赤いリボンの追走

翌夜。
旧骨董街は濃い霧に沈んでいた。
ガス灯の光は輪郭を失い、石畳にはしとどに湿った靴音が反響する。

「来るぞ」
ランマルが短く呟いた瞬間、霧の奥から人影が飛び出した。
背中に袋を抱え、真紅のリボンをひらりと残して走り去る。

「獲物の登場だね」
レイジが帽子を押さえ、余裕の笑みを浮かべる。

「任せろ」
次の瞬間、ランマルの身体が霧を切り裂いた。

足が石畳を叩く。
呼吸は一定、視界は悪くとも足音と風向きで相手の動きを読む。
角を曲がる前に膝が自然に傾き、路地の狭さを計算して跳ねる。

「な、なんだコイツ……!」
逃げる男が振り返ったとき、すでにランマルの影はすぐ背後に迫っていた。

霧が渦を巻く。
銀髪が揺れ、鋭い赤い瞳がギラリと光る。
その姿はまるで“狩人”。

「逃げ足じゃおれに勝てねぇ!」
ランマルの声が低く響く。

犯人は必死に袋を投げ捨て、別の路地に飛び込む。
だが、そこにはすでにレイジが待ち構えていた。
「舞台の出口は、最初から決まっていたのさ」

慌てて引き返した犯人を、ランマルが横から叩き伏せた。
石畳に重い音が響く。

「……っ、ぐぅ!」
犯人は動けなくなり、赤いリボンだけが宙を舞って落ちる。

レイジはそれを拾い上げ、にこりと微笑んだ。
「幕は閉じたよ」

霧の街に残ったのは荒い呼吸と、ふたりの視線の交わりだけ。
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