永遠のハーモニー

舞台裏に潜んでいた黒衣の影はついに追い詰められた。
崩れた照明の残骸を背に、短剣を取り落とし、膝をつく。
「ぐっ……なぜだ、なぜ私の邪魔をする!」

ランマルは鋭い赤い瞳で睨みつけ、低く言い放った。
「呪いなんざ最初から存在しねぇ。あんたの嫉妬と欲望が、楽団を狂わせただけだ」

「……演奏会の座を奪われた恨み。それで“呪い”を演出したんだろう?」
レイジが涼しい笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み寄る。
「でもね、君の偽物の音よりも、この街に響いている“真実の音”の方がずっと美しい」

舞台ではなおも演奏が続いていた。
指揮棒が振り下ろされ、音の波が観客を魅了する。
その旋律に重なるように、ふたりは黒幕を捕らえ、事件に終止符を打った。

――終演後。
楽団員たちは涙ながらに感謝を告げ、観客は熱狂的な拍手を送り続けた。
もはや「呪われた楽団」ではない。真実を取り戻した音楽は、霧の街に晴れ間をもたらしていた。

舞台裏に戻ったレイジは、そっとランマルの肩に手を置く。
「君のおかげで、また一つ謎が解けたよ」
「おれは一人じゃねぇ。……おまえがいたからだ」

そう呟いた瞬間、ふたりの間に沈黙が落ちた。
やがてレイジが微笑み、彼の襟を掴んで引き寄せる。
「じゃあ、最後にもうひとつ――ハーモニーを奏でようか」

唇と唇が重なった。
舞台の残響と共鳴するように、深く、熱く。
探偵と助手という仮面を超え、恋人としての絆が響き合う。

「……これがおれたちの“永遠のハーモニー”ってわけか」
ランマルが低く笑うと、レイジは満足げに目を細めた。
「ふふ、どんな旋律よりも甘美だよ」

霧の街に響いた愛のハーモニーは、決して途切れることなく――
ふたりの未来へと奏で続けていくのだった。
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