幻に囁く亡霊

朝靄に包まれた屋敷を後にし、石畳の上を歩く二人。
亡霊の正体は暴かれ、屋敷には再び静けさが戻った。

レイジは歩きながらふと足を止め、ランマルの手を取る。
「やれやれ……ずいぶん騒がしい“亡霊”だったね」

「フン……くだらねぇ茶番だ」
ランマルはそっぽを向くが、その指先はレイジの手を強く握り返していた。

「でもさ」
レイジは柔らかな笑みを浮かべ、恋人の赤い瞳を見つめる。
「亡霊に何を囁かれてもぼくが信じるのは君だけだよ……」

ランマルは不意を突かれたように息を呑み、顔を赤くした。
「……バカ。そういうことを真顔で言うな」

レイジがくすりと笑い、軽く唇を重ねる。
石畳に差し込む朝の光がふたりを柔らかく包んだ。

その背後でカミュの足音が近づく。
「なるほど……亡霊は裁かれた。だが幻はまだ消えていない」

「幻?」
ランマルが眉をひそめる。

カミュは瞳を細め、意味深にレイジを見やった。
「君たちの前に立ちはだかるのは過去の罪ではない。
未来に囁く“幻”だ」

それだけ言い残しカミュは外套を翻して霧の中へと消えていった。

レイジとランマルは顔を見合わせ、肩を寄せ合いながら歩き出す。
――幻の亡霊は消えた。だが次に現れる影が、ふたりを待ち受けている。
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