設定集 2
・天使の梯子
・ノブレスオブリージュ
・可憐な願い
十二国記情報
・平時の国で治安を維持するのに7500の兵士がいる?
・スキル<<ステルス>>でモブになります!
・モブには最高の能力です!
***
優しい勇者とヒロイン、仲間達。
スキル、ステルスを使えるモブ。
条件によってステルス機能が上昇する。
声を出してない時は影が薄くなる程度。
瞬きしていない時は自分の出す音が消える。
息を止めている間は相手に触れても気付かれなくなる。
また、条件を組み合わせる事で、更に機能が上昇する。
自身が死ぬ事によって、その存在を完璧に隠蔽できる。
記憶から消す事も可能。
最期はモブが勇者を庇って深手を負う。
尽きかけている魔力で治そうとする治癒役。
泣き暮れる勇者とヒロイン。
折角の凱旋なのに、魔王を倒したのに、
ようやく人々が平和に暮らしていけるのに、
勇者がそんな顔してちゃあ、みんなが不安がる。
ステルス機能を使って、みんなの記憶から自分のことを消す。
さぁ、みんな! 勇者様の凱旋だ!
果たして魔王は倒された! もう魔王に怯える事はない!
誰もが夢見た平和な世界!
みんな笑顔で万歳三唱!
『勇者様、万歳! 勇者様、万歳! 勇者様、万歳!!!』
これ以上ないハッピーエンドだ、めでたしめでたし!
***
異世界に召喚された女の子が魔王を倒すために様々な葛藤をしつつ、頑張る話。
「勇者様をお守りしろー!」と庇い、人が次々死んでいって、何で私の為にそこまでするの?」と尋ねる。
「あなたが最後の希望だからよ」
***
追放系
主人公がレベルが違い過ぎて勇者パーティと噛み合わない。
自分たちの所にいても宝の持ち腐れだ、と言われる。
***
救いの道は閉ざされた
異世界転生勇者がひたすらに理不尽な目に遭って、ただ絶望するだけのお話。
仲良くなった子が喰い殺されて、その子の声を真似て勇者を誘き寄せる。
体からは植物が生えており、頭は植物そのもの。
足は裸足で、石で切ったのか、肌が脆いのか、血で真っ赤に染まっている。
***
救いの道は閉ざされた-改訂版2
異世界転生勇者がひたすらに理不尽な目に遭って、ただ絶望するだけのお話。
仲良くなった子が喰い殺されて、その子の声を真似て勇者を誘き寄せる。
体からは植物が生えており、頭は植物そのもの。
足は裸足で、石で切ったのか、肌が脆いのか、血で真っ赤に染まっている。
不遇な勇者と過保護な魔王
銀髪青目の勇者(22)と金髪緑目の魔王♀(12)
この世には三竦みというものがある。
AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つという関係の事だ。
これは人間、勇者、魔王に置き換える事が出来る。
人間は勇者に勝ち、勇者は魔王に勝ち、魔王は人間に勝つ。
その三竦みを成り立たせる為か、この世界では勇者が生まれると魔王が生まれ、魔王が生まれると勇者が生まれる。
その為、人間にとって勇者は魔王と共に現れる厄災であり、忌むべき存在だ。
特に魔王より先に勇者が誕生した時は悲惨の一言に尽きる。
過去には勇者を"魔王の半身"と呼んで蔑み、迫害したという記録も残っている程だ。
魔王として発生した私ーーージベルの前に立ったこの度の勇者は、その慣例を見事になぞったようだった。
私は人間の暦でいうなら10年程前に生まれ落ちた。それに対して勇者は20を過ぎたであろう青年。
可哀想に、勇者の証とされる痣を持って生まれたがために、私より先に生まれたが為に、長く暴力に晒されてきたようだった。
着ている服は勇者のものとは思えない程にボロボロで、土と泥に塗れている。
肉の削げ落ちた身体は、どう見ても健常者のそれじゃない。おそらくは病を患っている。
勇者の証ーーー右手の甲から肘にかけて、炎を纏った剣のような痣だけがやけに生き生きとしていて、その痣に生命力を吸われているのでないかと疑う程だ。
磨けば美しいだろう銀髪は栄養が行き届いてない為か傷みが酷く、くすんでいる。所々に白が混じっており、ストレスと病で色が抜け落ちたのだろう。
そんな身体でよくここまで来れたものだ、と感心する。その身を削る。生命を削る道のりだっただろう。
それでもここに来たのは、そうするしか道が無かったからだろう。
きっと、帰る場所なんて無い。行く宛も無い。だから、望んでもいない宿命のままに、ここまでやってきたのだろう。
孤独に苛まれながら、勇者であることだけを頼りに、これまでを生きてきたのだろうか?
なんて哀れなのだろう。ああ、可哀想に。
私が手を下すまでもなく、勝手に死んでいく。病に犯された身体は、持って数年の命だ。
(流石の私も心が痛むぞ?)
最期の晩餐くらい、させてやってもいいかもしれない。
いくら私の生命を狙っている宿敵とは言え、これでも人々からは私の半身と呼ばれる存在であるのだ。最期の時くらい、少しでも満たされた状態で死なせてやっても良いではないか。
「なぁ、勇者。一つ提案があるのだが……」
私の姿を見て、口を開けたまま呆けていた勇者が、ぱちりと目を瞬かせた。
魔王と勇者は切っても切り離せない関係にある。
三竦みを成立させる為にも、
(何て思っていた時期が私にもありました!)
***
長い前髪をピンで留める
***
誰かの傷を癒すような、優しい力は使えない。あるのは破壊の力だけ。
魔王はばつ印が心臓の上にある。
ここを狙えと言わんばかりの的のような痣だ。
魔王の弱点は胸の中心。
人間で言う心臓のような核があり、それが砕けることで概念的な死を迎える。
けれど魔王は繰り返す。
砕けた核が悪の芽となり、また芽吹くのだ。
***
異世界召喚された女の子が魔王を倒すために様々な葛藤をしつつ頑張る話。
「勇者様をお守りしろ!」と勇者を庇い、人が次々に死んでいく。
「何で私のためにそこまでするの?」
「貴方が最後の希望だからよ」
***
魔王と言うと、どのような存在を思い浮かべるだろうか。
魔族を従える悪の王?
悪逆の限りを尽くす非道の魔物?
人間たちのイメージはそう言ったものが多いだろう。魔物や魔王に良い印象を持っている者は少ない。
しかし実際には違う。魔王とはその名の通り、魔物を統べる王の事だ。これは人間でいうなら、国を統べる王---即ち国王の事だ。
魔物は国を持たない。種族ごとに集落のようなものを作り、各々で生活している。
しかし人間たちに根付いた悪印象は抜けず、人間たちは魔族を敵視する。それはこちらもそうである者が多いので文句など言えないが、一目見ただけで斬りかかったりはしない。完全にそうとは断言出来ないけれど、根絶やしにしようなどとは思わない。
そして今日も勇者一行はやって来た。
勇者に一目惚れされる。
一行にいた女騎士とかに敵視される。
これ私悪くなくない?
魔王が殺され、勇者が魔王になる。
けれど人間を襲うようなことはせず、完全に切り離す。
***
不遇な勇者と過保護な魔王
銀髪青目の勇者(22)と金髪緑目の魔王♀(12)
この世には三竦みというものがある。AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つという関係の事だ。
これは人間、勇者、魔王に置き換える事が出来る。人間は勇者に勝ち、勇者は魔王に勝ち、魔王は人間に勝つ。
その三竦みを成り立たせる為か、この世界では勇者が生まれると魔王が生まれ、魔王が生まれると勇者が生まれる。
その為、人間にとって勇者は魔王と共に現れる厄災であり、忌むべき存在だ。特に魔王より先に勇者が誕生した時は悲惨の一言に尽きる。過去には勇者を"魔王の半身"と呼んで蔑み、迫害したという記録も残っている程だ。
魔王として発生した私―――ジベルの前に立ったこの度の勇者は、その慣例を見事になぞったようだった。
私は人間の暦でいうなら10年程前に生まれ落ちた。それに対して勇者は20を過ぎたであろう青年。可哀想に、勇者の証とされる痣を持って生まれたがために、私より先に生まれたが為に、長く暴力に晒されてきたようだった。
着ている服は勇者のものとは思えない程にボロボロで、土と泥に塗れている。肉の削げ落ちた身体は、どう見ても健常者のそれじゃない。おそらくは病を患っている。
勇者の証ーーー右手の甲から肘にかけて、炎を纏った剣のような痣だけがやけに生き生きとしていて、その痣に生命力を吸われているのでないかと疑う程だ。
磨けば美しいだろう銀髪は栄養が行き届いてない為か傷みが酷く、くすんでいる。所々に白が混じっており、ストレスと病で色が抜け落ちたのだろう。
そんな身体でよくここまで来れたものだ、と感心する。その身を削る。生命を削る道のりだっただろう。
それでもここに来たのは、そうするしか道が無かったからだろう。きっと、帰る場所なんて無い。行く宛も無い。だから、望んでもいない宿命のままに、ここまでやってきたのだろう。
孤独に苛まれながら、勇者であることだけを頼りに、これまでを生きてきたのだろうか? なんて哀れなのだろう。ああ、可哀想に。
この男は私が手を下すまでもなく、勝手に死んでいく。病に犯された身体は、持って数年の命だ。
(流石の私も心が痛むぞ?)
最期の晩餐くらい、させてやってもいいかもしれない。
いくら私の生命を狙っている宿敵とは言え、これでも人々からは私の半身と呼ばれる存在であるのだ。最期の時くらい、少しでも満たされた状態で死なせてやっても良いではないか。
「なぁ、勇者。一つ提案があるのだが……」
私の姿を見て、口を開けたまま呆けていた勇者が、ぱちりと目を瞬かせた。
勇者は病と栄養不足で吹けば飛びそうな細い体をしている。その棒切れのような体には同族であり、守るべき人間達からの迫害の痕が多数見受けられる。もちろん、ここに来るまでの冒険の痕も見られるが、暴力の痕の方が目立つ。
まともな人生を送ってきていないことは想像に難くない。私を殺しに来た怨敵とは言え、仮にも“半身”と称される存在の哀れな姿に同情しないわけでもない。
そもそも、すでに病を患っているのだ。放っておいても死んでくれる、都合の良い敵だ。
しかし、これまでの苦労を思えば、苦しめるのは忍ばれる。
だから、最期くらいは、と思ったのだ。最期くらいは、せめて満たされた状態で“人”として死ねるように、と。
(何て思っていた時期が私にもあったな……)
まともに食事を取っていないであろう男に、最期の食事を取らせてやろうと、上等な食事を用意した。
勇者は当然警戒していたが、私が先に食事に手をつけたことと、空腹に耐えきれなかったことでついに食事に手を出した。
そこまではいい。問題はその後だ。
「温かくて美味しい! これはなんていう食べ物だい?」
「……シチューだ。牛の乳をベースに肉や野菜と煮込んだ料理よ」
「こちらは?」
「ミンチ状にした肉類をパイ生地で包んで焼いたものよ。パテという」
「こちらも美味しいね! 肉はこんな風にして食べることも出来るんだね!」
どれもこれも初めて食べるものばかりだと、男は言う。
先に“上等な食事”と前置きしたが、私に食事の必要はない。娯楽として食べることはあるが、それも稀なこと。故に人間の食事のマナーなど知るよしもなく、貴族が食べるような食事など知らない。なので机の上に並んでいるのは家庭で出てくるような、ごく一般的な料理であるはずで、初めて食べるようなものではないはずなのだ。
「……勇者よ。貴様、一体どのような食事を取ってきたのだ?」
「え? 草とかかなぁ?」
草。
まさかとは思うが、“植物のうち、地上部が柔軟で、木質の部分が発達しないもの”のことを言っているのだろうか。いや、この男はものを知らないようなので、野菜を総じて“草”だと思い込んでいる可能性もある。
「魔王さんは小さいのに凄いね。料理が作れるなんて。あっ、自己紹介がまだだったね。俺はリゼル、よろしく」
「私はジベルだ。そして懐くな」
この男―――リゼルは私を見た目のまま、10才かそこいらの少女だと思っているらしい。事実そうであるわけだが、私は魔王だ。人間の子供とは違う。料理を用意するのに苦労などない。
リゼルは美味しい美味しいと言いながら食事を進める。輝かんばかりの笑顔を浮かべる男に対し、私は顔を顰めた。
勇者の不遇は予想がついていた。けれど食事すらまともに取らせないというのは頂けない。人間にとって食事は生きる上で必要不可欠なものだろう。万全の状態でない勇者に、私を倒せる訳がないというのに。
そしてこの警戒心のなさ。少し親切にされたくらいで、飼い犬のような懐きぶりだ。これは元来の性格故のものだろうか。
魔王と勇者は切っても切り離せない関係にある。勇者を“魔王の半身”と言ったのは間違いではない。
魔王を倒す方法はいくつかある。単純に実力で上回り、首を刎ねるなりすれば良いのだ。後は単純に弱点を突くか、である。
勇者と同じように、魔王にも“魔王の証”というものがある。
魔王の証が浮かぶのは胸の中心。その上に、ここを狙えと言わんばかりの十字の痣がある。
胸の中心というのは魔王の弱点だ。人間で言う心臓のような核があり、それが砕けることで概念的な死を迎える。
概念的な死、と表現したのにも理由がある。魔王は繰り返すのだ。砕けた核が悪の芽となり、また芽吹くのだ。
これを知るものはおそらく魔王である自分か、古代の記録すらも有する賢者くらいのものだろう。
***
長い前髪をピンで留める
***
誰かの傷を癒すような、優しい力は使えない。あるのは破壊の力だけ。
魔王はばつ印が心臓の上にある
ここを狙えと言わんばかりの十字のような痣だ
魔王の弱点は胸の中心
人間で言う心臓のような核があり、それが砕けることで概念的な死を迎える
けれど魔王は繰り返す
砕けた核が悪の芽となり、また芽吹くのだ
***
救いの道は閉ざされた-改訂版2
異世界転生勇者がひたすらに理不尽な目に遭って、ただ絶望するだけのお話
仲良くなった子が喰い殺されて、その子の声を真似て勇者を誘き寄せる
体からは植物が生えており、頭は植物そのもの。
足は裸足で、石で切ったのか、肌が脆いのか、血で真っ赤に染まっている。
不遇な勇者と過保護な魔王
銀髪青目の勇者(22)と金髪緑目の魔王♀(12)
この世には三竦みというものがある。
AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つという関係の事だ。
これは人間、勇者、魔王に置き換える事が出来る。
人間は勇者に勝ち、勇者は魔王に勝ち、魔王は人間に勝つ。
その三竦みを成り立たせる為か、この世界では勇者が生まれると魔王が生まれ、魔王が生まれると勇者が生まれる。
その為、人間にとって勇者は魔王と共に現れる厄災であり、忌むべき存在だ。
特に魔王より先に勇者が誕生した時は悲惨の一言に尽きる。
過去には勇者を"魔王の半身"と呼んで蔑み、迫害したという記録も残っている程だ。
魔王として発生した私ーーージベルの前に立ったこの度の勇者は、その慣例を見事になぞったようだった。
私は人間の暦でいうなら10年程前に生まれ落ちた。それに対して勇者は20を過ぎたであろう青年。
可哀想に、勇者の証とされる痣を持って生まれたがために、私より先に生まれたが為に、長く暴力に晒されてきたようだった。
着ている服は勇者のものとは思えない程にボロボロで、土と泥に塗れている。
肉の削げ落ちた身体は、どう見ても健常者のそれじゃない。おそらくは病を患っている。
勇者の証ーーー右手の甲から肘にかけて、炎を纏った剣のような痣だけがやけに生き生きとしていて、その痣に生命力を吸われているのでないかと疑う程だ。
磨けば美しいだろう銀髪は栄養が行き届いてない為か傷みが酷く、くすんでいる。所々に白が混じっており、ストレスと病で色が抜け落ちたのだろう。
そんな身体でよくここまで来れたものだ、と感心する。その身を削る。生命を削る道のりだっただろう。
それでもここに来たのは、そうするしか道が無かったからだろう。
きっと、帰る場所なんて無い。行く宛も無い。だから、望んでもいない宿命のままに、ここまでやってきたのだろう。
孤独に苛まれながら、勇者であることだけを頼りに、これまでを生きてきたのだろうか?
なんて哀れなのだろう。ああ、可哀想に。
私が手を下すまでもなく、勝手に死んでいく。病に犯された身体は、持って数年の命だ。
(流石の私も心が痛むぞ?)
最期の晩餐くらい、させてやってもいいかもしれない。
いくら私の生命を狙っている宿敵とは言え、これでも人々からは私の半身と呼ばれる存在であるのだ。最期の時くらい、少しでも満たされた状態で死なせてやっても良いではないか。
「なぁ、勇者。一つ提案があるのだが……」
私の姿を見て、口を開けたまま呆けていた勇者が、ぱちりと目を瞬かせた。
魔王と勇者は切っても切り離せない関係にある。
三竦みを成立させる為にも、
(何て思っていた時期が私にもありました!)
長い前髪をピンで留める
誰かの傷を癒すような、優しい力は使えない。あるのは破壊の力だけ。
魔王はばつ印が心臓の上にある
ここを狙えと言わんばかりの的のような痣だ
魔王の弱点は胸の中心
人間で言う心臓のような核があり、それが砕けることで概念的な死を迎える
けれど魔王は繰り返す
砕けた核が悪の芽となり、また芽吹くのだ
***
内容追加版、嘔吐あり
不遇な勇者と過保護な魔王
銀髪青目の勇者(22)と金髪緑目の魔王♀(12)
この世には三竦みというものがある。AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つという関係の事だ。
これは人間、勇者、魔王に置き換える事が出来る。人間は勇者に勝ち、勇者は魔王に勝ち、魔王は人間に勝つ。
その三竦みを成り立たせる為か、この世界では勇者が生まれると魔王が生まれ、魔王が生まれると勇者が生まれる。
その為、人間にとって勇者は魔王と共に現れる厄災であり、忌むべき存在だ。特に魔王より先に勇者が誕生した時は悲惨の一言に尽きる。過去には勇者を"魔王の半身"と呼んで蔑み、迫害したという記録も残っている程だ。
魔王として発生した私―――ジベルの前に立ったこの度の勇者は、その慣例を見事になぞったようだった。
私は人間の暦でいうなら10年程前に生まれ落ちた。それに対して勇者は20を過ぎたであろう青年。可哀想に、勇者の証とされる痣を持って生まれたがために、私より先に生まれたが為に、長く暴力に晒されてきたようだった。
着ている服は勇者のものとは思えない程にボロボロで、土と泥に塗れている。肉の削げ落ちた身体は、どう見ても健常者のそれじゃない。おそらくは病を患っている。
勇者の証ーーー右手の甲から肘にかけて、炎を纏った剣のような痣だけがやけに生き生きとしていて、その痣に生命力を吸われているのでないかと疑う程だ。
磨けば美しいだろう銀髪は栄養が行き届いてない為か傷みが酷く、くすんでいる。所々に白が混じっており、ストレスと病で色が抜け落ちたのだろう。
そんな身体でよくここまで来れたものだ、と感心する。その身を削る。生命を削る道のりだっただろう。
それでもここに来たのは、そうするしか道が無かったからだろう。きっと、帰る場所なんて無い。行く宛も無い。だから、望んでもいない宿命のままに、ここまでやってきたのだろう。
孤独に苛まれながら、勇者であることだけを頼りに、これまでを生きてきたのだろうか? なんて哀れなのだろう。ああ、可哀想に。
この男は私が手を下すまでもなく、勝手に死んでいく。病に犯された身体は、持って数年の命だ。
(流石の私も心が痛むぞ?)
最期の晩餐くらい、させてやってもいいかもしれない。
いくら私の生命を狙っている宿敵とは言え、これでも人々からは私の半身と呼ばれる存在であるのだ。最期の時くらい、少しでも満たされた状態で死なせてやっても良いではないか。
「なぁ、勇者。一つ提案があるのだが……」
私の姿を見て、口を開けたまま呆けていた勇者が、ぱちりと目を瞬かせた。
勇者は病と栄養不足で吹けば飛びそうな細い体をしている。その棒切れのような体には同族であり、守るべき人間達からの迫害の痕が多数見受けられる。もちろん、ここに来るまでの冒険の痕も見られるが、暴力の痕の方が目立つ。
まともな人生を送ってきていないことは想像に難くない。私を殺しに来た怨敵とは言え、仮にも“半身”と称される存在の哀れな姿に同情しないわけでもない。
そもそも、すでに病を患っているのだ。放っておいても死んでくれる、都合の良い敵だ。
しかし、これまでの苦労を思えば、苦しめるのは忍ばれる。
だから、最期くらいは、と思ったのだ。最期くらいは、せめて満たされた状態で“人”として死ねるように、と。
(何て思っていた時期が私にもあったな……)
まともに食事を取っていないであろう男に、最期の食事を取らせてやろう。そう思って上等な食事を用意した。
勇者は当然警戒していたが、私が先に食事に手をつけたことと、空腹に耐えきれなかったことでついに食事に手を出した。
そこまではいい。問題はその後だ。
「温かくて美味しい! これはなんていう食べ物だい?」
「……シチューだ。牛の乳をベースに肉や野菜と煮込んだ料理よ」
「こちらは?」
「ミンチ状にした肉類をパイ生地で包んで焼いたものよ。パテという」
「こちらも美味しいね! 肉はこんな風にして食べることも出来るんだね!」
どれもこれも初めて食べるものばかりだと、男は言う。
先に“上等な食事”と前置きしたが、私に食事の必要はない。娯楽として食べることはあるが、それも稀なこと。故に人間の食事のマナーなど知るよしもなく、貴族が食べるような食事など知らない。なので机の上に並んでいるのは値の張る食材を使った料理もあれば、そこいらの森で収穫出来るようなもので作られたものもある。
裕福な者しか食べられない料理もあれば、ごく一般的な家庭で出てくるようなものもある。全てが初めてということはないはずだ。
「……勇者よ。貴様、一体どのような食事を取ってきたのだ?」
「え? 草とかかなぁ?」
草。
まさかとは思うが、“植物のうち、地上部が柔軟で、木質の部分が発達しないもの”のことを言っているのだろうか。いや、この男はものを知らないようなので、野菜を総じて“草”だと思い込んでいる可能性もある。
「魔王さんは小さいのに凄いね。料理が作れるなんて。あっ、自己紹介がまだだったね。俺はリゼル、よろしく」
「私はジベルだ。そして懐くな」
この男―――リゼルは私を見た目のまま、10才かそこいらの少女だと思っているらしい。事実そうであるわけだが、私は魔王だ。人間の子供とは違う。料理を用意するのに苦労などない。
リゼルは美味しい美味しいと言いながら食事を進める。輝かんばかりの笑顔を浮かべる男に対し、私は顔を顰めた。
勇者の不遇は予想がついていた。けれど食事すらまともに取らせないというのは頂けない。人間にとって食事は生きる上で必要不可欠なものだろう。万全の状態でない勇者に、私を倒せる訳がないというのに。
そしてこの警戒心のなさ。少し親切にされたくらいで、飼い犬のような懐きぶりだ。これは元来の性格故のものだろうか。
この後吐いてしまって、
人間は病を患うと臓腑が弱るのだったか。迂闊だったな
と反省する。
魔王と勇者は切っても切り離せない関係にある。勇者を“魔王の半身”と言ったのは間違いではない。
魔王を倒す方法はいくつかある。単純に実力で上回り、首を刎ねるなりすれば良いのだ。後は単純に弱点を突くか、である。
勇者と同じように、魔王にも“魔王の証”というものがある。
魔王の証が浮かぶのは胸の中心。その上に、ここを狙えと言わんばかりの十字の痣がある。
胸の中心というのは魔王の弱点だ。人間で言う心臓のような核があり、それが砕けることで概念的な死を迎える。
概念的な死、と表現したのにも理由がある。魔王は繰り返すのだ。砕けた核が悪の芽となり、また芽吹くのだ。
これを知るものはおそらく魔王である自分か、古代の記録すらも有する賢者くらいのものだろう。
長い前髪をピンで留める
誰かの傷を癒すような、優しい力は使えない。あるのは破壊の力だけ。
魔王はばつ印が心臓の上にある
ここを狙えと言わんばかりの十字のような痣だ
魔王の弱点は胸の中心
人間で言う心臓のような核があり、それが砕けることで概念的な死を迎える
けれど魔王は繰り返す
砕けた核が悪の芽となり、また芽吹くのだ
