4 文化祭
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手を挙げたのは、かき氷屋。
秋にかき氷屋ってどうなんだろうとは思ったけど、「人が少ないなら遊べるかも」という目先の誘惑に勝てなかった。
先生も「この時期にかき氷?」と首を傾げていたけど、「ニッチなところに需要があります!」というクラスメートの一言であっさり決定。
他のクラスは結構気合いを入れて準備しているのに、うちのクラスは「どうせ人来ないよね」と、看板も装飾もかなり適当だった。
私は飾り付けの小物作りと当日の接客担当。
クラス一丸で頑張るという雰囲気はなかったけど、これはこれで遊べそうだしバイトもあるし……まあいいか。
そして文化祭当日。
思っていた以上に他のクラスは本格的で、少しだけ気まずくなる。
午後から接客があるので、それまでは友達と文化祭を回ることにした。
地元の人や他校の生徒も来ていて、校内は大賑わい。あちこち見て回って楽しんでいたら、気づけば接客の時間が迫っていて慌ててお昼に買ったたこ焼きを頬張る。
「あっつ!」
口の中を火傷して慌てて飲み物を飲んだら、友達に笑われた。
……やっぱり楽しい。
来年は、もう少し文化祭そのものにも力を入れてみるのもいいかもしれない。
そんな浮かれた気分のまま、接客に入った。
……うん。
来年は、ちゃんと企画も考えようと思う。
周りのクラスはどこも忙しそうなのに、うちのクラスだけ見事なくらい素通りされていく。
もう長袖を着る季節。
みんな温かい飲み物を片手に歩いているのにかき氷なんて誰が食べるの。
交代の時間まで何とか一人でも呼び込もうと大きな声を出すけど、誰も振り向いてくれない。
……さすがに一人も来ないのはきついな。
そんな時、一人のガタイのいい男子が注文してきた。
周りはみんな長袖やニットを着ているのに、その人は制服の半袖シャツを腕まくりしている。
筋トレが趣味ですと言わんばかりの筋張った腕が目に入った。
筋肉が多いと暑いのかな?
「鎌先さん、マジでかき氷食うんですか?」
「何で?」
「何でって……。まあ腹壊しても知りませんけど。」
「腹壊すのは筋肉が足りねぇんだよ。お前も食えよ。」
「遠慮しときます。」
会話から先輩後輩だとわかるけど、後輩の方がちょっと先輩をからかってる気がする。
それでも本人は全然気にしてなさそうだ。
制服を見ると伊達工業高校。
男子校ってこんな感じのノリなのかな。
見ている分には結構面白い。
かき氷を渡すと、その人はシロップが少しだけかかった氷を一気にかき込み、あっという間に食べ終えてしまった。
……あった。
ニッチな需要。
体温高い人、もっと来ないかな。
それからはまた素通りされるばかりで、暇な時間が続いた。
隣には、今まであまり話したことのないクラスメートが立っている。
同じように暇そうにしていたので、「せっかくだし」と他愛ない雑談をしていると、不意に視線を感じた。
「かき氷一つ!」
注文だ!
ようやく二人目のお客さん。
私の仕事だと気持ちを切り替え、笑顔で会計を済ませる。
「シロップはかけ放題です。」
そう伝えるとその人は目をきらきらさせた。
……かき氷好きなのかな。
そう思って顔を見た瞬間気づく。
コンビニによく来る人だ。
名前は……たしか、西谷さん。
「西谷さん、どうぞ。」
かき氷を手渡すと、「名前知ってるんだ」と少し嬉しそうに笑う。
何度かバイト先に来ていて、先輩から名前を呼ばれていたから覚えただけなんだけど。
それをわざわざ説明するのも変な気がして笑顔だけ返した。
すると西谷さんはかき氷を食べながら、じっと私を見つめてくる。
鶏冠みたいな髪型だけど、毎朝セット大変そうだな……。
目も大きいし、そんなに見つめられると目を逸らすタイミングがわからない。
……なんか、この状況変じゃない?
お互い見つめ合ったままになっている。
そう思ったら急におかしくなって笑ってしまった。
「やっぱ可愛い。」
……また言われた。
コンビニでバイトしていた時にも言われた言葉。
これってナンパなのかな。
いつも止めてくれる先輩も今日はいないし、どう反応すればいいかわからない。
可愛いとは言うけど、その先がある感じでもないし……。
とりあえず笑っておこう。
そう思って微笑み返すと西谷さんが急に顔を真っ赤にした。
……え。
私を意識してるとか?
いやいや。
それはさすがに自意識過剰だよね。
他に理由があるのかな。
……かき氷って喉に詰まるっけ?
そういえば、さっき買ったお茶をまだ飲んでなかった。
ペットボトルを取り出して差し出す。
「何? お茶?」
「かき氷が喉に詰まったのかと思って。顔赤いから。」
「かき氷は喉に詰まらねぇー!」
そう言って、西谷さんは口を大きく開けて笑った。
目も大きいけど、口も大きいんだな。
笑ってくれてよかった。
可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、それを真に受けて意識するのも違う気がしていたから。
差し出したお茶は「大丈夫」と断られたものの、西谷さんはにかっと笑って二杯目のかき氷を注文した。
……マジか。
真夏でも二杯目なんてなかなか食べないのに、この時期に?
注文は嬉しいけど、ちょっと心配になる。
二杯目のかき氷を渡したところで、ちょうど接客の交代時間になった。
エプロンを脱いで次の担当に渡し、携帯を開いて友達と合流しようとすると、もう食べ終わった西谷さんが近くまでやって来た。
「一緒に回る?」
……え?
一緒に?
なんで?
接点なんてコンビニで接客したくらいで、今日だって少し話しただけなのに。
でも、一緒に回ったら楽しそう。
よく笑う人だし、この時期にかき氷を二杯食べるくらい変わってるし、ツッコミどころも多い。
ただコンビニでも今日も店員とお客さん以上の会話をしたことはない。
携帯を見ると、友達から『今どこ?』とメッセージが届いていた。
どうしよう。
接客が終わったらまた一緒に回ろうとは約束してない。
でも、私もそのつもりでいたし……。
連絡はきてるし……。
【選択してください】
・西谷と一緒に行く → 5,冬の⑤へ
・断る → 5,冬の⑥へ
秋にかき氷屋ってどうなんだろうとは思ったけど、「人が少ないなら遊べるかも」という目先の誘惑に勝てなかった。
先生も「この時期にかき氷?」と首を傾げていたけど、「ニッチなところに需要があります!」というクラスメートの一言であっさり決定。
他のクラスは結構気合いを入れて準備しているのに、うちのクラスは「どうせ人来ないよね」と、看板も装飾もかなり適当だった。
私は飾り付けの小物作りと当日の接客担当。
クラス一丸で頑張るという雰囲気はなかったけど、これはこれで遊べそうだしバイトもあるし……まあいいか。
そして文化祭当日。
思っていた以上に他のクラスは本格的で、少しだけ気まずくなる。
午後から接客があるので、それまでは友達と文化祭を回ることにした。
地元の人や他校の生徒も来ていて、校内は大賑わい。あちこち見て回って楽しんでいたら、気づけば接客の時間が迫っていて慌ててお昼に買ったたこ焼きを頬張る。
「あっつ!」
口の中を火傷して慌てて飲み物を飲んだら、友達に笑われた。
……やっぱり楽しい。
来年は、もう少し文化祭そのものにも力を入れてみるのもいいかもしれない。
そんな浮かれた気分のまま、接客に入った。
……うん。
来年は、ちゃんと企画も考えようと思う。
周りのクラスはどこも忙しそうなのに、うちのクラスだけ見事なくらい素通りされていく。
もう長袖を着る季節。
みんな温かい飲み物を片手に歩いているのにかき氷なんて誰が食べるの。
交代の時間まで何とか一人でも呼び込もうと大きな声を出すけど、誰も振り向いてくれない。
……さすがに一人も来ないのはきついな。
そんな時、一人のガタイのいい男子が注文してきた。
周りはみんな長袖やニットを着ているのに、その人は制服の半袖シャツを腕まくりしている。
筋トレが趣味ですと言わんばかりの筋張った腕が目に入った。
筋肉が多いと暑いのかな?
「鎌先さん、マジでかき氷食うんですか?」
「何で?」
「何でって……。まあ腹壊しても知りませんけど。」
「腹壊すのは筋肉が足りねぇんだよ。お前も食えよ。」
「遠慮しときます。」
会話から先輩後輩だとわかるけど、後輩の方がちょっと先輩をからかってる気がする。
それでも本人は全然気にしてなさそうだ。
制服を見ると伊達工業高校。
男子校ってこんな感じのノリなのかな。
見ている分には結構面白い。
かき氷を渡すと、その人はシロップが少しだけかかった氷を一気にかき込み、あっという間に食べ終えてしまった。
……あった。
ニッチな需要。
体温高い人、もっと来ないかな。
それからはまた素通りされるばかりで、暇な時間が続いた。
隣には、今まであまり話したことのないクラスメートが立っている。
同じように暇そうにしていたので、「せっかくだし」と他愛ない雑談をしていると、不意に視線を感じた。
「かき氷一つ!」
注文だ!
ようやく二人目のお客さん。
私の仕事だと気持ちを切り替え、笑顔で会計を済ませる。
「シロップはかけ放題です。」
そう伝えるとその人は目をきらきらさせた。
……かき氷好きなのかな。
そう思って顔を見た瞬間気づく。
コンビニによく来る人だ。
名前は……たしか、西谷さん。
「西谷さん、どうぞ。」
かき氷を手渡すと、「名前知ってるんだ」と少し嬉しそうに笑う。
何度かバイト先に来ていて、先輩から名前を呼ばれていたから覚えただけなんだけど。
それをわざわざ説明するのも変な気がして笑顔だけ返した。
すると西谷さんはかき氷を食べながら、じっと私を見つめてくる。
鶏冠みたいな髪型だけど、毎朝セット大変そうだな……。
目も大きいし、そんなに見つめられると目を逸らすタイミングがわからない。
……なんか、この状況変じゃない?
お互い見つめ合ったままになっている。
そう思ったら急におかしくなって笑ってしまった。
「やっぱ可愛い。」
……また言われた。
コンビニでバイトしていた時にも言われた言葉。
これってナンパなのかな。
いつも止めてくれる先輩も今日はいないし、どう反応すればいいかわからない。
可愛いとは言うけど、その先がある感じでもないし……。
とりあえず笑っておこう。
そう思って微笑み返すと西谷さんが急に顔を真っ赤にした。
……え。
私を意識してるとか?
いやいや。
それはさすがに自意識過剰だよね。
他に理由があるのかな。
……かき氷って喉に詰まるっけ?
そういえば、さっき買ったお茶をまだ飲んでなかった。
ペットボトルを取り出して差し出す。
「何? お茶?」
「かき氷が喉に詰まったのかと思って。顔赤いから。」
「かき氷は喉に詰まらねぇー!」
そう言って、西谷さんは口を大きく開けて笑った。
目も大きいけど、口も大きいんだな。
笑ってくれてよかった。
可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、それを真に受けて意識するのも違う気がしていたから。
差し出したお茶は「大丈夫」と断られたものの、西谷さんはにかっと笑って二杯目のかき氷を注文した。
……マジか。
真夏でも二杯目なんてなかなか食べないのに、この時期に?
注文は嬉しいけど、ちょっと心配になる。
二杯目のかき氷を渡したところで、ちょうど接客の交代時間になった。
エプロンを脱いで次の担当に渡し、携帯を開いて友達と合流しようとすると、もう食べ終わった西谷さんが近くまでやって来た。
「一緒に回る?」
……え?
一緒に?
なんで?
接点なんてコンビニで接客したくらいで、今日だって少し話しただけなのに。
でも、一緒に回ったら楽しそう。
よく笑う人だし、この時期にかき氷を二杯食べるくらい変わってるし、ツッコミどころも多い。
ただコンビニでも今日も店員とお客さん以上の会話をしたことはない。
携帯を見ると、友達から『今どこ?』とメッセージが届いていた。
どうしよう。
接客が終わったらまた一緒に回ろうとは約束してない。
でも、私もそのつもりでいたし……。
連絡はきてるし……。
【選択してください】
・西谷と一緒に行く → 5,冬の⑤へ
・断る → 5,冬の⑥へ
