偽りの舞台

舞台裏の床板を外すと、冷たい風が下から吹き上げた。
ランマルが短剣を構え、赤い瞳で暗がりを睨む。
「……本当に地下があったか」

カミュは懐中ランプを掲げ、氷のような声を放つ。
「やはりな。楽譜の暗号は入り口の位置を示していた」
その横顔は冷徹で、ただ任務の達成しか考えていないように見える。

「ふふ……舞台裏に秘密があるなんて、まるで芝居の脚本みたいだ」
レイジは軽く笑いながらも、瞳は真剣に光っていた。
「――ランマル、気をつけて」
「言われなくても」
助手は短剣を握る手に力を込めた。

一行は階段を下り、地下室へと足を踏み入れる。
石造りの通路にランプの光が揺れ、湿った空気が漂った。

その奥から、不気味な合唱のような声が響いてくる。
「……仮面のために……仮面のために……」

アイが静かに呟いた。
「狂信者だ。残党の中でも、特に危険な連中」
水色の瞳が淡々と光る。
「油断すれば、あっけなく命を落とす」

次の瞬間、通路の奥から仮面を被った数人が現れた。
彼らは一斉に刃物を抜き、無言で突進してくる。

「来やがったな!」
ランマルが前に躍り出て短剣を構える。
鋭い金属音が響き、彼は素早く敵の刃を弾き飛ばした。
その身のこなしは、まさに“速さ”を武器にした戦いだった。

カミュは後方から冷静に指示を飛ばす。
「二人を左右から挟め! 通路を塞げ!」
彼自身も素早く敵の腕を取って捻り上げ、無駄のない動きで制圧する。

レイジは助手の背中に視線を送りながら、冷静に状況を分析した。
「ランマル!奥の扉を狙え!そこが拠点の中枢だ!」

「了解!」
赤い瞳が鋭く光り、ランマルは敵を蹴散らしながら突進する。
その速さに、残党の一人が思わず叫んだ。
「こいつ……速すぎる!」

アイは後方で冷静にメモを取り、ひとことだけ呟く。
「やっぱり、人間離れしてる」

やがて奥の扉を蹴り破ったランマルは、仮面のリーダー格と思しき男と対峙した。
白い仮面の奥から、冷たい声が響く。
「レイジ・コトブキ……あの探偵を我らの手に……」

「レイジには指一本触れさせねぇ!」
ランマルの短剣が鋭く閃き、男の武器を叩き落とす。

だがその瞬間、背後からもう一人の影が迫った。
「危ない!」
レイジがとっさに飛び出し、ランマルを押しのける。

刃は探偵の腕をかすめ、鮮やかな血が霧のように舞った。

「レイジ!」
ランマルの怒号が地下室に響いた。
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