赤いリボンの追走

翌晩。
旧骨董街のさらに奥――薄暗い倉庫街に、赤いリボンが結ばれた扉が見つかった。
「また挑発かよ……趣味の悪ぃ野郎だ」
ランマルが吐き捨てる。

レイジはルーペで扉を眺め、静かに呟いた。
「リボンは罠のサイン。……でも、それを“あえて見せる”のが奴のやり方だ」

その瞬間、建物の影から黒いマントを翻す人影が飛び出した。
月光に照らされた顔には、仮面――“赤いリボンの怪盗”そのものだった。

「来たな……!」
ランマルの足が石畳を叩く。

霧が濃い夜の倉庫街。
影のように走る犯人と、それを追う銀髪の疾走。
犯人が角を曲がるたびに、ランマルの身体は反射的に先を読み、速度を落とさない。

「な、何だ……この足の速さ……!」
仮面の下で、男の声が恐怖に歪む。

ランマルの瞳が鋭く光り、距離は一気に詰まった。
飛びかかる瞬間、彼の声が霧に響く。
「逃げ足じゃおれに勝てねぇって言ったろ!」

ドンッ――。
犯人の身体が石畳に叩きつけられ、赤いリボンが宙を舞った。
仮面が外れ、現れたのは骨董街の有力商人だった。

「てめぇが“演出家”か……!」
ランマルが低く唸る。

商人は血走った目で叫ぶ。
「金だ……評判だ……客を呼ぶには恐怖が必要だった!盗みもリボンも全部、“噂”を作るための演出なんだ!」

レイジがゆっくり歩み寄り、仮面を拾い上げる。
「なるほどね。君は自分を舞台の監督だと勘違いした。……でも、この芝居の幕引きは、ぼくらがやる」

ランマルは短剣を突きつけ、霧の中で冷たく言い放つ。
「――幕は閉じた」

霧の夜に赤いリボンが最後のひとひらを落とした。
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