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under world

目が覚めるとそこは見覚えのない狭い部屋で閑雅は床に寝そべっていた。
「...ここは?」
周りを見渡してみると壁一面が白に統一されドアが2つ向かい合うように設置されていた。
体がだるいし、なんだか痛い。
体が痛いのは多分床に倒れてしまったのと床に寝そべっていたせいだろうか。それにしてもなぜ、僕はこんな所にいるのだろうか?カフェでサンドイッチを食べていたはずなのにここは何処なのだろう。
「お、目が覚めたか」
不意にドアが開きガタイのいい男と背の低い見知らぬ男が2人入ってきた。
「誰...ですか...?ここはどこなんですか...」
「ん〜。質問には答えられないな。君は俺達の事を知らなくていいし」
「そうそう。でもここが何処かって言うのは教えて上げるよ。ここは人身売買をするU組織。君はここで売られる゛奴隷 ゛。気を失ってる間にカフェからこの部屋に連れてこられたってわけ」
「...どれ...い?なに言ってるの?!意味がわからない!!」
「まあまあ、落ち着けよ。簡単に説明すると、お前はカフェでサンドイッチとコーヒー食べたろ?そこにU組織特製睡眠薬が入ってて見事連れ去られたってわけ。凄いでしょ。まあ奴隷になるのは残念だろうけど奴隷になる準備として今から君の個人情報聞くから答えてね。」
「ざけないで...」
「ん?なんか言った?」
「ふざけんな!なにが奴隷だよ!人は道具でもなんでもないし意味がわからない!」
「あ〜。ドッキリかなにかだと思ってる?仕方ないな〜。ここに奴隷連れてくれば理解してくれるかな??」
ヘラヘラとしながら話す男2人を閑雅はキッと睨みつけるとズボンのポケットから折りたたみ式ナイフを取り出した。
「意味がわからないし、もし本当に僕が奴隷になるとして大人しくはいわかりました。なんて言うわけがないだろ!!
「おいおい、まじかよ。ナイフなんて物騒なものなんで持ってるんだよ。どうする?」
「とりあえずナイフ取り上げて縛りつければいいんじゃね?」
男達はやれやれという態度で近づいてきた。
「こ、こないで!もしこれ以上近づいたら...後悔するからな!?」
閑雅は震えているのを悟られないように大声をだした。だが閑雅の訴えは男達の耳には入らず「ハハハハハハ!!無茶すんなよ。そんな物騒な物、はやく捨てな」と笑い飛ばされるだけだった。
そして次の瞬間にはガタイのいい男が目の前に迫ってきた。
「ごめんな、調子に乗りすぎだ。少し大人しくなってもらうか」
男は閑雅の腹めがけて拳を振り殴りかかった。
閑雅は男のパンチを見事にくらい倒れた―――とはならなかった。
「...遅い」
閑雅はひらりと右に男を交わすと肩にナイフを当て食い込ませた。男は自分の走った勢いに乗り自らを傷つける羽目になった。
「ぐああああっ!?」
男は床に倒れ悶絶した。肩に手を当てると赤いものがベタりと付き白い部屋に赤い染みをつけた。
閑雅は男の体にまたがるとナイフをとり再び振り下ろした。刺すのではなく擦り傷をつくるようになんどもナイフを振り下ろす。
閑雅の理性はもはや失っていた。今は何かに取り憑かれているかのように同じ動作を繰り返すだけである。
――やだ。嫌だ。僕はもうこれ以上不幸を背負いたくない。もう自分を否定されたくない――
倒れた男は既に気を失っていたが閑雅は構わずにナイフを振り下ろす。
「おい、止めろ」
ふと声が聞こえたドアを振り返ると見知らぬ男が2人増えていた。
1人は左目を隠している身長の高い黒髪の男。もう1人は全体的に色素が薄くこちらも身長が高い青年が立っていた。
僕が目が覚めた時に入ってきたもう1人の男が黒髪の男に何が起こったのか状況を説明していた。推測すると男が応援として男2人を連れてきた。というところだろうか。
3対1。閑雅はナイフを持っているとはいえ刃渡りは短く圧倒的に不利である。
もう僕は奴隷にされて売られてしまうんだ...。絶望的な状況に閑雅は怯えることしか出来ない。
「これはお前1人でやったのか?」
黒髪の男が血を流している男を指さした。
「...はい。と言ったら僕を殺すの?」
「お前1人でやったんだな?」
男のなんとも言えない迫力に閑雅は怯えながらも頷いた。
すると左目を隠している男は「ほう」といい何かを考える仕草をみせた。そして不意に不敵な笑みをこぼし「お前、ここで働け」と言い放った。
「え...?」
予測もしなかった言葉に閑雅とは戸惑った。
「上原さん!?こいつは奴隷になる奴ですよ!!しかも仲間を傷つけた!!!もっと然るべき対処をするべきです!!」
「なに?お前俺に口答えすんの?」
背の低い男はそんなつもりでは。とまだなにか言いたげだったがそれ以上は反論できず黙ってしまった。
よほど上原さんと呼ばれた人が怖いのだろうか。
「お前に選択肢が2つあるけど、どうする?」
状況を読み込めない僕を置いて上原さんと呼ばれた男は淡々と喋る。
「一つはこのまま抵抗できず奴隷として売られる。もう一つはU組織に入って働くか」
閑雅は狼狽えた。自分が売られるのは当然嫌だった。だがもう一つの選択肢は‴自分は売る側に回って人を奴隷として売れ‴と言っているのだ。
そんなの両方嫌に決まってる。
だが迷っている暇は無かった。無情にも「あと五秒で答えろ。5 4 3 2―」とカウントダウンが始まる。
「働きます...」気がつけばそう呟いていた。
人を奴隷として売るなんて嫌だったがそれ以上に自分が奴隷として売られるのが嫌だった。僕は最低な人間だ。そして上原さんが満足気な顔をしたのを僕は見逃さなかった。それがとても悔しく感じた。
「契約成立だな。お前は今日からここで大人しく働いとけ。あとお前にパートナーを付ける。」
上原さんの横に立っていた青年を指さすと青年は自分が指名されたことに少し驚いていた。
「お前名前なんだっけ?」
「高宮卑琉です。」
高宮卑琉と名乗った青年は僕を一瞬だけみるとすぐにそっぽを向いてしまった。
「そういうことで、お前は今日からU組織の組員だ。組織の裏切りは許さない。よろしくな‴近藤閑雅‴」
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