしな」

 ――――――もしかしたら、相手を殺してしまうかもしれない。

「ま、もしそうなっても、処理プラントにはいくつか心当たりがあるし、問題ないけどな!」





ジャミルを転寮させたがるアズールとの攻防。

「オレ、大抵の事は何でも許せるんだ。歌って踊って、美味い飯を食って笑っていれば忘れてやれる」
「けど、一つだけ許せないことがあるんだ」
「オレからジャミルを奪う事だ」
「奪う、だなんて。とんでもない。転寮したって、彼は貴方の従者ですよ」
「それでも、だ。そもそも従者なんだから、傍に控えているのが当然だろ?」
「―――――随分と傲慢なセリフですね」

「オレを誰だと思ってるんだ? カリム・アルアジームだぞ? ラウンジ一つ潰すのなんて、簡単なんだぜ?」
「それにさ。オレがいつ、ラウンジだけって言った?」
「深海なら、アジームの手が届かないとでも?」

 海の底のリストランテにだって、伸ばせば手が届くぜ?

「……貴方は、彼を。ジャミルさんを奪われないために。それだけのことのために、これだけのことをするのですか」

「…………それだけ?」
「今、“それだけ”って言ったか? 他でもない、ジャミルのことを?」
「お前、ジャミルを軽んじたか?」

「ああ、そっか。お前にとってジャミルはそれだけの価値しかないんだもんな。でもそれは、オレも同じなんだよ」
「だから、どうでも良いんだ。お前がどうなろうと、お前の家族がどうなろうと。オレにとってはそれだけの価値しかないからな」
「だから、心なんて痛まない。潰すことに戸惑いはない。今ここでお前のすべてをめちゃくちゃにしたって、次の瞬間にはその事に対して、何の感慨も無くなってるぜ?」
「オレにとってはジャミルと共に在る1秒の方が、ずっとずっと価値がある」
「その天秤が揺らぐことは決してあり得ない。ジャミルより価値のあるものなんてこの世にないんだ」
「なぁ、アズール。お前、契約書を交わしてるんだってな?」

 ―――――オレとも取引しないか?



そして交わした取引がこちら。

・ジャミルに心身共に危害を加えないこと
・カリムから奪うような真似をしないこと

これらを条件に

・ラウンジやリストランテの営業を妨害しないこと
・ラウンジやリストランテの宣伝をすること

を約束する。
また、これとは別にジャミルについての情報をこちらに渡してくれたら、その分だけ報酬を出す、という契約も結ぶ。

「今週のジャミルさんの様子をまとめたデータです」
「おお、サンキュー! 最近の写真は綺麗に撮れてるし、授業中の様子も細かくレポートにしてくれてるから、オレもその場にいたような気分になれるぜ!」
「それはよかった」

(最初は馬鹿げた契約を結ばされたと思いましたが、金払いは良いし、損はしていないんですよね……)

「あっ、このジャミル可愛い! お、貴重なバスケ部のもある! フロイドが撮ってくれたのか?」
「報酬は弾ませて貰うぜ! とりあえず、ラウンジに合いそうな装飾品をいくつか見繕ってきてる。値段は300万って所かな。気に入らなかったら、別のを用意するぜ?」
「さっ……!?」
「先行投資ってやつだと思ってくれていいぜ? 次も頼むな、アズール!」
「…………ええ、良いでしょう。次もご期待に添えるよう努力させて頂きます」
「おう!」





4章はスカラビアは初戦でディアソムニアと対戦し最下位になってしまったけれど、勉強の方でカリムが過去最高得点を取ったため、お咎め無し。
しかし、アジーム家に侵入者が増えていて、カリムの帰省を狙ってのことではないかと推測。当主には学園で過ごすように言われ、ホリデーは学園で過ごすことに。
帰りづらい理由がある者や帰省が難しい者(輝石の国で大雪など)が残りたいと申し出る。
どうせ残るなら勉強会でも開くか、とジャミルが提案。
カリムはあんまり乗り気じゃないが、ジャミルの意見を無下にしたくない。

「折角のホリデーなんだし、少しくらい遊ぼうぜ?」
「なら、授業もないし、頑張ったら宴を開いても良いぞ。お前の好きなものを作ってやるよ」
「もちろん宴も好きだけど……。二人っきりで静かに過ごすのも魅力的だろ?」

 するりと頬を撫でると、途端にジャミルの頬が赤く染まる。
 うん、可愛い。
 食べてしまいたいなぁ、なんて思っていると、不埒な考えが読まれたのか、ジャミルがムッと唇を引き結ぶ。





食糧事情を盾にスカラビアのクラスメイトの良心に付け込んで、監督生がスカラビアに乗り込んでくる。

「ごちそうが食えるっていうから来てみたら、勉強合宿!? そんなの聞いてないんだゾ~~~!」

しかし勉強合宿をすると知らされていなかったグリムが暴走。魔法の絨毯に乗ってオクタヴィネルへ。
絨毯を返すのに付いてきて欲しいと頼むとアズール達がスカラビアに同行するのを拒否。
対価を払うと言っても、カリムとの契約だと言う。
原作と違う。もしかしてジャミルに成り代った奴がカリムを使って?と考えた監督生が暴走。
カトラリーのナイフをこっそりと持ち出す。

再びスカラビアに戻り、ジャミルにカリムを解放するよう要求。
本当にユニーク魔法を使ってなかったジャミルは何の事だと首を傾げる。
するとそれに激昂した監督生がジャミルを刃物で刺す。
それを見て、ジャミルが死んでしまうと思ったカリムがオバブロ。





 オレはいつだって不安だった。
 ジャミルは美しくて、賢くて、とても魅力的な人間だ。
 ジャミルに惹かれているのはオレだけじゃない。手に入れたいと願う人間はオレだけじゃない。

 それだけじゃない。ジャミルはどうしたって従者だ。
 いくらオレがジャミルの安全を望んだって、ジャミルが毒味をやめることは出来ないし、刺客と戦わない選択肢はない。
 そしていつか、オレの手の内から溢れていってしまうんじゃないかって、いつだって怖かった。

 ああ、ジャミル。オレの光。得難き太陽。
 お前を失ったらオレは、オレは―――――――!


「ジャミルの居ない世界に価値はない」
「沈め、滅べ、オアシスメイカー!」





「ごめん、ごめんな、ジャミル。オレはお前を手放してやれない。自由になんてしてやれない」
「ばーか。お前、俺がいないと生きていけないくせに」
「そう、そうだよ。オレ、ジャミルが居ないと生きていけない。だからオレの傍に居て?」
「今更何を言っているんだ、お前は」


 ―――――そんなの当たり前だろ!


「ああ、ジャミル、ジャミル。大好き。愛してる」
「なっ、ばかっ!」


 世界一可愛い罵倒を受けながら、オレは真っ赤になって狼狽えるジャミルの唇に噛み付いた。
 ああ、オレのジャミル。オレの命よ。
 嫌だと言われても、離してくれと泣かれても。ようやく手に入れた幸せだ。絶対に、離しはしないから。


(とりあえず、次はジャミルと結婚する算段を立てないとな)





【If】監督生がまともなツイステ民だったら

(カリム先輩ってここまでクソデカ激重感情拗らせてたかな?)

 ―――いや、こんなもんだったかもしれない。
 監督生は毒されていた。





アズールに愚痴る。

「それでまた刺客が来て、せっかくの休みが台無しになっちまってさ」
「せっかくジャミルと久しぶりに出掛けられると思ったのに」
「それはそれは……」

 邪魔しやがって、と悪態でも吐きそうな不機嫌な顔。普段のカリムならば絶対にしないような顔だ。特にジャミルの前では絶対に見せない。
 けれどジャミルが迎えに来ると満面の笑み。

「ジャミル〜! 部活終わったのか? 迎えに来てくれてありがとな〜!」
「ああ」
「バスケ部楽しいか? 今度見学に行きたいんだけど、やっぱ難しいかな?」
「いや、見学くらいなら大丈夫さ。一応、部長に確認しておくよ」
「やった! ありがとな!」

 幸せの絶頂と言わんばかりの笑顔。
 先程まで見せていた、舌打ちでもしそうな顔はどこへやったのか。

(あの人、実は二重人格とかそういう……?)





サバナクローがカリムのターバンを巻き直す場面に遭遇。

「あああ〜! ごめん、ジャミル! ターバン外れちまった……」
「はぁ。ほら、貸してみろ。…………出来たぞ」
「おお、流石だな! いつもありがとな、ジャミル!」

「ターバンも巻けないとか、レオナさんよりヤバくないッスか……?」
「俺と比べんじゃねぇよ」

今度はカリム一人の時にターバンが解けた場面に遭遇したラギー。

「カリムくん、ターバン巻こう、か……?」

しかしカリムは魔法でターバンを巻く。

「………………自分で出来んじゃん……」

ラギーがジャミルに

「ジャミルくん、カリムくんにターバンくらい自分でやらせたら? カリムくん、ターバン自分で巻けてるの見たッスよ?」

と言ってしまい、ジャミルがカリムに聞いてみる。

「お前、自分でターバン巻けたりするか?」
「…………おう、出来るぜ!」

と自分で巻いてみるもぐしゃぐしゃ。

「…………全然巻けてないじゃないか」
「ええ? 結構上手く巻けたと思うんだけどなぁ……」
「はぁ、貸してみろ」
「おお〜! やっぱりジャミルは凄いなぁ!」
「…………魔法を使って巻いてみるのはどうだ?」
「魔法で? おう! やってみるぜ! 解いちゃっていいか?」
「ああ。出来なかったら、また巻いてやる」

魔法で巻こうとするも、ターバンが顔面にヒット。

「ってぇ〜!」
「ふ、ふふ、ははは! 何でそうなるんだよ! 不器用にも程があるだろ!?」
「笑うなよ〜! 結構難しいんだぞ!」
「はぁ……、笑った。仕方ないな。手本を見せてやるよ」

しゅるん、と一度で綺麗にターバンが巻き上がる。
しかもきちんとリボン結び。

「お、おお……。おおお! すげぇ、本当に出来た!」
「俺に掛かれば、これくらい造作もない」
「流石、ジャミル! やっぱりジャミルは天才だな!」

(…………さて、情報源は誰だ)

また、ターバンが外れた場面に遭遇するラギー。
ジャミルが巻いてやっているのを見て、またやってるよ、と呆れる。
それを見たカリムが(お前か)とラギーに視線を向ける。
瞳孔が開き切っていて、ラギーが引き攣った悲鳴を漏らす。

(あれは駄目だあれは駄目だあれは駄目だ)
(敵に回しちゃいけない。視界に入っちゃいけない。存在を気付かれてはいけない。そういう類の奴だ)
(ああいうのは理不尽でイカれてて、何をしてくるか分からない。そして手段を選ばない。スラムに時折流れてくる、どうしようもない罪を犯した連中の目だ!)

とガチ怯え。
しばらくカリムとジャミルに近づかないようにする。




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