愛と謎の彼方で

宝石盗難の真相を探るため、レイジとランマルは依頼人の紹介で、とある舞踏会へ招かれていた。
そこは貴族や資産家たちが集う華やかな夜会。
燭台の明かりが天井のシャンデリアに反射し、煌めく光がホールを包み込む。

レイジは燕尾服に身を包み、いつも以上に洗練された雰囲気を漂わせていた。
「ふふ、やっぱり社交界は退屈しないねぇ。笑顔の裏に隠すものが多すぎる」
ワイングラスを指先で弄びながら、周囲の貴族たちへ軽やかに声をかける。
彼の柔らかな笑みは、警戒心を溶かす一方で、言葉の端々に真実を探る鋭さを潜ませていた。

少し離れた場所で、ランマルは仮面をつけたまま壁際に佇んでいた。
「チッ……騒がしいだけの場所だな」
彼の鋭い赤い瞳は、人々の視線を避けるようにして、それでいて会場全体を見渡していた。
盗まれた宝石を狙った怪盗が、この場に潜んでいる可能性は高い。

そんな彼のもとへ、レイジが軽やかに近づいてくる。
「やれやれ、せっかくの舞踏会なのに壁の花じゃもったいないよ?」
「……おれはおまえの影で十分だ」
仮面越しに小さく囁かれたその言葉は周囲には聞こえない。
それは“助手”としての言葉であると同時に、“恋人”としての想いでもあった。

レイジは一瞬だけ瞳を細め、笑みを深める。
「ぼくの隣は、いつだって君の席だよ」
その視線が交わる刹那、仮面に隠されたふたりの心は確かに重なった。

やがて、会場に低いざわめきが走る。
「……あれを」
ランマルが顎で示した先、仮面をつけた黒衣の人物が、人混みを縫うように移動していた。
鋭い気配を纏い、まるで影のように揺れるその姿――怪盗の影に違いない。

「ふふ、舞踏会もクライマックスってところかな」
レイジはグラスを置き、マントを翻した。
「行こう、ランマル。舞台は整った」

探偵と助手。
そして、互いに命を預け合う恋人。
ふたりは霧の街の真実を暴くため、仮面の影を追い始めた。
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