男はみんなスカートの奴隷
『「惚れたもの負け」の意味を完璧に理解させられた』
フロイド「寒いのは嫌い?」
マリカ「嫌いじゃないけど苦手」
フロイド「そっかぁ」
マリカ「あったかいのは好き」
フロイド「寒いならぎゅってしてあげようか?」
マリカ「お願いしてもいい?」
フロイド「いいよ~」
マリカ「ふふ、あったかい」
フロイド「……前から思ってたんだけどさぁ」
マリカ「うん」
フロイド「ちょっと無防備過ぎねぇ? 食べられてもいいの?」
マリカ「食べたいの?」
フロイド「食べてもいいなら」
マリカ「じゃあだめ」
フロイド「ケチ」
マリカ「ケチとは違うでしょ?」
フロイド「……そうだけどぉ。でもだめって言うなら、こんな簡単に男の腕の中に収まっちゃ駄目でしょ。だめって言っても、食う奴は食うんだから」
マリカ「あら、あなたはそんなことしないでしょ?」
フロイド「するかもよ?」
マリカ「しないよ」
フロイド「なんでそう思うの?」
マリカ「だって私に嫌われたくないでしょ? 私、嫌なことする人嫌いよ?」
フロイド「………………………………やだ。嫌われたくない」
マリカ「ふふ、そうでしょう?」
マリカ「私、痛いことする人嫌い。嫌って言ってるのにやめてくれない人が嫌い。話聞いてくれない人も嫌い」
マリカ「でも、あなたはそんな私を知っている。だから、酷いことは絶対しない」
マリカ「あなたは絶対に私を傷つけないって知っているから、あなたの腕の中は好き」
フロイド「…………腕の中だけ?」
マリカ「ふふふ、フロイド自身も好きよ?」
フロイド「………………ずりぃ」
マリカ「私のことをかわいいっていっぱい褒めてくれるところ。私が痛くないように抱きしめてくれるところ。私を心配して怒ってくれるところも好き」
フロイド「ま、マリ……」
マリカ「でも一番好きなのは、本当はもっと触りたいけど我慢してくれるところ」
フロイド「―――――」
マリカ「だって、私を大切にしたいって思ってそうしてくれてるんでしょう? 愛されてる感じがして、とっても幸せ」
マリカ「だから私、あなたの腕の中がとっても大好き」
フロイド「~~~~~~~!!!」
フロイド「そんなん言われたら手ぇ出せねぇじゃんか~~~~~!!!」
フロイド「っていうかさぁ! そういうの、他の奴にも言ってんでしょ!? ほんっと性格悪いよ!?」
マリカ「とっても悪い子な私は嫌い?」
フロイド「好きィ!!!!!!!」
マリカ「私も私を宝物みたいに扱ってくれるあなたが好きよ、フロイド」
『「絶対空中デートに誘う」と心に決めた』
ジェイド「魚に空を飛べとは……」
マリカ「海で生きる人魚に飛行術は無縁だものね。陸で生活するならまだしも、海に帰るならほとんど使わない技術だから、モチベーションも上がらないのね」
ジェイド「ええ、そうなんです。それに習得したとしても、移動手段はいくらでもありますから、箒で空を飛ぶなんてほとんどありません」
マリカ「確かに、ちょっと実用性には欠けるわよね。マジフト選手だったり、スポーツマンになるのなら必須かもしれないけれど。あとは……デートがちょっとロマンチックになるくらいかしら?」
ジェイド「海の中ならいくらでもエスコート出来るのですが……」
マリカ「ふふ、あなたに海の中をエスコートして貰えたら、きっと誰もがあなたに夢中になってしまうわね」
ジェイド「おやおや……。あなたも夢中になってくださいますか?」
マリカ「陸のジェイドも十分素敵よ。でも……」
ジェイド「でも?」
マリカ「空を泳ぐあなたもきっと、とっても素敵だから、ちょっと見てみたいわ。なんて」
『ドキドキさせるために真剣に頑張った』
フロイド「ジェイドが今まで見たこともないくらい真剣に飛行術に取り組んでんだけど、何かあった?」
マリカ「あら、そうなの?」
フロイド「ぜってぇマリカだと思うんだけど、心当たりねぇの?」
マリカ「う~ん……。あ、そう言えば……」
フロイド「なぁに?」
マリカ「今でも十分魅力的だけれど、空を飛ぶジェイドもきっとかっこいいわ、って。そんなお話をした覚えならあるわ」
フロイド「それじゃん」
マリカ「それかしら?」
フロイド「それ以外ねぇよ。てか、ジェイドばっかずりぃ! オレも褒めて!」
マリカ「ふふ、フロイドも素敵よ。たまに見せる真剣な表情とか、かっこよくてドキドキしちゃうわ」
フロイド「え、え~……。どういうときぃ……?」
マリカ「ひみつ。あなたのかっこいいところは私が独り占めするの」
フロイド「そっかぁ……。でもぉ、マリカのことドキドキさせたいなぁ……」
マリカ「それはあなたが自分で頑張ってくれなくちゃ。女の子はそういうの好きよ? 自分のために頑張ってくれる男の子を見ると、きゅんとしちゃうわ」
マリカ「ジェイドも私のために頑張ってくれているみたいだし、今度飛行術の授業を見に行こうかしら?」
『この後お姫様抱っこして貰った』
マリカ「こんなところで寝ていたら、首を痛めてしまうのではないかしら?」
レオナ「なら、お前が膝を貸してくれよ」
マリカ「お膝を貸すのは吝かではないのだけれど、足が痺れてしまいそう……」
レオナ「そのときは運んでやるよ」
マリカ「お姫様みたいに?」
レオナ「お姫様みたいに」
マリカ「ふふ、本物の王子様にお姫様にしてもらえるなんて素敵」
マリカ「お膝へどうぞ。でも、あまり長く枕にされていると足を痛めてしまいそうだから、きっと途中で起こしてしまうわ。起こしてしまっても、怒らないでくださいね?」
レオナ「お姫様に膝を貸して貰っておいて、文句なんか言わねぇよ」
『この後めちゃくちゃ回り道した』
ラギー「あんまりレオナさんを甘やかさないで欲しいんスけどぉ~? てか、女の子の膝枕とか、普通に金取っていいんじゃないッスか?」
マリカ「あら、膝枕でお姫様にしてもらえるなら、安いものだと思うけど」
ラギー「女の子はみんなお姫様ッスよ」
マリカ「ラギーにとっても?」
ラギー「オレにとっても」
マリカ「ふふふ、じゃあお耳がキュートな王子様。私を植物園までエスコートしてくださる?」
ラギー「え、オレが!? オレ、エスコートとかちゃんと出来る自信ないんスけど!?」
マリカ「構わないわ。お姫様にして欲しいだけだもの。ルールやマナーが間違っていても、お姫様として扱ってくれたら満足よ」
ラギー「それくらいなら、まぁ……」
ラギー「んじゃ、行きましょうか、お姫様」
マリカ「嬉しいわ、王子様。植物園までの短い道のりだけど、デートを楽しみましょうね」
ラギー「…………回り道してもいい?」
マリカ「もちろんよ。急いでいないから、好きなコースで連れてって?」