心理テスト いたずら(烏野、白鳥沢)
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クラスが違うのに、
今日も彼は私の前の席に座る。
自分の教室があるはずなのに、当たり前みたいな顔で。
肘を椅子の背もたれに置いて、楽しげに話す。
部活のこと。
好きな漫画。
昨日見たテレビ。
新作のお菓子。
明るくて、軽くて、よく笑う。
私は大きめにリアクションをして、相槌を打つ。「へぇー!」「なにそれ面白そう!」
でも彼は笑いながら、ちゃんと見ている。
私がどこで目を輝かせたか。
どこで本当に笑ったか。
どこで少しだけ温度が下がったか。
本当は、何に興味を持ったのかを。
彼が話す姿が好きだ。
身振り手振りが少し大きくて、でも目は冷静で。
楽しそうなのに、どこか一歩引いている。
確認する目
変じゃないか。
浮いてないか。
今の自分は、受け入れられているか。
それは不安というより、癖なんだろうな。
一年の春。
同じクラスになった彼は、見るからに目立っていた。
高い身長。
赤い髪。
立てた髪。
誰にでも話しかけて、よく笑う。
でも、その目だけは違った。
人に興味がない目。
正確には──諦めている目。
期待して、裏切られるくらいなら、最初から期待しない。
空気を壊さない程度に、明るくしておく。
自分が異物にならない程度に。
その距離感を、私は痛いほど知っていた。
だから、夏頃。
彼の目が変わったのに気づいた。
同じ部活の仲間と話しているときの目。
理解されなくてもいい。
でも、ここにいていい。
そんな緩み。
あぁ、居場所ができたんだ。
良かったね。
そう思ったのに、同時に胸の奥がざわついた。
羨ましい。
悔しい。
同じ異物同士だと思っていたのに。
彼が私に興味を持つのは、思ったより早かった。
会話のテンポを合わせる。
同じ高さで笑う。
同じ毒を、同じ軽さで返す。
傍から見れば似ているのだろう。
でも私たちは、お互いに探っていた。
あなたはどこまで本気?
どこまで演技?
一年の秋。
彼はよく悪戯を仕掛けてきた。
突然肩をつつく。
背後から名前を囁く。
わざと意地悪なことを言う。
私の反応を見たいのだとわかった。
だから、期待通りの反応をしてあげた。
大袈裟に驚いて、わざと怒って、最後に笑う。
楽しい?
挑戦の意味を込めた視線。
彼はちゃんと理解していた。
そして、満足そうに笑った。
いつからか、彼が私を異性として見ているのに気づいた。
それが腹立たしかった。
居場所を見つけたくせに。
理解者も得たくせに。
さらに特別を欲しがるのか。
もっと素直で。
打算もなくて。
可愛く笑う女の子を選べばいいのに。
私は、そんな役はしない。
だから、明るく濁す。
興味がないという空気を笑顔に混ぜる。
それでも彼は離れない。
むしろ、私の周りをうろつく。
他の男子と話せば、さりげなく間に入る。
駆け引きがしたいのかと、少しだけ毒を混ぜて言った。
人に見せない顔で。
「面倒くさい関係がいいの?」
彼は一瞬だけ目を細めた。
そして、満面の笑み。
「その顔が見たかった」
──やられた。
完全に。
落ちた。
もっと意識されたい。
異性として。
三年
今、私たちは"仲のいい馬鹿なカップル"として見られている。
くだらないことで笑って、
どうでもいいことで張り合って、
ときどき意地悪をして。
この関係は、たぶん永遠じゃない。
彼が私より強い興味を持つ誰かを見つけたら、
終わるのだろう。
彼は前に進む人だから。
それでも。
異物同士だった私たちが同じ教室で笑っている。
有限でいい。
終わりがあってもいい。
今日も彼は、私の前の席に座る。
「ねぇ〜○○ちゃん聞いてョ!」
その声に私は笑った。
※※※※※※※※※
(天童視点)
『何考えてるかわからない。』
人からその言葉を言われるたびに思う。
当たり前の事なのに、何言ってるんだろう?
人の思考を全部理解できる人間なんているわけねーのよ。
なのに、"わからない"を理由に避ける。
自分と違う、で線を引く。
中学まではそれが普通だった。
理解されなくても別にいい。
でも居場所は欲しい。
矛盾してるって?
人間なんて矛盾で出来てるでしょ。
でも白鳥沢のバレー部に来て変わった。
理解はしないけど、受け入れる人がいる。
独立独行な若利くんがいて。
若利くんを「まぁそっか」で許容する空気の中なら、俺も「まぁそっか」で置いてもらえる。
なんて居心地がいいんだろう。
でも同時に思った。
これは特別だ。
特別な時間はいつか終わる。
クラスに、妙な子がいた。
中心に立つわけじゃない。
でも、気づけば色んな人と話している。
誰かが困れば、空気を一段下げて質問をする。
委員会の説明で不満が出そうになれば、先回りしてもっと酷い文句を言って笑わせる。
空気が丸くなったら、ふてくされた顔で「じゃあ自分がやる」と手を挙げる。
疲れないのかな、って思った。
俺はやりたくないことはやらない。
でも、ああすれば回るのか、と気づいた。
見様見真似でやってみた。
そしたらクラスにも、居場所ができた。
避けられていた奴らが、笑って受け入れる。
楽しかった。
正直、悔しいくらいに。
そうなると、そのやり方をみせてくれた彼女のことを知りたくなる。
でも方法がわからない。
だから、悪戯した。
肩をつつく。
急に距離を詰める。
わざと意地悪を言う。
反応が見たかった。
でも彼女は、俺に驚くんじゃない。
周りが笑うためのリアクションをする。
俺のためじゃなくて、場のため。
悔しかった。
俺を見てよ。
クラスメートの好きなタイプの話。
彼女は言った。
「寡黙な人がいいなぁ。」
俺を見ないで。
でも俺の前で。
俺には興味ないって、ほのめかす。
……可愛い。
だってさ。
俺の前で、俺を対象外ですって言うってことは、
俺を認識してるってことじゃない?
完全な無なら、言葉にもしないでしょ?
小声で囁いた。
「意識しないように気にかけてくれてありがと〜」
彼女は一瞬だけ固まった。
あの顔。
あれで落ちたのは、たぶん俺のほう。
三年。
周りから『あいつら付き合ってるでしょ』って認知されてる今も、俺は相変わらず話しかける。
「今日後輩にイタズラしたんだけどねぇ〜リアクションが面白いんだョ」
「うわ、先輩風吹かせてるね!」
「えっ?そこツッコむのぉ〜?」
笑う。
周りが「今日も企んでるよあいつら」って言う。
それを聞きながら、彼女がふと聞く。
「それで、なんでイタズラなんてして関係性を変えようとしたの?」
知らないよ。
そんなの。
でも答える。
「きっかけになったら面白いかな〜って」
彼女は笑う。
でも知ってる。
俺が部活の人間関係を壊してないか、ちゃんと探ってる。
優しい子。
そこまで俺、繊細じゃないんだけどな。
卒業したらバレーは辞める。
楽しいことを追いかけたい。
好きなことを突き詰めたい。
その好きなことの中に、彼女が含まれている。
たぶん彼女は気づいてない。
気づいてたら、あんな風に言わない。
もし卒業と同時に、彼女が別れを切り出しても。
俺は離さない。
執着?
違う。
固執?
それも違う。
これは選択だ。
俺が選んだ。
一生かけてもいいと思った人。
彼女から教えてもらった笑顔で、今日も笑う。
何考えてるかわからない?
そうだよね。
でもひとつだけ確実なことがある。
俺は、〇〇ちゃんを手放さない。
面白いでしょ?
一番わかりやすいところが、
一番本気なんだよ。
〈終〉
