2週目バスケ部と監督生が疑似家族になる話
オレ―――――エース・トラッポラは2度目の人生を歩んでいた。
前世の記憶を有したまま、生まれ直したのである。
オレは最初、それを転生だと思っていた。
けれどそれは違っていて、オレは同じ“エース・トラッポラ”という人間の人生をやり直しているようだった。
監督生―――――前世の友人から聞いたことがある。人はそれを“逆行”というのだと。
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逆行以前―――――おそらく1度目の人生において、色濃く残っている記憶がある。それは魔法士養成学校『ナイトレイブンカレッジ』に通っていたときの思い出だ。
4年間というわずかな期間ながら、オレの人生に輝くものを残してくれた。
まったく後悔がないとは言えない人生だった。けれど悪くないと思えたのは、確かにこの4年間があったからだ。
異世界から来たという魔法が使えない少女。その相棒の大食らいな魔獣。
優等生を目指しながらも素行の悪さがちらほらと見え隠れしていた、4年間のうちに相棒のような存在になっていた少年。
振り分けられた寮で出会った、ハートの女王の法律を重んじる先輩に、優しいんだが食えないんだか分からない先輩。重い空気をいつだって明るいものに変えてくれた先輩。
自身の所属していたバスケ部には、気まぐれな人魚の先輩や、学生ながら大富豪の従者をしていた先輩が居た。
親友と呼んで差し支えない少年達に、尊敬する先輩達。悪くない人生を、更に輝くものにしてくれた人達だ。
会えるならば、もう一度。そんな風に望むくらいには、大好きな人達。
―――――会えるだろうか、もう一度。
―――――会えるだろうさ、もう一度。
何せここはツイステッドワンダーランド。愛と夢と魔法の世界。
願うならば叶えられよう。望むならば与えられよう。
だって“もう一度”を願ったら、あの輝かしい思い出の中に足を踏み入れる権利を得たのだから。
今日は晴れの日。人生の門出の一つ。輝かしい未来の始まり。
―――――今日は、ナイトレイブンカレッジの入学式だ。