心理テスト 「寒い」と言ったら(烏野編)
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また暗い廊下を一人で歩くんだと思ったら、思わず身がすくんだ。
体操着の入った布のバッグをぎゅっと抱きしめて気合を入れる。
教室のドア近くの電気を消して、ドアノブに手をかけた。
そのとき、なぜか向こうからドアが開いた。
叫びそうになったけれど、喉が張り付いたみたいに声が出ない。
そのまま力が抜けしゃがみ込んでしまう。
「苗字さん?」
顔を上げると、そこにいたのはクラスメートの縁下くんだった。
……なんで?
どうしてここに?
疑問ばかり浮かぶのに声が出なくて…ただ見上げる。
「ごめん。驚かせちゃったよね」
そう言って、縁下くんも隣にしゃがむ。
心配そうにこちらを見る視線に、少しだけ呼吸が楽になった。
「忘れ物、取りに来て……夜の学校、怖くて……」
「うん。」
「縁下くんは、どうして? もう下校時間だけど……」
少しだけ気まずそうに視線を逸らす縁下くん。
私と同じで忘れ物かな、なんて思っていたら。
「一人で教室に向かう苗字さんが見えたから……下校時間だし、心配で」
少し照れたように、でもまっすぐ言われて胸の奥が温かくなる。
「でも、怖がらせちゃったね」
「ううん……一人で歩くの怖かったから。縁下くんが来てくれて、よかった」
そう言うと、彼は「タイミング悪かったな。もっと早く声かけられたらよかった」なんて言って笑った。
一緒に廊下を歩き始める。
さっきまであんなに怖かったのに、不思議と足取りは軽い。
「夏合宿で学校に泊まったときもあったけど、あの時は人がいたからさ。静かすぎるより、うるさいくらいだったよ」
「同じ学年に西谷くんと田中くんいるもんね。確かにうるさそう」
そんな他愛ない話をしながら校舎を出る。
冬は寒くてあまり好きじゃない。
でも空気が澄んだ夜は星がよく見えるのが好きだな、なんて思う。
そんなことを話していたら
冷たい風が吹いて思わず口から零れた。
「寒いね」
その言葉に縁下くんは何も言わず、ただ優しく笑った。
それだけなのに胸がどきっとする。
急に静かになって何か話さなきゃ、と言葉を探す。
「……少し、寄り道しようか」
縁下くんが小さな声で言った。
「坂の下商店でさ。買い物するふりしてちょっと暖まろう」
真面目そうなのにそんな理由でお店に入ろうとするのが可笑しくて思わず笑う。
「買い物、しないの?」
「する"ふり"だからね」
店まではもう少し歩く。
そう思うとこの寒さもなんだか我慢できる気がした。
それどころか……
この時間が少しだけ楽しいと思えている自分に気づきながら私は歩いた。
〈縁下視点〉
部活が終わって、木下と成田と一緒に校舎を出ようとしていたときだった。
廊下を歩く苗字さんの姿が目に入る。
よく見ると今にも泣き出しそうな顔をしていて思わず足が止まった。
……怖いんだ。
文化祭のお化け屋敷のときもそうだった。
周りに気を遣って笑っていたけど、どう見ても苦手なのは分かっていた。
「先、帰ってて」
そう二人に声をかけて、校舎の中へ戻る。
多分忘れ物だろうな。
そう思いながら教室へ向かうと、電気がついていた。
良かった。
まだ教室にいる。
安心させたかっただけなのにタイミングが悪かったらしい。
ドアを開けた瞬間、苗字さんはしゃがみ込んで泣きそうな顔をした。
声が震えたままどうして俺がここにいるのかを聞かれて。
何か適当に理由を作ればよかったのかもしれないけど……それは違う気がした。
だから正直に言った。
一人で暗い廊下を歩く苗字さんを見て心配になったこと。
それだけ。
教室を出てまた暗い廊下。
不安そうな横顔を見て、少しでも気を紛らわせたくて夏合宿の話をする。
こんなときに明るくできる話題が、西谷と田中の話になるのは正直どうかと思うけど。
……まあ、いつも迷惑かけられてるしいいか。
学校を出て帰り道を歩く。
クラスでは話す方だけど、こうして二人きりで下校することはない。
少し怖がらせてしまったかもしれない。
でもこうして話せていることが素直に嬉しかった。
夜空を見上げて、「星が好きなんだ」と言う苗字さん。
話しながら見る横顔がきれいで、気づけば夜空よりも彼女の方を見ていた。
白い息を吐きながら「寒い」と言われて、
星じゃなくて彼女を見つめていたことがバレないように笑ってごまかす。
学校の暖房なんてあってないようなものだ。
外は余計に寒いはず。
「ちょっと、寄り道しようか」
坂の下商店で、少し暖まってもらえたら。
それくらいしか、できることが思いつかなかった。
店に入ると下校時間からずれているせいか学生は誰もいない。
少し、ほっとする。
ストーブの前に苗字さんを促すと奥から鵜飼コーチが出てきた。
「買い食いか? 下校時間より遅いけど……」
「忘れ物してて。コーチ今から店番ですか?」
ちらっと苗字さんを見て、頭をかきながら椅子を二つ運んでくる。
「バスも本数少ないだろ。暖まっとけ。俺はヤニ吸ってくる」
……気を使われた、気がする。
ストーブの前で、
「お店の人って、バレーのコーチもしてるんだね」
なんて話をしながら、部活のことや、他愛ない話をする。
「おい、そろそろバスの時間だぞ」
声をかけられて慌てて立ち上がろうとすると、顎でこちらを指して「来い」と合図される。
早く外に出たいのに。
「お買い上げ、ありがとうございますー」
棒読みで、ココアの缶を差し出された。
「え……?」
財布を探そうとすると、手で制される。
「いいから。彼女に渡せ。青春は部活だけじゃねぇだろ」
……やっぱり、バレてる。
でも、冷やかしじゃない。
「俺が奢りたいんで」
財布から小銭を出した。
軽く頭を下げると、「さっさと行け」と追い払われた。
外に出ると、バスまではまだ少し時間があって。その間に、苗字さんにココアを渡す。
「いいの?」
そう言って笑う顔が、どうしようもなく可愛い。
でも、俺一人じゃ、この笑顔は見られなかったんだと思う。
夜空の星を見上げながら、今が楽しいのに…。
もっと大人になれたらいいのに、なんて思った。
体操着の入った布のバッグをぎゅっと抱きしめて気合を入れる。
教室のドア近くの電気を消して、ドアノブに手をかけた。
そのとき、なぜか向こうからドアが開いた。
叫びそうになったけれど、喉が張り付いたみたいに声が出ない。
そのまま力が抜けしゃがみ込んでしまう。
「苗字さん?」
顔を上げると、そこにいたのはクラスメートの縁下くんだった。
……なんで?
どうしてここに?
疑問ばかり浮かぶのに声が出なくて…ただ見上げる。
「ごめん。驚かせちゃったよね」
そう言って、縁下くんも隣にしゃがむ。
心配そうにこちらを見る視線に、少しだけ呼吸が楽になった。
「忘れ物、取りに来て……夜の学校、怖くて……」
「うん。」
「縁下くんは、どうして? もう下校時間だけど……」
少しだけ気まずそうに視線を逸らす縁下くん。
私と同じで忘れ物かな、なんて思っていたら。
「一人で教室に向かう苗字さんが見えたから……下校時間だし、心配で」
少し照れたように、でもまっすぐ言われて胸の奥が温かくなる。
「でも、怖がらせちゃったね」
「ううん……一人で歩くの怖かったから。縁下くんが来てくれて、よかった」
そう言うと、彼は「タイミング悪かったな。もっと早く声かけられたらよかった」なんて言って笑った。
一緒に廊下を歩き始める。
さっきまであんなに怖かったのに、不思議と足取りは軽い。
「夏合宿で学校に泊まったときもあったけど、あの時は人がいたからさ。静かすぎるより、うるさいくらいだったよ」
「同じ学年に西谷くんと田中くんいるもんね。確かにうるさそう」
そんな他愛ない話をしながら校舎を出る。
冬は寒くてあまり好きじゃない。
でも空気が澄んだ夜は星がよく見えるのが好きだな、なんて思う。
そんなことを話していたら
冷たい風が吹いて思わず口から零れた。
「寒いね」
その言葉に縁下くんは何も言わず、ただ優しく笑った。
それだけなのに胸がどきっとする。
急に静かになって何か話さなきゃ、と言葉を探す。
「……少し、寄り道しようか」
縁下くんが小さな声で言った。
「坂の下商店でさ。買い物するふりしてちょっと暖まろう」
真面目そうなのにそんな理由でお店に入ろうとするのが可笑しくて思わず笑う。
「買い物、しないの?」
「する"ふり"だからね」
店まではもう少し歩く。
そう思うとこの寒さもなんだか我慢できる気がした。
それどころか……
この時間が少しだけ楽しいと思えている自分に気づきながら私は歩いた。
〈縁下視点〉
部活が終わって、木下と成田と一緒に校舎を出ようとしていたときだった。
廊下を歩く苗字さんの姿が目に入る。
よく見ると今にも泣き出しそうな顔をしていて思わず足が止まった。
……怖いんだ。
文化祭のお化け屋敷のときもそうだった。
周りに気を遣って笑っていたけど、どう見ても苦手なのは分かっていた。
「先、帰ってて」
そう二人に声をかけて、校舎の中へ戻る。
多分忘れ物だろうな。
そう思いながら教室へ向かうと、電気がついていた。
良かった。
まだ教室にいる。
安心させたかっただけなのにタイミングが悪かったらしい。
ドアを開けた瞬間、苗字さんはしゃがみ込んで泣きそうな顔をした。
声が震えたままどうして俺がここにいるのかを聞かれて。
何か適当に理由を作ればよかったのかもしれないけど……それは違う気がした。
だから正直に言った。
一人で暗い廊下を歩く苗字さんを見て心配になったこと。
それだけ。
教室を出てまた暗い廊下。
不安そうな横顔を見て、少しでも気を紛らわせたくて夏合宿の話をする。
こんなときに明るくできる話題が、西谷と田中の話になるのは正直どうかと思うけど。
……まあ、いつも迷惑かけられてるしいいか。
学校を出て帰り道を歩く。
クラスでは話す方だけど、こうして二人きりで下校することはない。
少し怖がらせてしまったかもしれない。
でもこうして話せていることが素直に嬉しかった。
夜空を見上げて、「星が好きなんだ」と言う苗字さん。
話しながら見る横顔がきれいで、気づけば夜空よりも彼女の方を見ていた。
白い息を吐きながら「寒い」と言われて、
星じゃなくて彼女を見つめていたことがバレないように笑ってごまかす。
学校の暖房なんてあってないようなものだ。
外は余計に寒いはず。
「ちょっと、寄り道しようか」
坂の下商店で、少し暖まってもらえたら。
それくらいしか、できることが思いつかなかった。
店に入ると下校時間からずれているせいか学生は誰もいない。
少し、ほっとする。
ストーブの前に苗字さんを促すと奥から鵜飼コーチが出てきた。
「買い食いか? 下校時間より遅いけど……」
「忘れ物してて。コーチ今から店番ですか?」
ちらっと苗字さんを見て、頭をかきながら椅子を二つ運んでくる。
「バスも本数少ないだろ。暖まっとけ。俺はヤニ吸ってくる」
……気を使われた、気がする。
ストーブの前で、
「お店の人って、バレーのコーチもしてるんだね」
なんて話をしながら、部活のことや、他愛ない話をする。
「おい、そろそろバスの時間だぞ」
声をかけられて慌てて立ち上がろうとすると、顎でこちらを指して「来い」と合図される。
早く外に出たいのに。
「お買い上げ、ありがとうございますー」
棒読みで、ココアの缶を差し出された。
「え……?」
財布を探そうとすると、手で制される。
「いいから。彼女に渡せ。青春は部活だけじゃねぇだろ」
……やっぱり、バレてる。
でも、冷やかしじゃない。
「俺が奢りたいんで」
財布から小銭を出した。
軽く頭を下げると、「さっさと行け」と追い払われた。
外に出ると、バスまではまだ少し時間があって。その間に、苗字さんにココアを渡す。
「いいの?」
そう言って笑う顔が、どうしようもなく可愛い。
でも、俺一人じゃ、この笑顔は見られなかったんだと思う。
夜空の星を見上げながら、今が楽しいのに…。
もっと大人になれたらいいのに、なんて思った。
