4 文化祭
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手を挙げたのは展示の方。
遊びたいし、バイトもあるし。図書室で調べてまとめて模造紙に書けば終わりなら楽そうだと思った。
班ごとに分担して作業することになり、みんなで図書室へ向かう。
図書室に入ると何だか緊張した。
大きな声を出しちゃいけないし、静かな空気も少し苦手。そういえば高校に入学してから図書室なんて来たことがなかった。
何をどう調べればいいのかもわからない。
班の子が「この辺かな」と本棚へ向かうので、とりあえず後ろをついて行く。
でも、何でみんな迷わず目的の場所へ行けるんだろう。私だけ場違いな気がして、一歩引いて見ているしかできない。
ふと目に入った本棚には漫画も並んでいた。
あ、この漫画あるんだ。
ドラマで見たやつ。本が原作だったんだ。
そんなことを思っているうちに班のみんなは必要な本を持って席へ戻り、もう話し合いを始めていた。慌てて自分も席に着く。
……私、全然役に立ってない。
「ここを抜粋してみるのは?」
「本筋とは違うけど、この辺を掘り下げても面白そう。」
みんなが意見を出し合っているのを私は聞いていることしかできなかった。
参加したいのに何を話しているのかよくわからない。
転校してきたから地元じゃないって理由じゃなくて……ただ単に、私の頭が追いついてない。
……つらい。
赤点ギリギリ回避で満足していた私の学力が、ここで現実を突きつけてきた。
それでも何もしないのは申し訳ない気がして、とりあえずみんなの意見をルーズリーフにまとめ始める。
「苗字さん、まとめてくれてるの?」
「すごく見やすいよ。」
……本当に?
私、自分でも内容よくわかってないのに。
「文字ばっかりの分厚い本って苦手で……。みんなの言ってることを書いてるだけだし、正直今もあんまりわかってない。」
「何がわからないの?」
そう聞かれても自分でも何がわからないのかわからない。
しまった。
空気が少し止まってしまって、思わず笑って誤魔化す。
「じゃあ、わからないところ教えて?」
馬鹿にされるかなと思いながら、おどけるように答えた。
「最初から全部よくわかんない。」
班のみんなが固まる。
……やってしまった。
「もっと早く言ってよ!」
「じゃあ説明がわかりにくかったってことだし、もう少し考えようか。」
……え。
何、この人たち。
みんないい人すぎない?
席順でたまたま一緒になっただけで、今までほとんど話したこともなかったから少し不安だったけど、この班の人たち好きかも。
私ちょろすぎるかな。
思わず笑うと、「笑って誤魔化さない」と注意される。
普段あまり接点のない真面目なタイプの子たち。
ノリは少し違うけど……この雰囲気、好きかも。
ちゃんと注意してくれる人がいるって、なんだか嬉しかった。
文化祭当日。
クラスには烏野高校の歴史をまとめた模造紙がたくさん貼り出されていた。
班ごとに作ったけど、こうして並べて見ると私たちの班って結構まとまってない?
見やすいし、イラストも多め。
……まあ、そのイラストは「文字だけじゃ疲れる!」って私が半ば強引に描き足した結果なんだけど。
本当は友達と一日文化祭を回る約束をしていた。
でも私は率先して当日のクラス当番を引き受けた。
一時間だけだけど。
だって、みんなで頑張って作った展示を見た人がどんな反応をするのか見てみたかったから。
当番までの時間は友達と文化祭を満喫する。
クレープを食べて、お化け屋敷に入って、笑って走って。
本当に楽しい。
展示をやっている文化部にも少し惹かれたけど、友達はあまり興味がなかったみたいでそのまま通り過ぎてしまった。
文字ばかりの展示は苦手だけど……他の展示もちょっと見てみたかったな。
お好み焼きを食べながら歩いていると、青葉城西の制服が目に入った。
女子の制服も可愛いけど、男子の制服も結構好きかも。
友達が「あの人かっこいい」と指をさす。
背も高いし確かにかっこいい。
でも少しチャラそう。合コンでいたら「当たり!」って思うかもしれないけど、他校の人と文化祭で出会いを探すのはなんだか違う気がした。
時間になって一人で教室へ戻る。
教室の端の椅子に座って展示を見守る。
来てくれる人は少なかった。
全然来ないわけじゃない。
でも、そうだよね。私だって文化祭ならもっと楽しそうな出し物を見て回ると思う。
それでも展示を見た人が「へぇ」「知らなかった」と話しているのを聞くと、なんだか嬉しかった。
クラスに入ってきたおじいちゃんに釣れられて来た小さな女の子はつまらなそうにしてたから、簡単な手品したらウケてた。おじいちゃんは真剣に展示みててちょっと緊張しちゃった。
そろそろ交代の時間かなと時計をみていたら3人組の人が入ってきた。
「大地ー。ここ見るの? 高校の歴史ってかてぇべや。」
「文化祭なんだから色々回った方が面白い。」
「入り口でそんなこと言わない方がいいよ。」
大きな声じゃない。
でも静かな教室だから自然と耳に入ってきた。
入ってきた三人組はバイト先のコンビニで見たことがある人たちだった。
コンビニで私に話しかけてきた人を止めていた先輩。やっぱりしっかりした人なんだ。
大地さんっていうんだ。
でも、あの時より雰囲気が柔らかい。
同級生と一緒だからか、よく笑っている。
展示もしっかり読んでいて、なんだか頭も良さそう。
ふと、私たちの班がまとめた模造紙を見て笑った。
……え、笑うようなこと書いたっけ?
視線を追うと、私が描いたイラストを見ていた。
嬉しい。
でもちょっと恥ずかしい。
私は椅子から立ち上がり、そっと大地さんの隣へ行く。
「イラスト、私が描いたんです。文字ばっかりだと疲れるかなって思って、ちょっと可愛さを足してみたんですけど……。」
「うん。可愛い。台詞もあってわかりやすいし。」
……褒められた。
少しだけ。
それだけで気分が良くなって席へ戻る。
展示を見ている大地さんを眺めていると、視線に気づいたのか「ちゃんと見てるよ」と言うみたいにもう一度展示へ目を向けてくれた。その気遣いが、なんだか嬉しかった。
交代の時間になり、友達と合流しようと教室を出る。
階段へ向かおうとした時、廊下の先でさっきの大地さんがしゃがみ込んでいるのが見えた。
一緒にいた二人の姿はない。
……どうしたんだろう。
でも、知っていると言ってもコンビニで何度か見かけて、さっき少し話したくらい。
たぶん三年生だし、一年の私が「大丈夫ですか?」なんて声をかけるのも変かな。
体育会系の部活って上下関係も厳しそうだし……。
行きたい方向とは反対。
それでも気になって足が止まる。
知っている人。
でも、ただ知っているだけの人。
……声をかけても、いいのかな?
【選択してください】
・声をかける → 5,冬の⑦へ
・そのまま階段を下りる→ 5,冬の⑧へ
遊びたいし、バイトもあるし。図書室で調べてまとめて模造紙に書けば終わりなら楽そうだと思った。
班ごとに分担して作業することになり、みんなで図書室へ向かう。
図書室に入ると何だか緊張した。
大きな声を出しちゃいけないし、静かな空気も少し苦手。そういえば高校に入学してから図書室なんて来たことがなかった。
何をどう調べればいいのかもわからない。
班の子が「この辺かな」と本棚へ向かうので、とりあえず後ろをついて行く。
でも、何でみんな迷わず目的の場所へ行けるんだろう。私だけ場違いな気がして、一歩引いて見ているしかできない。
ふと目に入った本棚には漫画も並んでいた。
あ、この漫画あるんだ。
ドラマで見たやつ。本が原作だったんだ。
そんなことを思っているうちに班のみんなは必要な本を持って席へ戻り、もう話し合いを始めていた。慌てて自分も席に着く。
……私、全然役に立ってない。
「ここを抜粋してみるのは?」
「本筋とは違うけど、この辺を掘り下げても面白そう。」
みんなが意見を出し合っているのを私は聞いていることしかできなかった。
参加したいのに何を話しているのかよくわからない。
転校してきたから地元じゃないって理由じゃなくて……ただ単に、私の頭が追いついてない。
……つらい。
赤点ギリギリ回避で満足していた私の学力が、ここで現実を突きつけてきた。
それでも何もしないのは申し訳ない気がして、とりあえずみんなの意見をルーズリーフにまとめ始める。
「苗字さん、まとめてくれてるの?」
「すごく見やすいよ。」
……本当に?
私、自分でも内容よくわかってないのに。
「文字ばっかりの分厚い本って苦手で……。みんなの言ってることを書いてるだけだし、正直今もあんまりわかってない。」
「何がわからないの?」
そう聞かれても自分でも何がわからないのかわからない。
しまった。
空気が少し止まってしまって、思わず笑って誤魔化す。
「じゃあ、わからないところ教えて?」
馬鹿にされるかなと思いながら、おどけるように答えた。
「最初から全部よくわかんない。」
班のみんなが固まる。
……やってしまった。
「もっと早く言ってよ!」
「じゃあ説明がわかりにくかったってことだし、もう少し考えようか。」
……え。
何、この人たち。
みんないい人すぎない?
席順でたまたま一緒になっただけで、今までほとんど話したこともなかったから少し不安だったけど、この班の人たち好きかも。
私ちょろすぎるかな。
思わず笑うと、「笑って誤魔化さない」と注意される。
普段あまり接点のない真面目なタイプの子たち。
ノリは少し違うけど……この雰囲気、好きかも。
ちゃんと注意してくれる人がいるって、なんだか嬉しかった。
文化祭当日。
クラスには烏野高校の歴史をまとめた模造紙がたくさん貼り出されていた。
班ごとに作ったけど、こうして並べて見ると私たちの班って結構まとまってない?
見やすいし、イラストも多め。
……まあ、そのイラストは「文字だけじゃ疲れる!」って私が半ば強引に描き足した結果なんだけど。
本当は友達と一日文化祭を回る約束をしていた。
でも私は率先して当日のクラス当番を引き受けた。
一時間だけだけど。
だって、みんなで頑張って作った展示を見た人がどんな反応をするのか見てみたかったから。
当番までの時間は友達と文化祭を満喫する。
クレープを食べて、お化け屋敷に入って、笑って走って。
本当に楽しい。
展示をやっている文化部にも少し惹かれたけど、友達はあまり興味がなかったみたいでそのまま通り過ぎてしまった。
文字ばかりの展示は苦手だけど……他の展示もちょっと見てみたかったな。
お好み焼きを食べながら歩いていると、青葉城西の制服が目に入った。
女子の制服も可愛いけど、男子の制服も結構好きかも。
友達が「あの人かっこいい」と指をさす。
背も高いし確かにかっこいい。
でも少しチャラそう。合コンでいたら「当たり!」って思うかもしれないけど、他校の人と文化祭で出会いを探すのはなんだか違う気がした。
時間になって一人で教室へ戻る。
教室の端の椅子に座って展示を見守る。
来てくれる人は少なかった。
全然来ないわけじゃない。
でも、そうだよね。私だって文化祭ならもっと楽しそうな出し物を見て回ると思う。
それでも展示を見た人が「へぇ」「知らなかった」と話しているのを聞くと、なんだか嬉しかった。
クラスに入ってきたおじいちゃんに釣れられて来た小さな女の子はつまらなそうにしてたから、簡単な手品したらウケてた。おじいちゃんは真剣に展示みててちょっと緊張しちゃった。
そろそろ交代の時間かなと時計をみていたら3人組の人が入ってきた。
「大地ー。ここ見るの? 高校の歴史ってかてぇべや。」
「文化祭なんだから色々回った方が面白い。」
「入り口でそんなこと言わない方がいいよ。」
大きな声じゃない。
でも静かな教室だから自然と耳に入ってきた。
入ってきた三人組はバイト先のコンビニで見たことがある人たちだった。
コンビニで私に話しかけてきた人を止めていた先輩。やっぱりしっかりした人なんだ。
大地さんっていうんだ。
でも、あの時より雰囲気が柔らかい。
同級生と一緒だからか、よく笑っている。
展示もしっかり読んでいて、なんだか頭も良さそう。
ふと、私たちの班がまとめた模造紙を見て笑った。
……え、笑うようなこと書いたっけ?
視線を追うと、私が描いたイラストを見ていた。
嬉しい。
でもちょっと恥ずかしい。
私は椅子から立ち上がり、そっと大地さんの隣へ行く。
「イラスト、私が描いたんです。文字ばっかりだと疲れるかなって思って、ちょっと可愛さを足してみたんですけど……。」
「うん。可愛い。台詞もあってわかりやすいし。」
……褒められた。
少しだけ。
それだけで気分が良くなって席へ戻る。
展示を見ている大地さんを眺めていると、視線に気づいたのか「ちゃんと見てるよ」と言うみたいにもう一度展示へ目を向けてくれた。その気遣いが、なんだか嬉しかった。
交代の時間になり、友達と合流しようと教室を出る。
階段へ向かおうとした時、廊下の先でさっきの大地さんがしゃがみ込んでいるのが見えた。
一緒にいた二人の姿はない。
……どうしたんだろう。
でも、知っていると言ってもコンビニで何度か見かけて、さっき少し話したくらい。
たぶん三年生だし、一年の私が「大丈夫ですか?」なんて声をかけるのも変かな。
体育会系の部活って上下関係も厳しそうだし……。
行きたい方向とは反対。
それでも気になって足が止まる。
知っている人。
でも、ただ知っているだけの人。
……声をかけても、いいのかな?
【選択してください】
・声をかける → 5,冬の⑦へ
・そのまま階段を下りる→ 5,冬の⑧へ
