地獄
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「こら、いつまで残ってんだ」
「わっ、ぬ〜べ〜!」
頭にポンッと少々強めの衝撃が来た。
現在時刻は17時を過ぎている。肌寒い季節故日はとっくに落ちていた。
あかねは時々こうしてしんと静まり返った教室に1人で座っている。ちょっと怖いから電気はもちろん付けて。
そうしていれば大好きな担任の先生が来てくれるからだ。
「いつも早く帰れって言ってるだろう。両親も心配してるんだぞ?」
太い眉をこれでもかと下げながらため息を吐く。
「先生がいるからお父さんもお母さんも心配してないよ」
「そんなわけあるか、子供が理由も無くこんな遅くまで帰ってこなかったら心配するさ」
「ほら帰るぞ」と背中を向けられ慌てて席を立ち、ランドセルを背負って追いかけた。
こういう日は決まって先生が家まで送ってくれる。
恐らく1人で下校させられないのだと思う。
少し前に童守小学校周辺で下校中の子供たちを狙った変質者がよく出没していたから。
そいつは先生が追い払ってくれたとかって、郷子ちゃん達が言ってたっけ。
変質者は怖いけど、でも先生を独り占めできているようなこの時間が本当に大好きだ。
「ねえ先生」
「んー?」
「好きだから彼女にして欲しいな」
「はあ……お前なぁ……」
またご自慢の眉毛を下げながら困ったように笑う。
「先生はお前ら生徒を守るのが仕事だ。勿論勉強も教えるがな」
「……仕事と恋愛って関係あるの?」
「そうじゃなくて、先生は大人で、あかねはまだ小学生。恋はクラスの子……同じくらいの子達とするものだ」
「なんで先生とはダメなの?」
「大人は子供を守る立場だからだ」
なんだか納得いかない。
年の差なんて関係ない、ってお母さんが見てたドラマで言ってたような。
これでもかと言うほどむすくれた顔をしても先生は顔色を変えない。
「じゃあ、大人になったら彼女にしてくれる?」
「…あー……まあ、世間的にはそういう事も有り得なくは無いが」
「どういうこと?」
「あくまであかねは俺の生徒だ。それはあかねが大人になっても変わらんだろう」
つまり失恋したということだろうか。
人生経験11年ほどの頭では理解がしきれていないが、先生から見たらあかねは一生"生徒"でしかないということ。
こちらは先生の事を本気で好きなのに。
「ぬ〜べ〜なんか嫌い」
歩みを止めて俯く。涙が堪えきれなかった。
先生は優しく頭に手を置く。
「まだ人生長いんだ、俺なんかじゃなくてもっと素敵な男性がいつか現れるさ。クラスの男子もいいヤツらだぜ?」
優しく諭すように言われても、全然、何の慰めにもなってない。
クラスの男子なんて皆子供っぽくて嫌だ。
だから先生がいいのに。強くてかっこよくて頼りになる先生が。
ぐずりながら歩き続け自宅に到着すると、「先生さようなら」と目を合わせず挨拶をして玄関ドアを閉めた。
明日から、学校行くのやだなぁ。
───翌日、やはり先生には会いたいのでしっかり登校するあかねだった。
───
子供と大人の境界線がしっかりしてるぬ〜べ〜だと嬉しい。
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