夜更けの日常
夜も更け、程よい睡魔が襲ってくる時刻。
アラジンたちはベッドの上で、各々座り込んでいた。
まだ幼さを残すアラジンとモルジアナなら、もうとっくに船をこいでもいい時間帯であるが、青年であるアリババの目と同様に、2人の目もらんらんと輝いている。
獲物を狙う、獣のソレだ。
どことなく鬼気迫るような表情を浮かべる3人は、誰ともなく息をのんだ。
「お前ら、準備はいいか?」
「はい」
「いつでも大丈夫だよ!」
「――――よしっ!」
アリババの声にアラジンとモルジアナが力強くうなずく。
2人の首が縦に動くのを見て、アリババが笑みを浮かべた。
「じゃあ行くぞ!
じゃんけん、
「「「ぽんっ!!!」」」
勢いよく振りかぶった手がかたどっていたのはパー、パー、チョキ。
チョキの手を目で追うと、燃えるような赤色の髪の少女が、自分の手を見て目を瞬かせていた。
そうして自分が勝利を手にしたことを悟ると徐々に頬を赤らめ、口元が高揚で持ち上がった。
ゆるゆると緩んだ口角を悟られないよう両手で頬を覆うが、その全身が喜びをたたえているのが見て取れる。
目は嬉しそうに弧を描き、頬は上気し、手足はむずむずと疼いている。
見ていることらまでつい笑みがこぼれそうになるほどだ。
そんなモルジアナとは対照的に、アラジンとアリババは拳を震わせ、目尻に涙をためていた。
「あーん、また負けちゃった~・・・」
「お前はまだいいだろ!?俺なんか、俺なんかなぁ・・・!
まだ3回しか真ん中で寝たことないんだぞ!?」
そう。彼らはだれがどこで寝るかを決めるためにじゃんけんを行っていたのだ。
アリババの言うように彼ら3人の中で致命的にじゃんけんの弱いアリババは、真ん中で寝ることがほとんどなく、いじけたようにのの字を書いていた。
「すいません、アリババさん。でも勝ったのは私ですし、こればっかりは譲れません」
きりっと表情を引き締めていったモルジアナに、アリババが拗ねたように言った。
「いいもん、俺は2人をぎゅうって抱きしめて寝るから別にどこだっていいよぉだ!」
そう言ってアリババがアラジンとモルジアナをぎゅうと抱きしめてベッドに横になった。
突然のことに驚きはするものの、2人はすぐに嬉しそうに笑った。
「じゃあ私も2人を抱きしめて寝ます」
「僕もー!」
モルジアナが2人の首筋から腕を通し、その方に手を回す。
アラジンはモルジアナの腰にしがみつき、アリババへと手を伸ばす。
「アリババくん、もっとこっちよってよー。届かないよー」
「ん。これで届くか?」
「ばっちりだよ!」
アリババの服をがっちりとつかみ、3人ともがお互いを抱きしめたのを見届けて、ではそろそろ寝ましょうか、とモルジアナが嬉しそうに笑った。
「おやすみー」
「おやすみなさい」
「おやすみ!」
3人は嬉しさとくすぐったさをないまぜにしたような笑みを浮かべて、夢の国へと旅立つのであった。
「「「何あれ可愛い」」」
「ちょっ、今の見たか!何だあいつら可愛い!」
「うるさいわよ、シャルルカン!3人が起きちゃうじゃない!」
「アリババくんってホントに私の1つ下?」
「子供というのは見ているだけで癒されるな・・・」
「和む・・・」
「うん?おかしいと思うのは俺だけか?男女が同じベッドで寝て、何も起こらないなんて」
「・・・・・」
「シン・・・。あなたはどこまでけがれているのです?あんな純粋な子供たちとシンを一緒にしないでください」
「マスルール、目が怖い!ジャーファルくんは幾らなんでも辛辣すぎる!!」
「「「日頃の行いでしょう」」」
「(´;ω;`)」
こっそり見ていた王様たちなのでした。