澤村 色々
夢小説設定
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文化祭の準備で、思いのほか遅くなった。
校舎の廊下にはもう人影も少なく、窓の外に沈む夕焼けの名残りだけが、薄く色を残している。
ふと、体育館の方からボールの弾む音が聞こえた。
──そういえば、大地は春高予選が近いって言ってたな。
試合の応援には何度か行ったけど、真剣な姿に声をかける勇気もなくて、終わればすぐ帰ってしまっていた。
けれど今日は、なんとなく足が体育館に向かっていた。
開け放たれた体育館のドアの隙間から中を覗くと、照明に照らされたコートの中で、大地がひたむきにボールを受け続けていた。
スパイクでもトスでもない、ただひたすらレシーブを繰り返す姿。
汗で額が濡れて、それでも真っ直ぐにボールを見つめている。
「もう一本お願いします!」
その声には、先輩に向かっても一切の遠慮がなく、まっすぐな熱があった。
見ているうちに、時間を忘れた。
誇らしいというより、なんだか胸がいっぱいになる。
──大地って、こういう顔をするんだ。
「「あざっした!」」
体育館に声が響いて、ようやく練習が終わったらしい。
私はそっとドアから離れて、ポケットの中の携帯を開いた。
『まだ学校なんですか? 送ります』
すぐに返ってきたメッセージ。
校門で待っていると、息を切らせて走ってくる姿が見えた。
「文化祭の準備ですか?」
「うん、まあね」
「文化祭、何するんですか?」
「お化け屋敷」
そう言いながら並んで歩く。
ふいに車のライトが近づいた瞬間、彼が私の肩を引き寄せた。
車道側を歩いていたのは彼なのに、それでも守るように。
いつも通りの敬語。
一つ年下なのに、どこか距離を保つみたいな話し方。
ちょっとだけ、意地悪したくなって手を差し出す。
大地が一瞬、目を見張って顔を赤らめる。
けれど横を自転車で通り過ぎた後輩が「大地さん、お疲れっしたー!」と声をかけ、
彼はとっさに「下り坂だからってスピード出すな!」と返した。
その隙に、繋げなかった手を彼の前にひらひらと出してみせる。
「大地先輩は、後輩の前では手を繋ぎたくないんですか?」
からかうように言うと、彼は言葉もなく、真っ直ぐに私を見た。
──あ、ちょっとやりすぎたかな。
そう思った瞬間、大地が小さく笑って、
「○○さんが俺のこと"先輩"って言うの、なんか嬉しいかもしれないです」
と照れくさそうに呟いて、そっと指を絡めてきた。
繋いだ手のぬくもりがくすぐったくて、思わずブンブンと振る。
その拍子に、彼の腕の中へ引き寄せられる。
「文化祭、一緒に回ってくれますか?」
胸の奥に響く低い声。
その胸に頷くと、「嬉しいです」と小さく返ってきた。
── 一つ年下なのに、どうしてこんなに頼もしいんだろ。
そんな悔しさみたいな愛しさが込み上げて、
不意打ちで頬にキスをする。
「……っ!」
真っ赤になって慌てる大地を見て、笑いがこみ上げた。
校舎の廊下にはもう人影も少なく、窓の外に沈む夕焼けの名残りだけが、薄く色を残している。
ふと、体育館の方からボールの弾む音が聞こえた。
──そういえば、大地は春高予選が近いって言ってたな。
試合の応援には何度か行ったけど、真剣な姿に声をかける勇気もなくて、終わればすぐ帰ってしまっていた。
けれど今日は、なんとなく足が体育館に向かっていた。
開け放たれた体育館のドアの隙間から中を覗くと、照明に照らされたコートの中で、大地がひたむきにボールを受け続けていた。
スパイクでもトスでもない、ただひたすらレシーブを繰り返す姿。
汗で額が濡れて、それでも真っ直ぐにボールを見つめている。
「もう一本お願いします!」
その声には、先輩に向かっても一切の遠慮がなく、まっすぐな熱があった。
見ているうちに、時間を忘れた。
誇らしいというより、なんだか胸がいっぱいになる。
──大地って、こういう顔をするんだ。
「「あざっした!」」
体育館に声が響いて、ようやく練習が終わったらしい。
私はそっとドアから離れて、ポケットの中の携帯を開いた。
『まだ学校なんですか? 送ります』
すぐに返ってきたメッセージ。
校門で待っていると、息を切らせて走ってくる姿が見えた。
「文化祭の準備ですか?」
「うん、まあね」
「文化祭、何するんですか?」
「お化け屋敷」
そう言いながら並んで歩く。
ふいに車のライトが近づいた瞬間、彼が私の肩を引き寄せた。
車道側を歩いていたのは彼なのに、それでも守るように。
いつも通りの敬語。
一つ年下なのに、どこか距離を保つみたいな話し方。
ちょっとだけ、意地悪したくなって手を差し出す。
大地が一瞬、目を見張って顔を赤らめる。
けれど横を自転車で通り過ぎた後輩が「大地さん、お疲れっしたー!」と声をかけ、
彼はとっさに「下り坂だからってスピード出すな!」と返した。
その隙に、繋げなかった手を彼の前にひらひらと出してみせる。
「大地先輩は、後輩の前では手を繋ぎたくないんですか?」
からかうように言うと、彼は言葉もなく、真っ直ぐに私を見た。
──あ、ちょっとやりすぎたかな。
そう思った瞬間、大地が小さく笑って、
「○○さんが俺のこと"先輩"って言うの、なんか嬉しいかもしれないです」
と照れくさそうに呟いて、そっと指を絡めてきた。
繋いだ手のぬくもりがくすぐったくて、思わずブンブンと振る。
その拍子に、彼の腕の中へ引き寄せられる。
「文化祭、一緒に回ってくれますか?」
胸の奥に響く低い声。
その胸に頷くと、「嬉しいです」と小さく返ってきた。
── 一つ年下なのに、どうしてこんなに頼もしいんだろ。
そんな悔しさみたいな愛しさが込み上げて、
不意打ちで頬にキスをする。
「……っ!」
真っ赤になって慌てる大地を見て、笑いがこみ上げた。
