ジャミルの姿をしたナニカ






モブおじさんみたいなカリムパパが居ます。
カリムパパ×ジャミルあります。
このCPの表記はモブジャミか否か。
カリム→ジャミルもあります。


カリムがその光景を見たのは偶然のことだった。
いつもならとっくに夢を見ているような時刻。その日は何だか上手く眠れなくて、父の寝室を尋ねたのである。誰かに甘えたい気分だったのだ。
そして父の寝室のドアをノックしようとして、中から聞き覚えのある声が聞こえてきたのだ。
それはジャミルの声だった。


「それはいけませんわ、旦那様。してはイケないことです」


とろけるような甘い声。毎日のように聞いているから耳にこびりついているはずなのに、その時のジャミルの声は初めて聞いたような気がした。


「でも、お気持ちは分かりますのよ?」


ふふ、と鈴を転がすような笑い声。一体何をしているのだろう、とこっそりとドアを開け、その隙間から部屋の中を覗き込む。
見れば、ベッドの上で息を荒げた父が、ジャミルにのし掛かっていた。

―――――何を、しているのだろう。
二人とも服が乱れていて、ジャミルに至っては、滑らかな肌が顕わになっている。
何だか見てはいけないものを見てしまったような気がして、カリムは息を呑んだ。


「イケないことをするのは、とっても気持ちが良いですものね、旦那様?」
「けれど、だめ。我慢なさいませ、旦那様」
「わたくしだけが我慢するなんて、不平等ですもの」
「ふふふ、いい子。従順な子は好きでしてよ」
「いい子にはご褒美に、頭を撫でてあげましょうね」


嫋やかな指先が男の髪を、頬を撫でる。
あらゆるものをとろかせる毒のような甘美さで、ジャミルがころころと笑う。
夜の空気を纏ったジャミルは酷く美しく、目を逸らさなければならないのに、目が離せない。


(―――――ずるい、ずるい、ずるい)
(とうちゃんばっかりずるい)
(オレも撫でて、オレにも触って)
(そして、オレもジャミルに―――――)


自然とカリムの息も荒くなって、身体が熱くなる。脳が溶けてしまいそうだった。
カリムが見ているのに気付いていたジャミルが人差し指を唇に当て、「しぃ」と小さく息を漏らした。
いつもより赤く染まった唇が「ないしょ」と動いた。
その唇と、ほんのわずかな微笑みに、カリムの脳は沸騰した。

そこから先のことを、カリムは覚えていない。
いつの間にか部屋に戻っていて、結局一睡も出来ないままに朝を迎えていた。
もしかしたら、昨夜の光景こそが夢だったのかもしれない。
けれど、カリムを起こしに来たジャミルが、夜とまったく同じ仕草で、カリムに微笑んだのだ。
真っ赤な唇に指を当てて「ないしょ」と。

朗らかな朝の景色の中で、夜の気配を漂わせたジャミル。
人を堕落させる魔性の色香にカリムはキャパオーバーを起こし、起床の時間だというのにベッドに逆戻りしたのだった。




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