未来への口づけ
夜更けのロンドン郊外。
ランマルが拾ったハンカチを手掛かりに、ふたりは古びた修道院跡に辿り着いていた。
崩れかけた石壁の中に震える影が一つ――白いドレス姿の花嫁だった。
「……っ!」
彼女は怯えた瞳でふたりを見つめ、すぐに背を向けようとした。
レイジはゆっくりと両手を広げ、柔らかい声で呼びかける。
「安心して。君を追ってきたのは脅迫者じゃない。ぼくらは真実を探す者さ」
「……あなた方は……?」
「コトブキ探偵。そして、ぼくの頼れる助手」
レイジがそう言うと、ランマルは肩をすくめた。
「助手じゃなくて相棒だろ。ま、細けぇことはどうでもいい。……あんた、何から逃げてんだ?」
花嫁は唇を噛み、やがて震える声で語り始めた。
「この結婚は叔父が仕組んだものです。莫大な財産を動かすための、ただの契約……。
私は愛してもいない相手の妻になることを強いられていました。
……しかも、『従わなければ命はない』と脅されて」
「脅迫、か」
ランマルの赤い瞳が鋭く光る。
「じゃああんたは、仕方なく消えるしかなかったってわけだな」
花嫁は小さく頷いた。
「でも、本当は誰かに助けてほしかった。愛のない契約に縛られる人生なんて……」
レイジはそっと彼女の手を取った。
「君が選ぶべきは契約じゃない。君の心が望むものだけだ」
その言葉は、彼女だけでなくランマルへも向けられているようだった。
「へっ、綺麗事を言いやがって」
ランマルは苦笑しつつも、レイジの横顔を見つめる。
胸の奥が熱く疼く。
――助手として、恋人として。
自分がこの男の隣にいる意味を改めて突きつけられた気がした。
その瞬間、背後から複数の足音が響いた。
黒衣の刺客たちが霧の中から現れる。
「見つけたぞ、裏切り者め!」
花嫁を狙う刃が一斉に光った。
レイジは微笑みを消さず、ルーペを懐に仕舞う。
「さて――誓いの時だね」
ランマルは短剣を抜き、低く唸るように言った。
「上等だ。おれたちの“誓い”ってもんを見せてやる」
探偵と助手。
そして恋人としての絆を胸に、ふたりは花嫁を守るため霧の中へと躍り出た。
ランマルが拾ったハンカチを手掛かりに、ふたりは古びた修道院跡に辿り着いていた。
崩れかけた石壁の中に震える影が一つ――白いドレス姿の花嫁だった。
「……っ!」
彼女は怯えた瞳でふたりを見つめ、すぐに背を向けようとした。
レイジはゆっくりと両手を広げ、柔らかい声で呼びかける。
「安心して。君を追ってきたのは脅迫者じゃない。ぼくらは真実を探す者さ」
「……あなた方は……?」
「コトブキ探偵。そして、ぼくの頼れる助手」
レイジがそう言うと、ランマルは肩をすくめた。
「助手じゃなくて相棒だろ。ま、細けぇことはどうでもいい。……あんた、何から逃げてんだ?」
花嫁は唇を噛み、やがて震える声で語り始めた。
「この結婚は叔父が仕組んだものです。莫大な財産を動かすための、ただの契約……。
私は愛してもいない相手の妻になることを強いられていました。
……しかも、『従わなければ命はない』と脅されて」
「脅迫、か」
ランマルの赤い瞳が鋭く光る。
「じゃああんたは、仕方なく消えるしかなかったってわけだな」
花嫁は小さく頷いた。
「でも、本当は誰かに助けてほしかった。愛のない契約に縛られる人生なんて……」
レイジはそっと彼女の手を取った。
「君が選ぶべきは契約じゃない。君の心が望むものだけだ」
その言葉は、彼女だけでなくランマルへも向けられているようだった。
「へっ、綺麗事を言いやがって」
ランマルは苦笑しつつも、レイジの横顔を見つめる。
胸の奥が熱く疼く。
――助手として、恋人として。
自分がこの男の隣にいる意味を改めて突きつけられた気がした。
その瞬間、背後から複数の足音が響いた。
黒衣の刺客たちが霧の中から現れる。
「見つけたぞ、裏切り者め!」
花嫁を狙う刃が一斉に光った。
レイジは微笑みを消さず、ルーペを懐に仕舞う。
「さて――誓いの時だね」
ランマルは短剣を抜き、低く唸るように言った。
「上等だ。おれたちの“誓い”ってもんを見せてやる」
探偵と助手。
そして恋人としての絆を胸に、ふたりは花嫁を守るため霧の中へと躍り出た。