成り代わりジャミルはドラコニア姓を名乗る






 「お下がりは可哀想だものね」なんて。弟にばかり新しいものをやる。
 俺は従兄弟のお下がりばかり。新しいものなんて最後にいつ貰ったっけ?

 「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」と言って。怪我をして泣いてる俺を鬱陶しそうに追い払う。
 同じあなたの子供だろう?
 どうして少しばかり先に生まれたというだけで、こんなにも区別されなければならないの?

 「弟の手本になりなさい」って、努力することを強制する。
 そのくせ「頑張り過ぎなくていいんだ」って、弟には優しい笑みを向けるのだ。

 「100点なんて当たり前だ」って。冷たい視線が体に痛い。
 そのくせ半分も取れない弟には「流石俺の息子だ」と頭を撫でるのだ。
 そうして貰えない俺はあなたの子供ではないと言うこと?

 「馬鹿な子ほど可愛い」という言葉がある。
 弟は勉強は得意ではなかったけど、明るくて愛嬌があった。
 俺はきっと理想の子供ではなかったのだろう。失敗作だったのだろう。

 だから笑顔を向けて貰えなくて。
 だから頑張っても認めて貰えなくて。
 だから俺は愛して貰えなかった。

 だから今世は頑張った。認めて貰えるように。愛して貰えるように。
 100点が当たり前の優秀さを持っていて。
 けれど、妹の手本になるような努力家で。
 怪我をしても、毒を飲んでも、泣き言を漏らさないような我慢強さを持っていて。
 かつての弟のように明るく愛嬌がある子供。

 けれど。


―――――どうしてカリム様より良い結果を出すの!?
―――――お父さん、旦那様にひどいお叱りを受けたのよ!?


 今世の両親は自己顕示欲の強い息子は要らなかったらしい。
 もっと従順で、機械的で、自我のない子供を望んでいたようだ。


―――――あなたなんて産まなければよかった!!!


 向こうが先に俺を不要としたんだ。俺だって捨てても構わないだろう?


「鏡よ! 俺をどこか遠くへ連れて行ってくれ!!!」


 要らないものは全部捨てて、俺は眩い光を放つ鏡の中へ飛び込んだ。










「ジャミル!!!」


 鏡を潜ったジャミルが、その幼い声を聞くことはなかった。




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