ローディング画面のキャラで成り代わり 2
お茶会の約束をした数日後、カリム達はポムフィオーレ寮の庭でテーブルを囲んでいた。
テーブルにはヴィルが淹れた紅茶、アズールの用意した軽食、ジャミルの手作り焼き菓子が並んでいた。
この日はジャミルの髪を結いたいというヴィルの要望があったため、ヴィルやカリムが用意したアクセサリー類もそろっている。
彼らは紅茶やお茶菓子に舌鼓を打ちながら、和気藹々と過ごしていた。
「これ、ポテトサラダにアボカドを混ぜてるの? 初めて食べたけど、とっても美味しい」
「お口に合ったようで何よりです。ジャミルさんのマドレーヌもとても美味しいです」
「ふふ、良かったぁ」
ふわふわ、にこにこ。釣り目気味の目尻を下げて、ジャミルが柔らかく笑う。
女の子として過ごしても良いこの空間で、ジャミルは涼しげな美貌を甘くとろけさせていた。
顔の良い推しのレアスチルを正面から見たアズールは心の中で暴れ回った。団扇とサイリウムを振り回し、推しを祀るための祭壇作りに勤しむ。ついでに貯金額の確認も行われていた。推しの手作りお菓子を食べながら推しの笑顔を見るという神シチュエーションにお布施をするためだ。オタクは推しに貢ぎたい生き物なので。
正直今すぐに袖とかベルトにマドルをねじ込みたいが、中身は大人しい女の子だから泣かせてしまうかもしれない。怯えられたりしたら精神的に死ぬことは確実なので自重する。
「カリム、アクセサリーを見せて貰って良いかしら? アタシもいろいろ用意したけれど、アンタ達が普段使うものも気になるわ」
花を飛ばすジャミルと内心で悶えるアズールの隣で、ヴィルがカリムの持ち寄ったアクセサリーケースを示す。
ジャミルほどではないものの、ヴィルも女性としての意識が強いようで、美しいものに興味が引かれるようだった。
「おう、いいぜ! ヴィルのも見せて貰っていいか?」
「ええ、もちろん」
ヴィルがカリムの持ち寄ったアクセサリーを取り出す。赤に青、紫といった、ヴィル達のイメージカラーのものが取りそろえられていた。
原作のイメージから宝石などがついた髪飾りなどが飛び出してくるかとも思ったが、やはり中身は元一般人。一般人でも頑張れば手が出せる程度のものにしておいてくれたようで安心する。それでも一般人からすれば十分に高価なものなのだが。
ほっと胸をなで下ろすヴィルに倣い、カリムもヴィルの持ってきた髪飾りを手に取った。こちらは細工の美しさが目を引く値打ちものから、子供でも手を伸ばせそうなものまで揃っていた。
「わ、かわいい……」
「これ、手作り感があっていいですね。味わいがあるというか」
じゃれ合っていたアズールとジャミルがカリム達の行動に気付いたらしく、目を輝かせて並べられた髪飾りを見つめた。
ジャミルの目を引いたのはヴィルが用意したパールビーズのついたヘアピンだ。フェルトで作られたダリアの花が咲いていてかわいらしい。
ジャミルが頬を上気させて見つめるヘアピンを眺めながら、アズールも感想を述べた。
「というかこれ、既製品じゃなくて、手作り品じゃないか?」
「ええ、そうよ。アタシが作ったの」
二人の反応に同じものに目を向けたカリムがヴィルに問いかけると、ヴィルが得意げに胸を張る。三人が驚いて目を瞠ると、ヴィルは嬉しそうに微笑んだ。
「アタシ、こういうアクセサリーを作ったりするのが好きなの。興味があったら手芸部に遊びに来てちょうだい」
「ヴィル先輩は手芸部なんですね。手芸部も楽しそう……」
原作を知るカリムとアズールは意外な所属部に目を瞬かせた。そんな二人にいたずらっぽい笑みを向け、キラキラとした目を向けるジャミルに笑いかける。
「楽しいわよ。ポムフィオーレとイグニハイドの生徒が多く所属しているわ。あとは陸の文化に興味のあるオクタヴィネルの生徒が少し。他の部活と兼部している人も多いし、ジャミルなら大歓迎よ」
「今度、見学に行っても良いですか?」
「ええ、もちろん」
傷つけないように優しくジャミルの髪を撫で、ヴィルはジャミルが気に入った花飾りを手に取った。
「さ、ジャミル。これを付けさせてちょうだい。かわいく仕上げてあげるわ」
「よ、よろしくお願いします」
嬉しそうに頬を赤らめて笑みを浮かべるジャミルに、ヴィルも聖母のような優しい微笑みを浮かべる。
熱砂の傾国と美の化身の共演にアズールは両手を合わせて拝み倒し、カリムは女性陣の楽しげな様子に満足そうに笑うのだった。