心理テスト おでんの具 烏野高校
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肉まんの袋を握りながら、坂の下商店を離れて数十歩ほど歩いた頃だった。後ろから、誰かがこちらへ駆けてくる音がした。
「苗字さーん!」
振り返ると、息を弾ませた山口くんが手を振っていた。忘れ物でもしたのかな?と思って財布を確認すると、ちゃんと手元にある。
「どうしたの?」
「バス停まで一緒に帰ろうと思って……。もう暗いし。」
「え、いつもの道だし大丈夫なのに。月島くんは?」
問いかけた瞬間、彼の歩幅がほんの少しだけ乱れた。
「……なんでツッキーの名前がでてくるの」
「だって、いっつも一緒にいるから。珍しいなって」
「……そっか」
か細く落ちた声が、風の中にほどけていった。なんだろう、ほんの少しだけ拗ねたみたいな響き。
バス停まではまだ少し距離がある。冷めないうちに肉まんを、と包みを開けてかじる。
ふわっと湯気が立ちのぼって、手のひらが温まった。
「俺も食べよ」
横を歩く山口くんも、器の蓋を外しておでんを取り出していた。夜道の薄明かりのなか、割り箸を器用に使って歩きながら食べ始める。
「1つだけ選んだんだよね? 何にしたの?」
「うん、大根。味しみてて美味しそうだったから」
彼はなぜか少し誇らしげに笑った。
大根の角をほろりと崩しながら食べる姿を横目に見ると、ふと思う。
──そういえば、月島くんの隣にいるから感じなかったけど、山口くんって意外と背が高い。
足を止めて近づいて見上げると、彼も立ち止まって首を傾げた。
「どうしたの?」
「ううん。ただ……思ってたより身長高いなって。自分と比べてみたかっただけ」
「……俺の顔、なんかついてる?」
「ついてないよ」
笑うと、彼は耳の先まで赤くして髪を触った。照れてるんだ。
その様子が少し可愛い。
「身長、高い方が好き?」
「バレーには有利だよね。羨ましいなって」
軽くそう言って、肉まんをまた一口。
すると、横からため息がそっとこぼれた。
どうしたんだろうと思う間もなく、私は冗談まじりに言ってみる。
「おでんの出汁いっぱい? 少しちょうだい」
彼なら、きっとくれると思った。
ほんの一口だけ。
なのに山口くんは、器を見つめたまま数秒考えて、
「……肉まん一口くれるなら」
「えぇ、等価交換なのそれ?」
思わず笑ってしまう。
でも、ほんの少しだけなら──と彼に肉まんを差し出す。
身をかがめた山口くんは、端っこをほんのちょびっと噛んだ。
本当に、ちょびっとだけ。
ふわっとした息遣いと、上目でこちらを見る目。
思わず胸がギュンと締めつけられた。
「もっと食べていいよ?」
「……もう大丈夫。器、少し熱いから気をつけてね」
やっぱり優しい。
その優しさに、今日の寒さが少しだけ和らぐ気がした。
バス停までの道、自然と歩幅を合わせながら帰る。
ただそれだけなのに、胸の奥がじんわり温かい。
***
〈山口視点〉
おでんを買って外に出たとき、彼女がひとりで帰っていく後ろ姿が見えた。
その瞬間、ツッキーが小声で言った。
「……今なら、一緒に帰れるんじゃない?」
軽い調子なのに、全部気づかれたみたいで心臓が強く跳ねた。
好き、なのかどうかまだはっきりしない。
けれど"気になる"のはずっと前からだった。
走って追いかけて、横に並んで歩く。
ただそれだけで嬉しいのに、彼女の口からツッキーの名前が出てきた瞬間、胸の奥がふっと沈んだ。
──俺じゃなくて、ツッキーか。
そんな風に思ってしまって、ちっぽけだなって自分でも苦笑した。
でも、彼女が笑って見上げてくれたとき。
風に揺れた前髪の隙間から目が合ったとき。
顔が熱くなって、呼吸の仕方さえ忘れそうになった。
一人で帰るのは危ないから──なんて言ったけど、本当はただ一緒にいたかった。
なのに、おでんを一口欲しがられた時、"意識されてないんだ"って、少し悔しくなった。
だから、つい言ってしまった。
肉まん一口くれたら、と。
差し出された肉まんの端をかじった瞬間、それが期待していたよりずっと特別で、顔がまともに上げられなかった。
小さな一口だったけど、胸の奥にじんと残った。
──俺、彼女のことが好きなんだ。
その答えが、今日ようやく形になってしまった。
───────────────
① 大根を選んだ人「丁寧に浸透するタイプ」
気持ちがゆっくり人に向いていくタイプ。
相手の言葉や態度をよく観察して、安心できて初めて心を開く。
一度好きになったら一途で、深くじんわり愛する人。
恋は"染みる"までが少し長いけれど、その分、長く続きやすい。
「苗字さーん!」
振り返ると、息を弾ませた山口くんが手を振っていた。忘れ物でもしたのかな?と思って財布を確認すると、ちゃんと手元にある。
「どうしたの?」
「バス停まで一緒に帰ろうと思って……。もう暗いし。」
「え、いつもの道だし大丈夫なのに。月島くんは?」
問いかけた瞬間、彼の歩幅がほんの少しだけ乱れた。
「……なんでツッキーの名前がでてくるの」
「だって、いっつも一緒にいるから。珍しいなって」
「……そっか」
か細く落ちた声が、風の中にほどけていった。なんだろう、ほんの少しだけ拗ねたみたいな響き。
バス停まではまだ少し距離がある。冷めないうちに肉まんを、と包みを開けてかじる。
ふわっと湯気が立ちのぼって、手のひらが温まった。
「俺も食べよ」
横を歩く山口くんも、器の蓋を外しておでんを取り出していた。夜道の薄明かりのなか、割り箸を器用に使って歩きながら食べ始める。
「1つだけ選んだんだよね? 何にしたの?」
「うん、大根。味しみてて美味しそうだったから」
彼はなぜか少し誇らしげに笑った。
大根の角をほろりと崩しながら食べる姿を横目に見ると、ふと思う。
──そういえば、月島くんの隣にいるから感じなかったけど、山口くんって意外と背が高い。
足を止めて近づいて見上げると、彼も立ち止まって首を傾げた。
「どうしたの?」
「ううん。ただ……思ってたより身長高いなって。自分と比べてみたかっただけ」
「……俺の顔、なんかついてる?」
「ついてないよ」
笑うと、彼は耳の先まで赤くして髪を触った。照れてるんだ。
その様子が少し可愛い。
「身長、高い方が好き?」
「バレーには有利だよね。羨ましいなって」
軽くそう言って、肉まんをまた一口。
すると、横からため息がそっとこぼれた。
どうしたんだろうと思う間もなく、私は冗談まじりに言ってみる。
「おでんの出汁いっぱい? 少しちょうだい」
彼なら、きっとくれると思った。
ほんの一口だけ。
なのに山口くんは、器を見つめたまま数秒考えて、
「……肉まん一口くれるなら」
「えぇ、等価交換なのそれ?」
思わず笑ってしまう。
でも、ほんの少しだけなら──と彼に肉まんを差し出す。
身をかがめた山口くんは、端っこをほんのちょびっと噛んだ。
本当に、ちょびっとだけ。
ふわっとした息遣いと、上目でこちらを見る目。
思わず胸がギュンと締めつけられた。
「もっと食べていいよ?」
「……もう大丈夫。器、少し熱いから気をつけてね」
やっぱり優しい。
その優しさに、今日の寒さが少しだけ和らぐ気がした。
バス停までの道、自然と歩幅を合わせながら帰る。
ただそれだけなのに、胸の奥がじんわり温かい。
***
〈山口視点〉
おでんを買って外に出たとき、彼女がひとりで帰っていく後ろ姿が見えた。
その瞬間、ツッキーが小声で言った。
「……今なら、一緒に帰れるんじゃない?」
軽い調子なのに、全部気づかれたみたいで心臓が強く跳ねた。
好き、なのかどうかまだはっきりしない。
けれど"気になる"のはずっと前からだった。
走って追いかけて、横に並んで歩く。
ただそれだけで嬉しいのに、彼女の口からツッキーの名前が出てきた瞬間、胸の奥がふっと沈んだ。
──俺じゃなくて、ツッキーか。
そんな風に思ってしまって、ちっぽけだなって自分でも苦笑した。
でも、彼女が笑って見上げてくれたとき。
風に揺れた前髪の隙間から目が合ったとき。
顔が熱くなって、呼吸の仕方さえ忘れそうになった。
一人で帰るのは危ないから──なんて言ったけど、本当はただ一緒にいたかった。
なのに、おでんを一口欲しがられた時、"意識されてないんだ"って、少し悔しくなった。
だから、つい言ってしまった。
肉まん一口くれたら、と。
差し出された肉まんの端をかじった瞬間、それが期待していたよりずっと特別で、顔がまともに上げられなかった。
小さな一口だったけど、胸の奥にじんと残った。
──俺、彼女のことが好きなんだ。
その答えが、今日ようやく形になってしまった。
───────────────
① 大根を選んだ人「丁寧に浸透するタイプ」
気持ちがゆっくり人に向いていくタイプ。
相手の言葉や態度をよく観察して、安心できて初めて心を開く。
一度好きになったら一途で、深くじんわり愛する人。
恋は"染みる"までが少し長いけれど、その分、長く続きやすい。
