彼色に染まる
「おや?」
錬金術の授業にて、アズールとジャミルのペアは他のグループよりも早く課題を終わらせていた。
授業の難易度は中級と言ったところである。学園でもトップクラスに優秀な二人にとっては朝飯前といった内容だ。そのため二人は他の生徒達よりも先に道具や薬品の後片付けを始めていた。
そんなときのことである。アズールがジャミルを見て、ほんの少し驚きを含んだ声を上げたのは。
「どうした」
「ああ、いえ……。光の加減でしょうか、ジャミルさんの瞳の色が、一瞬金色に見えたような……」
「はぁ?」
ジャミルの瞳はチャコールグレーだ。黒に近い深い灰色である。遠目から見ればほとんど黒にしか見えず、とてもではないが金色になど見えはしない。アズールの発言にジャミルが訝しげに眉を寄せるのも頷ける。
「眼鏡の度が合っていないんじゃないか? レンズの交換をお勧めするよ」
「ふふ、心配してくださるなんて、ジャミルさんはお優しいですねぇ。その慈悲深さ、やはりあなたはオクタヴィネルに相応しい! これを機に転寮するのはいかがですか?」
「眼鏡の話からどうして転寮の勧誘になるんだ……。話をすり替える天才か?」
絶対にお断りだ、とジャミルがうんざりした表情で嘆息する。そのときには、ジャミルの瞳はいつものグレーに戻っていた。
話を切り上げて片付けを再開するジャミルに倣って、アズールも作業を再開する。けれど。
(あの色、どこかで見たような……)
ほんの一瞬。おそらくは光の加減。けれど、その色があまりにも見覚えがあったから、自分の気のせいだとは結論づけられずにいた。
はて、どこで見たのだろうか。疑問の答えを探しながらの作業でも一切の不備がないのだから、やはりアズールは優秀な生徒であった。