消えた恋人
霧の路地で仮面の男が消えた後も、レイジの胸の中では不安が渦巻いていた。
「……自分から消えた? そんなわけない」
呟く声は震えていた。
カミュは歩を止め、冷たい瞳をレイジに向ける。
「お前の感情は理解する。だが奴は確かに俺に“託す”と言った。それが事実だ」
「だけど……」
レイジは言葉を飲み込み、俯く。
その拳は悔しさで白くなるほど握り締められていた。
――ランマル。君はどうしてぼくに何も言わずに……。
その時、背後から聞き慣れた淡々とした声がした。
「……思った通り、ここにいたんだ」
振り返ると、霧の中から再びアイが現れた
「どうやら……仮面の連中に会ったみたいだね?」
「……ああ」
レイジは短く答える。
「ランマルの居場所が分かったのかい?」
アイは無造作にコートの内ポケットから地図を取り出した。
赤い印がつけられているのは、ロンドン郊外の古い修道院。
「ここに監禁されている可能性が高い。証言と足取りから辿れる先はここだけ」
レイジの瞳が大きく見開かれる。
「修道院……!」
カミュは腕を組み、淡々と告げた。
「なるほど、隠れ家にはうってつけだな。聖なる場を穢すとは下劣な真似だ」
アイは二人を順に見渡し、僅かに唇を歪める。
「……ただし、簡単には行けない。内部は結界のように守られている。
捕らわれている本人が“出たくない”と望んでいるなら、なおさらだ」
レイジの心臓が跳ねる。
――出たくない?
「それでも行く。どんな理由があろうと、ぼくは必ずランマルを取り戻す!」
茶色の瞳が揺るぎなく輝く。
アイはわずかに肩をすくめ、霧に視線を向けた。
「……いいよ。そこまで言うなら手は貸す。ただし忠告しておく」
「……?」
「再会できた時、君が望むままの彼じゃないかもしれない」
冷たい声が霧の奥に消える。
レイジは胸を抉られるような予感を覚えたが、拳を固く握り直した。
「……それでも構わない。ぼくの隣に戻ってくれるなら」
その言葉に、カミュの氷の瞳がわずかに細められた。
「……探偵。お前の強さが奴を救う鍵になるかもしれんな」
三人の影は並んで、修道院へと続く霧の道を進んでいった。
「……自分から消えた? そんなわけない」
呟く声は震えていた。
カミュは歩を止め、冷たい瞳をレイジに向ける。
「お前の感情は理解する。だが奴は確かに俺に“託す”と言った。それが事実だ」
「だけど……」
レイジは言葉を飲み込み、俯く。
その拳は悔しさで白くなるほど握り締められていた。
――ランマル。君はどうしてぼくに何も言わずに……。
その時、背後から聞き慣れた淡々とした声がした。
「……思った通り、ここにいたんだ」
振り返ると、霧の中から再びアイが現れた
「どうやら……仮面の連中に会ったみたいだね?」
「……ああ」
レイジは短く答える。
「ランマルの居場所が分かったのかい?」
アイは無造作にコートの内ポケットから地図を取り出した。
赤い印がつけられているのは、ロンドン郊外の古い修道院。
「ここに監禁されている可能性が高い。証言と足取りから辿れる先はここだけ」
レイジの瞳が大きく見開かれる。
「修道院……!」
カミュは腕を組み、淡々と告げた。
「なるほど、隠れ家にはうってつけだな。聖なる場を穢すとは下劣な真似だ」
アイは二人を順に見渡し、僅かに唇を歪める。
「……ただし、簡単には行けない。内部は結界のように守られている。
捕らわれている本人が“出たくない”と望んでいるなら、なおさらだ」
レイジの心臓が跳ねる。
――出たくない?
「それでも行く。どんな理由があろうと、ぼくは必ずランマルを取り戻す!」
茶色の瞳が揺るぎなく輝く。
アイはわずかに肩をすくめ、霧に視線を向けた。
「……いいよ。そこまで言うなら手は貸す。ただし忠告しておく」
「……?」
「再会できた時、君が望むままの彼じゃないかもしれない」
冷たい声が霧の奥に消える。
レイジは胸を抉られるような予感を覚えたが、拳を固く握り直した。
「……それでも構わない。ぼくの隣に戻ってくれるなら」
その言葉に、カミュの氷の瞳がわずかに細められた。
「……探偵。お前の強さが奴を救う鍵になるかもしれんな」
三人の影は並んで、修道院へと続く霧の道を進んでいった。