愛と謎の彼方で

霧の街に鐘の音が響き渡る頃、レイジとランマルは黒衣の怪盗を追い詰めていた。
仮面の舞踏会を抜け出し、古い石造りの回廊へと駆け込んだその影は、月光に照らされてなお不気味に揺れる。

「さすがだな、名探偵コトブキ。よもやここまで迫られるとは――」
怪盗の声は仮面越しに低く響き、嘲笑を含んでいた。
手にはあの宝石が握られている。

レイジは軽やかに一歩踏み出し柔らかな笑みを浮かべる。
「ふふ、舞台に役者が揃ったねぇ。さあ、カーテンコールの時間だ」

その横で、ランマルは鋭い瞳を光らせた。
彼の手には短剣が握られ、いつでも飛びかかれる構えをとっている。
「くだらねぇ芝居は終わりだ。……宝石を返してもらうぜ」

怪盗が一瞬身を翻した――次の瞬間、鋭い刃が闇を切り裂く。
「ランマル!」
レイジの声と同時に、ランマルは身を捻り、ぎりぎりで攻撃を避けた。
袖口が裂け、血が滲む。

「チッ……」
痛みに顔をしかめるランマルへ、レイジが駆け寄る。
その瞳には探偵らしい冷静さよりも、恋人としての焦りが色濃く浮かんでいた。
「無茶をするな、君を失ったら……ぼくはもう謎を解く意味を失う」

ランマルは苦笑し、短く息を吐く。
「……おまえらしくもねぇ言葉だな。
でも、安心しろ。おれはおまえの隣から離れたりしねぇ」

そのやり取りの隙を突こうとした怪盗に、ランマルの刃が閃いた。
彼は自らの傷をものともせず、相手の武器を弾き飛ばす。
宝石が宙を舞い、レイジの手の中に収まった。

「チェックメイト、だね」
ルーペを仕舞うような仕草でレイジは微笑む。
ランマルは肩で息をしながらも彼の隣に立ち続けた。

探偵と助手――そして、恋人。
互いの命を賭けた瞬間こそ、ふたりの絆が最も強く輝くのだった。
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