時計塔の秘密

ロンドンの夜空にそびえる時計塔。
大きな鐘が深夜を告げるたび、霧に包まれた街はその音に震えてきた。
だが今、その象徴的な塔は、人々に畏怖の対象として囁かれている。

――「時計塔の亡霊が蘇った」。

数日前、塔の長針が突然落下し、石畳を貫いた。
幸い通行人はいなかったが、その直後、地面には奇妙な刻印が浮かび上がっていた。
まるで誰かが「暗号」を刻みつけたように。

新聞各紙は大きく取り上げ、街はざわついた。
事故か、陰謀か、それとも亡霊の仕業か。

「コトブキ探偵事務所」の扉を叩く音が響いたのは、そんな混乱の只中だった。
現れたのは時計塔管理局の役人で、蒼白な顔をして帽子を握りしめていた。

「お、お願いです…時計塔を調べていただけませんか」
声は震えていた。
「このままでは、街の人々が“時間”そのものを恐れてしまいます……」

椅子に腰かけたレイジ・コトブキは、ルーペをくるくると回しながら微笑んだ。
「亡霊ねぇ……ロマンチックだけど、現実的じゃない。
けど、“秘密”と呼ばれるものには興味があるよ」

隣で壁にもたれていたランマル・クロサキは、赤い瞳を細める。
「亡霊だろうが罠だろうが、どうせ人の仕業だ。
……塔の中で走り回ることになっても構わねぇなら、引き受けてやる」

レイジは楽しげに笑みを深め、役人に向き直った。
「依頼、承りました。――“時計塔の秘密”を暴くのは、ぼくたちの役目さ」

窓の外で鐘が再び鳴り響き、霧の街に響き渡った。
その音は、不吉な予兆か、それとも新たな幕開けの合図か。
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