赤いリボンの追走

赤いリボンの怪盗は警察に引き渡され、街に広がっていた噂もようやく終息を迎えた。
霧に包まれたロンドンの夜は、ようやく静けさを取り戻した。

探偵事務所に戻ったランマルは、ソファにどさりと腰を下ろした。
「はぁ……さすがに疲れたぜ」
肩口のコートは汗で重く、銀髪は霧で濡れて頬に貼りついている。

レイジは微笑みながらタオルを持ってきて、その髪を優しく拭った。
「君の足がなければ、きっと逃げられていただろうね。……やっぱり、ぼくの相棒は最高さ」

「……おまえが頭回してなきゃ、走る意味もなかった」
素直じゃない言葉を吐きながらも、ランマルはされるがままに目を閉じた。
タオル越しに触れるレイジの指が、やけに長く、やけに優しく感じられる。

「ふふ……君がこうして無防備になるの、好きだな」
囁きが耳にかかり、ランマルは思わず睨み返した。
「バカ、からかってんじゃねぇ……!」

だが次の瞬間、レイジは唇を近づけ、軽く啄むように口づけた。
「……っ!」
頬が熱を帯びる。
「ったく……探偵が仕事帰りにすることかよ」

「探偵だからこそ、事件が終わったら“ご褒美”が必要なんだよ」
レイジは目を細め、ランマルの肩を引き寄せる。
「ねぇ……今夜は走らなくてもいいよね?」

その低い囁きは仕事の延長線ではなく、ただ恋人としての声音だった。
ランマルは小さく息を吐き、観念したように目を閉じた。
「……ああ。おまえになら、捕まってもいい」

霧の街の夜、探偵と助手――そして恋人のふたりは互いの温もりに身を寄せる。
赤いリボンの事件は終わったが、ふたりだけの“幕”はまだ閉じない。
5/6ページ