地獄
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「はぁ……はぁッ……」
見慣れた町、暗い夜道を全速力で走る。
街灯の明かりはあるが民家には1つも明かりが無い。
こんな夜中に外に出ることなんて無いから普段の様子と比べられないが、なんだかいつもと雰囲気が違う。夜中だからとかいう次元じゃない。
人間どころか生き物の気配を全く感じない。とにかく様子がおかしい。
何故今自分が走っているのかもよく分からない。
ただただ本能が"逃げろ"と急かしてくる。
夜空が夜空の色じゃない。ドス黒い赤や緑、青など言い表せない不快な色の空。
怖い。
彼を探さないと。
思い当たる場所に向かう。彼と私の務めている職場、この町の小学校。
いつもの通勤路を走る。
信号が間髪入れず青・黄・赤と順番に光っている。異様な光景に怖気付きそうになるが首を振って耐える。次の角を曲がれば目的地だ。
しかしそこに小学校は無く、学校を囲う塀と校門を残してだだっ広い更地になっていた。
「なんでっ……?」
立ち止まっていると何かが近づいてくる気配を感じた。
慌てて閉まっている校門を乗り越え、更地の中央に向かって走る。
中央付近まで辿り着くと、疲労のせいか膝から崩れ落ちた。
後ろを振り返り校門を見ると、大きな2つの目玉をつけた黒い影が此方を覗くように見つめていた。
表情が見てわかる訳ではないのだが、奴はニタっと笑ったように感じた。
その影はこちらを見つめたまま、液体のように門の上をズルリと乗り越えてきた。
足に力が入らなくて立ち上がれない。
腕で這うようにして逃げる。
助けて、助けて!
彼に助けを求める。
彼を、彼……。あれ、なんだっけ。あの人、太い眉毛の、職場の同僚、霊能力者の、左手に鬼の手を持つ、5年3組の担任、恋人。
頭をフル回転させる。
その間にあの影はすぐ真後ろにまで迫っていた。
名前……名前が思い出せない、なんで、なんで……なんでなんでなんでなんでなんで
───……
ぱちっ
カーテンの隙間から光が漏れている。
顔は動かさず視線だけで周りを確認すると、どうやらここは彼のアパート。
1つ大きく呼吸をしてゆっくり瞬きをすると目尻から両耳に向かって水分が流れた。
心臓がバクバクしている。
右隣を見ると呑気にいびきをかきながら寝ている彼。
「……鳴介」
彼の名前を口にすると、収まっていた涙がボロボロと溢れ始めた。
夢だったんだ。
凄く怖かった。彼が居ない世界の夢。
寝ている彼に容赦なく抱き着いて、脇目も振らず咽び泣いた。
「んがっ……?……ぁ?え…?どうしたの」
起こしてしまったことに申し訳ない気持ちが湧き出てくるが、正直今は彼の存在を感じていたかった。
涙でぐしゃぐしゃの顔を鵺野に押し付けると、彼は戸惑いながらも体を向き直して優しく抱き寄せた。
「怖かった、鳴介がわかんなくなる夢」
「なんだ怖い夢見たのか」
「いないし、思い出せなくなったの」
「いるよここに」
ぎゅっと強く抱き締めて頭を撫でてくれる。心臓が少しずつ落ち着いていく。彼の胸に顔を埋めて自分の腕を彼に回す。
「良かった」
「いなくなれって言われても、俺は背後霊のように何処までも憑いて行くぞ」
ニッと笑った鵺野に「バカ」と小突いたが、内心嬉しくて愛おしい。
少し体を離して彼の顔を見る。
「安っぽくて好きじゃないんだけど」
「うん?」
「ずっと一緒にいてね」
「当たり前だ」
「鳴介大好き」
目を真っ直ぐ見て伝えると顔を赤くする鵺野。釣られてこっちも熱くなる。
「俺もあかねが大好きだ」
いつものデレっとした顔じゃなくて、少し困ったような、照れた顔で言われた。
お互い恥ずかしさから顔を逸らしたくて、またぎゅっと抱き合った。
───
(※ほんのちょっと大人向け)
「あの〜ぅ…」
「?」
腕をガッと掴まれ鵺野の下半身に持っていかれる。
「!!!!」
「すんません……あんまりにも可愛くてその…」
「あ、ああぁ明るいから今はダメ!」
「えええええ〜〜ッ!?」
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