耐毒訓練のせいで体が蝕まれていたジャミルの話






耐毒訓練のせいで体が蝕まれていたジャミルの話。
成り代わり主or逆行ジャミルのどちらかがいいかな?
この話では原作のパラレルワールド設定。

両親がジャミルの耐毒訓練を急ぎ過ぎて、免疫がつく前に毒を摂取している状態に。
そんなときに毒入りカレーを食べてしまい、それがトドメとなる。
それにより三歩歩けば吐血するレベルの病弱に。



NRC入学について
15歳の時、高熱が出てしまい、入学届の事を誰も気にも留めない。
けれど、断りも入れなかったので馬車が来てしまい、乗せられてしまう。
そして棺で運ばれて、ガタガタ揺られているうちに激しく咳き込んで吐血。
意識を失った状態でNRCへ。
入学式で血の匂いがする事に気付いた鼻の良い生徒たち。
ラギーやらウツボ兄弟やらレオナたち。
レオナは寮長だし、何かあってはいけないからと棺を開けて、みんなで仲良く悲鳴をあげる。



数日後、医務室で目を覚ます。
NRCの入学届の事など当然知らないので、家族やカリムが心配しているかも。
教師陣は保護者も知らないってヤバくない? これ誘拐では? と顔面蒼白。
ジャミルが家に連絡を入れると阿鼻叫喚の大騒ぎ。
対毒訓練をさせて身体を弱らせてしまった負い目から過保護を大爆発させた両親とカリムがNRCに乗り込んで来る。
何やかんやでNRCに入学してくれたら良いな。
普通は無理でしょうけど、ほら、NRCは学園長が優しいからさ!



「今日はバイパーも参加か」
「はい。一週間吐血しなかったので」
「グッボーイ! そのまま健康体を目指せ、いいな?」
「はい」

「えっ、吐血???」
「一週間って何の期限???」
「は?????」

一週間吐血しなかったら教室での授業参加権を獲得出来る。



「あっ、すまん。吐血する」
「はっ?」
「えっ」
「ごふっ」
「えっ、え、え、ええええええええええ!?」
「先生えええええ! バイパーが吐血しましたああああああああああ!!!」

何の前触れもなく吐血するのやめて欲しい。
俺だってやめたい。



アズールとジャミル。
仲はそんなに悪くない。

「ジャミルさんって生まれつき身体が弱かったんですか?」
「いや? 昔は健康体だったよ」
「では、どうして?」
「俺は昔、カリムの従者をしていてな。カリムの飯にはよく毒が仕込まれていて、毒見役がつくことになったんだ」
「あっ、予想外に重いやつですね、これ」
「それで毒見役に俺が選ばれて、対毒訓練なんかをやっていたんだ」
「子供にやらせる事ですか???」
「本当にな。それで、完全に耐性が付く前に次々と毒を入れていったものだから、俺の身体は徐々に壊れ始めていて」
「壊れ始めてとか、やめてください」
「事実だ。そんな時に、俺が毒見をした飯に毒が入っていて、それがトドメになって、俺の身体はこうなったと言うわけだ」
「救いは無いんですか???」
「あったら授業参加権なんて馬鹿げた権利の獲得に励んだりしていないが?」
「ですよね」



エースとジャミル。

「先輩って、どんだけ虚弱なんですか?」
「ぶん殴るぞ」
「いやだって、そんな風に見えねぇんスもん」
「酷い時だと3歩歩いて吐血するぞ」
「…………はい?」
「冥界らしき景色は見飽きたし、風に当たれば病を貰う。本当、ままならない身体だよ」
「先輩……」
「というわけで、荷物持ちよろしくな」
「はっ!?」
「不快な思いさせられたんだから、それくらいはしてくれないとな」
「…………へいへい、分かりましたよーだ!」

実は具合が悪かったジャミル。
後輩の前ではあんまり吐血したくない先輩と、先輩の不調に気付けなくて泣きたい後輩。



フロイドとジャミル。

「ウミヘビくんって生きてて楽しいの?」
「いきなり何だ」
「ウミヘビくんって走ったり泳いだり出来ないんでしょ? 授業だって殆ど出れてねぇじゃん。つまんなくね?」
「まぁ、何日もベッドの上で過ごさなければならない時なんかは退屈だな。まぁ、そういう時は、退屈さすら感じられない時が多いんだが」
「うへぇ……。そんな簡単に死にかけるの? ヤバくない?」
「ヤバいだろうな。と言うか、そんなこと俺以外に聞くなよ?」
「聞かねぇし、そもそも聞く相手居ないじゃん。ウミヘビくんより弱々な奴見た事ねぇし」
「確かにな。所でフロイド」
「…………なに? 凄い嫌な予感がすんだけど」
「先生にバイパーが吐血したと伝えてくれ」
「っっっ!!! 具合悪いなら早く言えよ!!!」
「ごぷっ、がほっ!」
「先生! 先生えええええええ!!!!!」

心配しているけれど、言葉選びが果てしなく悪いフロイド。



カリムとジャミル。

「おはよう、ジャミル」
「おはよう、カリム」
「今日は元気そうだな。夜中に吐いたりしなかったか?」
「ああ。久しぶりにゆっくり眠れた」
「そっか。な、ターバン巻いてくれるか?」
「いいぞ」
「やった」

些細な事が嬉しいカリム。



「ジャミルは俺が憎くないのか?」
「憎いが?」
「だよなぁ……」
「成績とか抑圧されてきたし、訓練の時も毒見の時も何で俺が命を張らなきゃならないんだって、ずっと思ってたさ」
「でも、アレはお前が悪い訳じゃないし、アレは仕事で、俺がやらなきゃならない事だった」
「…………」
「だから後悔はしていない」

愛憎渦巻く複雑な心境。



「俺、最低な事ばっかり考えてる。ジャミルがこんな身体にならなかったら、ジャミルは従者のままで、俺と友達になってはくれなかった」
「そうだな」
「だから、ジャミルには悪いけど、どうしようもなく嬉しいんだ」
「最悪だな」
「ごめん…………」
「まぁでも、こうでもないと、友達にはなれなかったよな」
「えっ?」
「何でもないよ、カリム」

どこかの世界線の可能性を見出しているのかもしれないジャミル。




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