消えた恋人

ロンドンの街は、朝から重い霧に包まれていた。
ランマルの姿を探すレイジとカミュは、彼の足取りを追うため、まずは常連の情報源へと向かう。

「昨夜、この辺りで背の高い銀髪で赤い瞳の男を見なかったかい?」
レイジが声を潜めて尋ねると、路地裏の古書店の老人は眉をひそめた。
「銀髪で赤い瞳の男なら……確かに見たよ。だが、妙に急いでいた。まるで、誰かに追われてるみたいだった」

その言葉に、レイジの心臓が強く脈打つ。
「追われてる……?」
「顔は見なかった。だが、黒い外套の一団が後をつけていたな」

老人の証言はそこで途切れた。
レイジは深呼吸をして落ち着こうとしたが、胸の奥でざわめきが広がっていく。

「……ランマル、君は何に巻き込まれたんだ」

カミュは黙って彼を見つめていたが、やがて冷ややかな声を落とした。
「一つ言っておく。あいつは俺に“託す”と言った。それはつまり、お前を守るために動いたということだ。
お前を裏切ったわけじゃない」

「……分かってるさ」
レイジは俯き、ルーペを握りしめる。
「だけど、ぼくは相棒に守られてばかりだ。彼の力に甘えて……肝心なときに何もできない」

カミュの氷の瞳がわずかに揺れた。
「弱音か、探偵」
「……違う。これは誓いだよ」
レイジは顔を上げる。
「必ずランマルを見つける。ぼくが……ぼくだけが、彼を連れ戻す」

その瞳の強さに、カミュは口元をわずかに緩めた。
「……なら、急ぐぞ。あの赤い瞳の光を、もう一度取り戻すためにな」

霧の街に二つの影が駆けていく。
消えた相棒を追う足音だけが、ロンドンの石畳に響いていた――。
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