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「ねーーーーー……」
「……」
「拓海ぃぃい……ねーーー…」
「…………」
無言の男にぎゅうううっとひたすら抱きつく。
せっかく拓海の部屋に遊びに来たというのに、ひたすら無視され続けている。
「なんで一言も喋んないの、本当は部屋に入られたくなかった?」
「そういうんじゃねーよ」
だったらなんだと言うのか。
ここまで素っ気なくされると、こっちも気分が悪くなってくる。
抱きついていた腕を解き少し距離をとって座り直した。
「…………」
「…………」
それにすら反応が無く、少しずつイライラしてきていた。
喧嘩になるのも嫌なので、先手を打つ。
「ね…ねえ、また秋名湖連れてってよ」
この空気感の中に居続けるのはもう耐えられない。
これ以上ここにいると嫌な態度をとってしまう。それだけは避けたい。
「こないだも行ったから、違うところがいいかな? あ!前に話しで聞いた赤城山とかどう?」
「……」
一生懸命提案するも、バツが悪そうに頭をガシガシとかいては無言を貫く拓海。
あーーー…ダメだ。
「……ねえ、なんなの?部屋に入るなり急に黙り込んでさ。あたし拓海の家初めてだし、遊び来るの楽しみにしてたのに」
「あー……。うん」
少し驚いたような反応をした彼を睨みつけるように見ると、僅かに顔を赤く染めており拍子抜けした。
こいつ、そういうのが趣味なの?
もう余計にわからず更に問い詰める。
「うん、じゃ何なのかわかんないんだけど………っ!?!?」
言い終わると同時に視界がぐるりと周り、目に映るのは拓海と天井だった。どうやら押し倒されているようだ。
相変わらず目線を合わせず顔を赤くしている拓海が、やっと口を開いた。
「……ごめん、正直、こういう目的で呼んだ」
「どうせ親父飲みで遅くなるし」と続ける。さっきまでの態度に納得し一安心。
この男はそうか、だいぶ奥手だった。
しかし、付き合ってもう暫く経つし薄々何となく感じていたけども。いざこういう場面になると、さすがに緊張する。多分拓海もだけど、あたしだって初めてだ。
「……」
「……」
押し倒された体勢のまま、恥ずかしさでお互いに顔を逸らし無言になる。
「……ごめん、やっぱり」
「だめ、」
耐えきれなくなった拓海が私の上から離れようとしたところに、私は慌てて拓海の首に腕を回した。
「……しよ」
「ッ……!」
この部屋に来てようやく、お互い真っ赤になった顔で目が合わせられた。
「……その、痛かったら、ごめん」
「…ん…だいじょーぶ」
優しく口付けられ徐々にその回数が増えると、さらに深い口付けに切り替わっていく。
お互い夢中になって求め合う。
「あかね、好きだ」
その一言で完全に落ちた。
───……事が終わった後、早めに帰って来た親父さんに茶化されたのはまた別のお話。
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