2週目バスケ部と監督生が疑似家族になる話
ジャミルが疲れてて、それにフロイドだけが気づく話。
「ジャミル」
「ん、フロイド? どうした?」
「こっち」
大きな手に手招かれ、ジャミルが不思議そうにしながらも素直に従う。
少し歩いて人気の無いところに来ると、フロイドがドカリとその場に座り込んだ。
「おいで」
甘やかすような柔らかい笑みを浮かべ、両手を広げる。
ジャミルがぱちりと目を瞬かせ、それから眉を下げて困ったように笑った。
「どうしてお前は気付くんだ?」
「そりゃ気付くよ。ずっとジャミルだけを見てきたんだから」
相手を思う言葉をこともなげに告げて、なかなか動かないジャミルの手を引いて、腕の中に閉じ込める。
そして、自分の胸にもたれ掛かるように抱きしめた。
「おい、」
「疲れてるんでしょ? 起こしてあげるから、しばらく寝てな?」
「………10分」
「はいはい」
離す気が無いことを察して、ジャミルがフロイドの胸に顔を埋める。
心音を聞きながら目を閉じると、フロイドの大きな手がサラサラと髪を梳いていく。それが心地よくて、思考が霞んでいく。
「おやすみ、ジャミル」
まろい声が柔らかく耳朶を打ち、ジャミルはあっという間に深い眠りに落ちていった。
そんな光景を、エースとユウが離れた場所からこっそりと覗き見ていた。
蜂蜜のように甘ったるい光景だが、それをずっと望んでいたエースはそれを穏やかな目で見つめている。隣のユウはほんのりと頬を染め、素敵なものを見つけたように瞳を輝かせていた。
「ジャミル先輩のあんな顔、初めて見た………」
「まぁ、あの人かっこつけだし。オレらに疲れてるとことか見せたくないんでしょ」
「フロイド先輩には見せるんだね」
「ま、仮にも恋人だし」
「最早夫婦にしか見えないけどね」
どうしよっか、と二人が顔を見合わせる。
レポートでよい評価を得られたから、二人に褒めて貰いたくて探していたのだが、仲睦まじい恋人達の邪魔はしたくない。
「今日はやめとこっか」
「そうだね」
褒めて貰うのはまた後日でもいい。
二人は最高評価を受けたレポートを持って、二人の邪魔をしないように足早にその場を立ち去った。